第53話それぞれが抱えるもの
「「「アリス!」」」
僕達が彼女を見つけた時、アリスは既に意識を失っており、それをフードの女がずっと見つめていた。
「一足遅かったな、魔法使い」
「っ! やっぱりアンタか」
セレナとハルカがアリスを介抱し、僕が三人を守るように前に立つ。
「まさかこの場所を突き止めてくるとはな」
「アリスの事を調べたんだよ。そしたら自然とこの場所に来るんじゃないかと思って」
「なるほど、冴えた頭の持ち主のようだな。それでお前は何を感じた」
「え?」
「そこの人形使いの過去を知って、お前は何を感じたと聞いている」
「それは……」
ここに来る前、僕達は光希からアリスの過去の片鱗を聞いた。そして僕達がやってきた場所は、アリスの故郷があった場所。
「この場所は彼女にとっても、我にとっても思い出深い場所だ。もう来ることはないとは思っていたが、またこうして来る事になるとは」
「アンタが村を滅ぼした犯人なんだろ?」
「どうやら勘違いしているようだな。人形使いが我を恨む真の理由、そこまではたどり着けなかったようだな」
「真の理由?」
確かに僕達が知れたのは、表向けの情報のみ。もしそこに裏があるとするなら、僕はそこまで踏み込んでいいのだろうか。
「知るのが怖いか? お前の仲間が抱えているものを知る事が」
「そ、そういうわけじゃ」
「どちらにせよ話すつもりはない。知りたければ直接本人に聞くんだな」
「っ」
それだけ言い残すと、女は魔法でどこかへと消えて行ってしまった。結局僕は表面の話しか知ることができず、そこに隠されている裏の話まで踏み込むことができなかった。
彼女が言っていたように、僕は裏の部分を知ることが怖いのかもしれない。
「ユウマ、どうしたの?」
「え、あ、いや」
「色々考えたい事があるのは分かるけど、向こうには敵意がなかったみたいだし今はアリスを連れて王都に戻ろう」
「……うん」
セレナに言われて僕はその場を後にする。向こうに敵意があったかなかったか僕には分からないけど、アリスが傷ついた以上やるせない気持ちになった。それに彼女の今後の事も考えると、果たしてこれで終わってよかったのかとも。
でもきっとアリスは、自分の事を話してはくれない。そこにどのような深い事情が隠されていてようともアリスは……。
「ユウマ、今は気にしちゃ駄目だよ」
「え?」
「私も色々言いたいことはあるけど……アリスの為にも今は我慢しなきゃ」
すっかり意気消沈した僕に、ハルカがそんな言葉をかけてきてくれる。どうやら僕が彼女の言葉に惑わされている事に気がついたらしい。
「我慢、か。ハルカはどう思った? 光希からアリスの話を聞いて」
「私とアリスって案外一緒の環境なんだなって思った」
「あ……」
そういえばハルカの村も、アリスと同じように……。
「もし」
「もし?」
「もし私もアリスみたいになっちゃったら、ユウマはどうする」
「ハルカが?」
「私の場合はね、アリスと違って明確な怒りの矛先が見つかっていないけど、もし分かっていたら私もアリスと同じ風になっちゃうのかなって」
「それは……」
その言葉に僕は答えられなかった。アリスがああなった以上は、ハルカにも可能性がある事を否定はできない。
その標的が、今は分からずとも、いずれかはと考えると思わずゾッとしてしまった。
「僕はそんな事は起きないって信じたいよ」
「私もそう願いたいよ」
何とも言えない気持ちのまま、僕達は再び王都へと戻るのであった。
■□■□■□
アリスが目を覚ましたのはその日の夜遅く。三人で交代しながらアリスの看病をしていたところ、丁度僕の時にアリスが目を覚ました。
「あれ? 私いつの間に」
「よかったアリス、目を覚まして」
アリスは暫く現状を理解できずに、キョロキョロしていたけど僕を見つけて、ようやく受け入れた。
「ユウマ、私……」
「今はゆっくり休んでいいよ。話は後で聞くからさ」
「でも……謝らなきゃいけない事が沢山ある」
「それも含めて、だよ。セレナ達もしっかりとした言葉で聞きたいと思うから」
「……」
アリスは黙る。恐らく理解はしてくれたのだろうけど、話したい事は山々あると言った感じだ。僕も少しでも書きたいとは思っているけれど、体を休める方が最優先だと思っている。
「私が勝手な事をして皆に迷惑をかけた事は分かってる。けど……アイツを見つけた時、私は自分の中の闇を止められなかった」
それでもこの空間に耐えられなくなったのか、暫くした後アリスは口を開いた。
「それは仕方がないよ。相手を恨んでいるなら」
「恨み、という感情があっているのかは分からない。でも許す事ができなかった」
「それは……故郷を奪われたからだよね」
「そう。でも私の闇にユウマ達を巻き込みたくはなかった」
「仲間である以上はいつかぶつかる壁だったんだから、仕方がないよ。僕はアリスを咎めたりはしない」
「ユウマ……」
森の一件の時もそうだった。アリスは僕が考えている以上の闇を背負っている。けどそれに巻き込まれる事を僕は嫌いではない。
それがアリスなのだから、と僕は受け入れている。
「ねえユウマ」
「ん?」
「私、このパーティにいたら迷惑、なのかな?」
「そんな事はないよ」
「私、やっぱり一人に戻った方がいいのかな」




