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影が薄いけど魔法使いやっています  作者: りょう
第5章陰謀と謁見の王都
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第46話魔法使いの素質 英雄の素質

「それはどういうつもりで言っているんですか?」


 シェルティアの言葉を僕は理解できなかった。魔法を渡すなんて普通に考えたらあり得ない事だし、この魔法はそもそもシレナから授かった大切な力。

 その大切な力を、誰かに明け渡すなんてそんな事はできない。


「どういうつもりも何も、それが国の為になるからですよ」


「国の為?」


「光の英雄の話はご存知ですか?」


「噂で耳にした程度にしか」


「昔一度この世界が闇に覆われた事があるんです。皆が絶望する中で、一人立ち上がった者がいました。彼はこの世界では珍しい光の魔法を使用し、数々のピンチを乗り越え最後には世界に光をもたらしたとされています」


「それが光の英雄……」


「そういう事です。そして今再びこの世界にはその意志を継ぐものが現れました」


「それが僕が使うこの魔法?」


 シレナは以前からそのような事を言っていた。そもそも出会った時彼女が言った言葉は、


『影の存在から光の存在にならない?』


 だ。この時は僕の影のあまりの薄さを哀れんで、シレナが僕に与えてくれた力だと思っていた。


 光の魔法を使って光の存在になる


 とてもシンプルな言葉だと思っていたけど、最近色々な事を知るようになって、その考え方が変わっていた。この世界には本当に光が必要なのだ。


 シェルティアが言った『光の英雄』が。


「しかしあなたはあくまで光の魔法を使えるだけであって、英雄としての素質は見受けられません」


「随分とバッサリ言うんですね」


「事実ですから。それに貴方に光の魔法を与えた者も理解できません。わざわざ異世界から呼んでまで与えるとは」


「なっ?!」


 どうして僕の事、そして神様であるシレナの事まで知っているのだろうか。一国の王女といえど、知っていい事と悪い事がある。


「どうして私がそれを知っているのかみたいな顔をしていますね。まあ、その辺りの事を話す必要はありません。私は貴方から協力する言葉を聞ければいいのですから」


「そんな勝手な」


「勝手ではありませんよ。もし協力してくれれば、それなりの待遇もしますよ」


「待遇?」


「例えばそうですね、望めば元の世界にも帰すことができますが」


「……え?」


 日本に帰れる? もう帰らないと思っていたあの場所に。


(確かめたい事が沢山ある。それにもし、悲しんでいる人がいるならその為にも……)


 僕はここで初めて迷いが生じた。影のような存在だったとはいえ、僕は間違いなくあの場所で人生を歩んできた。

 もし戻れるならそれは……。


「でも戻れるなんてそんな簡単な話じゃ」


「方法は少なくともあるんですよ。ユウマ様がこちらの世界に来たように、こちらの世界から異世界に送る手段はございますから」


「なるほど」


「どうやら迷っておられるようですね。ならそれで構いません。時間はまだありますから」


「……」


「話は以上です。長旅でお疲れのところお呼びして申し訳ございませんでした」


 僕は彼女の部屋を出ようとする。しかしその直前、どうしても聞きたい事があったのを思い出し、僕は足を止めた。


「そういえばシェルティア様」


「何でしょうか?」


「シェルティア様は峯岸光希という女性を知っていますか?」


「っ! どうしてそれを……いえ、ご存知ありません」


「今の反応、肯定とみていいみたいですが」


「き、気のせいです」


「かなり動揺している気がしますけど……。まあその反応が見れただけで十分です」


 僕はそう言い残してシェルティア様の部屋を出る。これで僕の疑問は確信に変わった。


 光希が僕と同じようにこの世界にいる


 その理由は分からないけど、それを知れただけで十分だった。


(あとは……)


 いつ彼女に会えるか、だ。


 ■□■□■□

 全員で謁見する事になったのは、王都に到着してから三時間が経った頃だった、シェルティアと話した後、じっくり休んだ僕は用意した服装に着替えて、セレナ達と共に謁見の間へと向かう。


「そういえばユウマ、さっき部屋に行った時姿がなかったけど、どこに行っていたの?」


 その途中、セレナがさり気なく聞いてくる。


「ちょっとだけ散歩に出ていたんだよ」


「城の中を? どうしてわざわざ」


「まさか王女様の寝室を覗きに」


「不潔」


「待ってどうしてすぐにそうなるの? 断じてそんな事はないから!」


 王女の寝室に行ったのは確かだったけど。


「それなら私がご案内したんです、シェルティア様のお部屋に」


「ちょっ! それは違……」


 一緒に歩いていたフェルナがとても余計な一言を加える。どう考えてもわざとしか思えない言葉に、慌てて訂正しようとしたが、時すでに遅く、


「へえ。騎士団長に案内させてまで行きたかったんだぁ」


「ユウマ最低」


「私達を差し置いて個人で王女様に謁見。流石ねユウマ」


 鬼の形相と化した三人が僕を見ている。いや、鬼ではない。もはや鬼神だ。


「待って三人共。まずは話を聞こう、ね」


「そうね、まずは謁見が先だから」


「後でたっぷり言い訳を聞くわね」


「覚悟してて」


 謁見が終わった後が怖い……。


「さあ皆さん、到着しましたよ。この先が謁見の間です」


 そんな僕を見て見ぬ振りをしてフェルナが大きな扉の前で足を止める。


「この先に」


「王女様が……」

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