6話:魔法の扱い方
洞穴に帰ってきた。
さっきの魚だけしかこの世界の生き物について詳しくは知らないけど、魚の火力でさえ木を貫通させるレベルだ。
今の自分ならどんな生き物にあっても負ける自信がある。
そう思うと、今まで何事もなく生活できていたのは奇跡だったのかもな。
この世界で生きていくには自分自身も身を守れる手段が必要だろう。
その方法の一つが魔法。
今朝ゲットした魔法の教科書があるから、これを読んで魔法を習得していきたい。
洞穴の入り口のあたりに置いておいた魔法の教科書ーー魔法発動入門書(Ⅰ)を持ってきて、倒れている木に腰かけた。
この世界の言語は少なくとも日本語ではないけれど、俺の鑑定スキルで少しずつ鑑定(翻訳)していけば、解読していける。
とりあえず表紙を開いて、目次っぽいページを飛ばすと長い文章が出てきたので、それを翻訳してみることにした。
はじめに
この世界にはいくつの魔法が存在するか知っていますか?
答えは、∞個です。
この世界で5大基礎属性と言われる火・水・地・風・雷に加えて特殊属性と言われる聖や闇など。
それらを軸としてその組み合わせで新たな効果を生み出す複合魔法(空間魔法・回復魔法・強化魔法など)。
その組み合わせの際に出力を調整して効果を工夫することでも新たな魔法は生み出せます。
また、古代魔法や神聖魔法などのような禁止魔法と言われる魔法も完全には解明できていないと言われていますから、種類は未知数です。
このように、魔法とは無限の可能性を持つものなのです。
この書では、そんな無限大の可能性を持つ魔法を知っていくうえで基礎となる重要な部分を扱っています。
しっかりと身に着けて、二度と基礎で困らないようにしましょう。
ふむふむ。
これは、この教科書の前書きのようだ。
この書では基礎となる部分を扱っている…か。
つい昨日転生してきたばかりの身からすれば、それだけ詳しいことはかなりありがたい。
そして、魔法の無限の可能性。
自由自在に扱えるようになったら相当かっこいいだろうな。
禁止魔法…って、名前からしてかっこいいんだが(厨二病)。
いつか、完璧に扱えるようになってみたい。
さっそく、勉強を始めてみるか。
そして、ページをまた一枚めくるのだった。
一章 火属性
一章では、この世界で最もたくさんの場所で使われている火属性について学んでいきます。
様々な複合魔術に使われるとともに、最も攻撃的な属性と言われるように基本5大属性の中では最も攻撃力が高いので、努力を惜しまずにインプットしていきましょう。
次のページでは火魔法の発動方法、それ以降は火属性を応用した初歩魔術が説明されています。
力試しと思って練習してみてください。
炎属性魔法か。
攻撃力が一番高いと書かれているし、きっと対さっきの魚戦(4話:チャル川での洗礼参照)でも活躍してくれるだろう。
でもあれ?
魚って水の中にいるわけだし、あんまり効かないのでは?
今は他の属性を勉強するほうがいいのか?
いや、でも様々な複合魔術に使われると書いてあるみたいに、これからけっこう役に立ってくれるのかも。
そう考えると、早いうちから火属性の基礎だけでも習得しておくといいかもな。
さっそく次のページに進んで発動方法ってやつを勉強していくか。
次のページには人の絵とその中を通る矢印がかかれていた。
その矢印は口の中から体内に入って、手から出ていくように描かれている。
さっそく翻訳。
魔力の通り道と炎魔法の発動方法について
まず、魔力とは空気中に存在しているエネルギーのことであり、これを呼吸やポーションによって体に蓄え、それを手から放出することで魔法が発動されます。
火魔法を含む基本5大属性は、この行動に加えてそれぞれの発動のキーとなる言葉を発することによってそれぞれの効果を反映させられます。
練習を重ねることによって言葉を発さずともそれぞれの発動が可能になりますから、それを努力の一つの指標として頑張りましょう。
火魔法発動の際の言葉は「フレイム」です。
最初から炎魔法を発動させようとするのではなく、まずは魔力の軌道を意識して掴むことから頑張りましょう。
なるほどなぁ。
この世界の空気には魔力が含まれていて、人間(を含む生き物全部?)はそれを体内に取り入れて手から出すという循環で魔法を発動していると。
火魔法を早く扱ってみたい気持ちはあるけど、とりあえずはこの教科書にしたがって、魔力の軌道を掴んでみるかな。
まずは呼吸して魔力を取り入れるところ。
魔力を取り入れるイメージ…………。
何十回か意識して呼吸してみた。
だが、どれだけ集中して感じようとしても、魔力が入ってくるという感覚は全くしない。
えっと…全く掴めないんだが?
少なくとも普通に呼吸している分には、特に魔力があるとかそういう感覚はしない。
普通の呼吸じゃだめか…なら、深呼吸ならどうだ?
普通の呼吸だと呼吸が浅くなりがちだけど、深呼吸みたいに深く息を吸えば、魔力を感じられるかもしれない。
次はしっかりと空気を吸ってみるか。
よし、
スゥーーーーー。ハァーーーーー。スゥーーーーー。ハァーーーーー。
スゥーーーーー。ハァーーーーー。スゥーーーーー。ハァーーーーー。
段々と心が落ち着いてくる。
すると、なにか得体のしれない力が体に入ってくる感覚がした。
そのなにかは喉を通って…どこかへと消えてしまった。
いっ、いまのは!
これが、魔力なのか!?
今は確かになにかが通っていった。
普通に呼吸しているだけでは感じることのないようななにか。
魔力の軌道を掴んだ?
いや、今は一瞬しか掴めなかった。
やっと、魔力の軌道を掴むというのがどういうことか分かった気がする。
きっと、このなにかの後を追って、どのように体を巡っているのか知ることなんだ。
そうすれば体を流れる魔力の軌道というのも必然的に感じられるはずだ。
だけど、今感じていたはずの魔力は喉までしか追えなかった。
まずは、魔力の軌道をより深いところまで終えるようになることが課題だな。
そして再び、魔力の軌道を掴もうと深呼吸を続けるのだった。




