4話:恐怖の夜
ファル伯爵
ダンヌ王国の伯爵の一人
過去の経験から異民族(他の人間の民族)、他種族に対して差別的な経済体制を敷いている
1代で男爵家から伯爵にまでのぼりつめる
えっと…ファル伯爵が異民族に対して差別的な政治体制を敷いていると…。
いや、日本人は異民族に当てはまるんやろうなーー。
じゃあ、街に降りていったら差別的な待遇を受けると…降りれんなぁ。
一人で開拓していくしかないんか。
【太陽の加護】でやる気をもらって、なんとか前を向くのだった。
そうだ、今のうちにどんぐりを水につけておいたらいいかも。
漬けておけば、明日の朝には勝手に浄化してくれてすぐに食べられるだろうし。
一晩中浄化を続ければ、さっきみたいにペースト状にせずに殻を砕いた実のままでも食べられるように浄化してくれるかもしれない。
正直、さっき食べたどんぐりは味も食感もなくて、達成感はあったが、あまり美味しくはなかった。
実を潰さずに食べれば食感は残せるから美味しいという要素にも挑んでいけるだろう。
そうと決まれば、残りのどんぐりの殻も砕いていくか。
一つ一つ殻を割って…と、よし完了!
この水たまりにつけておくか、と水面近くにしゃがむと…
ワオーン
狼の遠吠えのような音がした。
やっぱり狼おったんか。
急がないと、今は対抗手段がないから一方的にやられる。
急いでどんぐりを水に漬けた。
そして、洞穴の方向に進みだした。
空を見ると、太陽は半分が沈み、もうすぐ完全な暗闇に包まれそうだ。
そういえば、この世界にも月のようなものはあるのだろうか。
あるならば、夜中であってもまだ目が利く。
東の空を見ると、白くて丸いものがみえた。
まさしく月だな。
月があるなら完全な暗闇になるわけではないし、進めなくなるなんてことはなさそうだな、良かったぁ。
あとは、洞穴のカモフラージュか…。
いや、今からの時間でカモフラージュは無理だろう。
となれば、今からの帰り道でなにか材料を集めてバリケードを作るなりしたらいいかもな。
そう考えて、1m超の枝を拾いながら洞穴へ帰っていった。
洞穴(我が家)に到着した。
とりあえず自分が洞穴に入り、入口にさっき拾った枝を突き立てていく。
洞穴入口の端から端まで枝を突き立てて…と。
よし、簡易的だけど枝のバリケードの完成だ!
これで野生動物の侵入は防げるだろう。
これが破られたら二度目の人生も終わりだな…頼んだぞー!
まぁ、ひとまず手にした安全区域だ。
安心したら、急に眠気が出てきた。
少し寝よ…う…。
「○○○○、〇〇けて」
うん、なんだ?
なにかの声が聞こえて目が覚めた。
今、なんて言ってたんだ?
耳を凝らす。
「たすけてっ、たすけて…」
たすけてって言ってる!
助けに行きたい、けど今の俺って自分の身すら守れなくないか?助けるなんて…
あれ、というかそれ以前に、今聞こえたのは日本語?
…なぜ外にいる誰かは日本語を使っているんだ?
まさか、俺みたいに転生してきた人が他にもいたとか?
こういうときに役に立つのは鑑定スキルだろう。
その洞窟の外にいる誰かに対して鑑定スキルを使った。
すると…
デイルン(寄生虫の一種)
鹿型の魔獣のような中型の魔獣に寄生し宿主を操る魔物
寄生されている動物は額のあたりに3つ目の大きく開いた目があるため見分けられる
3つ目の目から獲物に対して助けてほしいという脳波を発しておびき寄せて、近づいてきたところを仕留めて捕食する
(能力値等は鑑定Lv.3になると表示されるようになる)
えっ?!
外にいるのは人じゃなくて、魔物だったってことか?
助けてほしいという脳波で獲物をおびき寄せる…完全に俺のことを狙ってるじゃないか!
戦うなんて選択肢はありえないし、このまま静かにやり過ごすしかないな。
というか、この世界にいるのは現世のような動物ではなくて、「魔物」なのか…。
幸い、そのデイルンという魔物はすぐにその場を去っていったようで、危機は免れた。
魔物について調べてみるか。
魔物
自然に暮らす魔獣とは異なり、悪魔や吸血鬼によって悪意を持って作られたクリーチャー
人間、ドワーフ、魔獣など何でも見境なしに襲う
知性はないと考えられている
悪意を持って作られた、見境なしに襲う…、やっぱり、この世界で生き残るのは一筋縄で行くほど簡単ではなさそうだ。
デイルンがすぐにどっかに行ってくれてよかったぁーー。
さっきの魔獣の襲撃は一旦おいておいて。
そういえば、さっきの食料確保の目標達成で実績解除の目標を全て達成したはずだ。
新しい目標は何になったのだろう。
ステータスからスキルのところの…で、『実績解除Lv.1』を押してっと。
【実績解除Lv.1】
現在の目標は①魔物を討伐(E)
②一夜を越す(F)
③動物を食べる(F)
特別目標 ①この周辺に集落を作り、人口を100人にする(C)
ほうほう、魔物の討伐に、一夜を越すこと、そして動物を食べることか。
一夜を越すはこのまま待っていても達成できるだろうし、明日は…動物を食べるっていうのを達成しよう。
川には魚もいたし、追い込むことができれば一匹は捕まえられるだろう。
魔物の討伐は…当分怖くて無理やわ。
案外、一日をなんとか乗り切って振り返ると、今日は楽しい日だったなぁ。
「異世界生活、たいへんだけど、悪くはないな。」
そんなふうにつぶやいて、俺はいつの間にか眠っていた。
ピヨピヨ、ピーピー。
鳥のさえずりが聞こえる。
ん、もう朝か。
外は明るくなっているようだ。
大きく背伸びをしてバリケードの隙間から外を覗く、見た感じ外には魔物や魔獣がいるようには見えない。
念のため鑑定スキルで外に何もいないことを確認したが、やっぱり何もいないとのことだったので、木の枝を引っこ抜いていき外へ出た。
外にはいくつかの動物の足跡があったが、特に鹿の足跡が洞窟の前にたくさんあった。
昨日のデイルンという魔物のものだろうか。
今になって思えば、あれはものすごい恐怖体験だったなぁ。
もしあの時、なんの警戒もせずに外へ出ていたら…。
昨日の夜のことを思い出していると、毎度おなじみの選択欄が出てきた。
目標にあった一夜を越すというものが達成されたことによるものだろう。
そろそろ戦闘系のスキルを取るのも悪くないなぁ。
今日は魚を捕まえる予定であったし、仮に電気系の魔術スキルをとれば、水中に電気を流して感電させて容易に魚を捕らえられるかも。
「どれも強そうだなぁ、うん?」
選択欄には俺の目を強く引く特殊なアイテムがあった。
アイテム「魔法発動入門書」だ。
魔法発動入門書(Ⅰ)
魔法専門中学校入学前までにここは押さえておきたい魔力発動のポイント大収録!
火のような一般魔法や聖のような特殊魔法の扱い方まで丁寧に説明、あなたにあった魔法を練習できます
中学校入学後に授業でおいていかれたくないあなた!
今こそ、この本を手にとって、上位層に仲間入り!?
魔法発動入門書シリーズⅠ〜Ⅴの中で、最も初歩的な内容を扱っています
見たところ、この世界の中学校入学前の準備段階で使う教材かな。
だけど、魔法の扱い方すらよくわからない俺にはかなりありがたい代物だ。
えっ、鑑定スキルも魔法だろって?あれは鑑定したいと思ったら勝手に鑑定してくれてるから、魔法の使い方はまだよくわからないんだよね。
やっぱり攻撃系のスキルを一つ取るよりもこの本を取るほうが一石∞鳥だよな。
俺のもったいない精神も働いて、俺はこの本を選んだ。
選択後、いつの間にか目の前にそれが置かれていた。
ガッシリとした緑の表紙に、300ページはありそうなボリューム!
とりあえず開いてみるが…何この文字?
よく考えたら、俺はこの世界の言語を知らないんだった。
だが、会話を聞くのではなく文章を読むだけなら、
「mfhdnms mcj」
→「魔法発動入門書入門 もくじ」
鑑定スキルでなんとかなる。
これで魔法の練習もできそうだ。しかし、さすがにお腹が空いてきた。
とりあえず、チャル川に向かって、昨日漬けておいたどんぐりを確認しに行くかな。




