3話:おいしい食事を求めて
引き続き、マップに木の実とかかれた場所に向かっている。
少しずつ日が傾いてきているし、暗くなると足場が見えなくなりそうだな。
そうなると、洞穴に帰るまでがかなり危険になるし、日が出ているうちに食料をゲットしたい。
とりあえずは一番近そうなスポットを目指すことにした。
木の実といっても、どんな物があるのだろう。
甘かったら嬉しいけど、いま一番あってほしい大事な要素は、調理をせずに食べられるかってことだ。
これから日が暮れるまでに調理器具を用意するなんてさすがに難しいし、ご飯が明日まで食べられないとなると、お腹が空いて何もできなくなりそうだし。
洞窟探し+川までのゴツゴツした岩を避けていく道のりで、洞穴を見つけるまでの時点で限界だった体は、さらなる移動でもうくたくた…。
それに加えて食料が得られないと、明日からの体力にも関わってくる。
なんなら、回収しながら食べられるくらいであってくれ!
チャル川から木の実があるというスポットはそれほど離れておらず、10分くらい歩いていたら着いた。
だが、甘そうな果実をぶら下げた木なんてのはどこにもなくて…地面を見ると、木の実…というよりどんぐりがたくさん落ちていた。
「どんぐりを、食べる…?」
甘い、調理をせずに食べられる以前に、どんぐりって食べられるのか?
こういうときのために鑑定スキルがある。
どんぐりを鑑定してみると、
どんぐり
なにかの種子
食べることは可能だが、身を守るための呪いの効果が付与されており、それ相応の処理が必要
なんの種類の樹木の種子なのかもまだわからないところを見ると、『鑑定Lv.1』だとまだまだ完全ではないって感じだな。
で、鑑定結果だが、どうやら呪い効果というのがついているようだ。
【太陽神の加護】に呪いが効かなくなるというふうには書かれていなかったし、調理せずに食べるのは危険だな。
どうしたようか…。
俺は休憩しがてら調理方法を考えるのだった。
うーん…。
呪いって絶対にやばいよな。
呪いをなくす調理方法か…。
焼くなり煮るなりできるんなら解決方法はあるかもしれないけど、今から火起こしなんてのは現実的じゃないなぁ。
火起こしで枝と枝をこすり合わせるっていうのは知ってるけど、あれ、相当難しいもん。
他の方法でいくしかないか。
これまで見てきたものを思い出す。
生い茂る木々、崖の洞穴(我が家)、回復効果がある川…。
うん?回復効果がある川?!
思いついた!
どんぐりを砕くなりして食べやすくして、水につければ、回復効果で呪いを打ち消せないかな。
呪いは悪い影響を与えるものだし、回復はそういう影響を打ち消したり、治したりするものだろうから、呪いをなくすことができるかも。
そうと決まれば、すぐ実行に移すか。
幸い、まだ数時間は日が出ていそうだし、そのうちに解毒を終わらせたい。
そうして、大きく、穴が空いていないどんぐりを数十個集めて、着ていたシャツを脱いで、それに包み、チャル川まで運ぶことにした。
えっ、シャツが汚いだろうって?
川で洗えば大丈夫でしょう…。
もう少しで川につきそうな地点で、1頭の大きな鹿が見えた。
「動物もいるようだし、いつか狩りでもしたらいいかもしれないな。
鹿肉とか食べたことないけど、肉なら何でも美味しいでしょ。」
と呑気なことを考えていたが、その事実に、自分の置かれている状態の最大の危機がやっと分かった。
鹿のような大きな動物がいるほど整った環境ならば、自ずとそれを捕食するような肉食の動物がいるのでは…?
今俺がいる環境は日本でも見たことがあるような感じで、日本では山道を歩いていても肉食の動物に会うことなんてめったにないから完全に忘れていたが、この環境には狼や熊も住んでいてもおかしくない。
実際、昔の日本にはニホンオオカミなんかがいたらしいから、狼が生息している可能性も高い。
なんの対策もせずにこのまま夜を迎えれば、自分よりも夜目が利く肉食動物たちの餌食になってしまうだろう。
洞窟に帰ったら、入口をカモフラージュする必要がありそうだ。
やっとチャル川に着いた。
早速、シャツに包まれていたどんぐりを取り出し、岩で殻を割り、水につけてみた。
すると、どんぐりの鑑定結果がさっきと変わった。
浄化中のすり潰されたどんぐり
すり潰されたことによって水と接する面が増えて、呪いの解除速度が上がった
浄化完了までもう少し
浄化後には無害
どうやら、予想が当たっていたようだ。
3分ほどで浄化されるらしい。
だが、川の流れでどんぐりが流されていきそうで、必死に手で包む。
もう少しで…この世界初のご飯。
やっと、鑑定結果が変わった。
呪いの浄化が終わったようだ。それでは早速いただきます!
一気に口へ放り込む。
…、味もなければ、食感も(すりつぶしているから)ない。
だけど、自分で食料を調達できたことがめちゃくちゃ嬉しかった。
そして再びアイテムやスキルの選択画面。
おそらく、食料確保の目標が達成されたのだろう。
ここでは、『鑑定Lv.2』をとることにした。
チャル川の回復効果の秘密を知りたかったからだ。
そして、チャル川の水を鑑定してみると…まさかの結果が出た!
チャル側の上流水
ダンヌ王国ファル伯爵領を流れるB級河川
水源付近の魔金鉱が長年の侵食によって少しずつ削られ、魔金鉱の持つ性質のうちの一つである、微弱な回復効果が水にも付与されている
扇状地の扇頂より上はまだ手がつけられておらず、ファル伯爵が開発を進めようとしている
以前よりもかなり情報が増えた。
新たに出てきた大事な情報1つ目、ここはダンヌ王国という国だということ。
2つ目、上流部に魔金鉱という鉱石があるということ。
そして3つ目、分かっている限りではここより南を統治しているファル伯爵はここらへんの開発にも意欲的であるということ。
一番気になるのは、やっぱり2つ目の魔金鉱っていうところだ。
なんとありがたいことに、魔金鉱やダンヌ王国など自分のよく知らない単語は青くなっていた。
◯ikipedia的な感じで。
多分押したら、どういったものなのか説明が出てくるんだろう。
鑑定Lv.2に感謝しつつ、とりあえず魔金鉱と書かれた部分を押してみる。
魔金鉱とは、魔力を帯びた金鉱石のこと
産出された場所によって異なる性質を持っており、魔道具の部品やジュエリーとしての需要が高く、世界でも価値が最も高い鉱石の一つ
鉱石の性質は切れることがなく、大きな鉱石ほど効果も出やすいため、市場では大きさにもよるが、国家予算レベルの値段で取引されることもしばしば
とにかくものすごい鉱石の存在を知ってしまったようだ!
ファル伯爵は上流部の開発にも意欲的らしいから、この情報を伝えれば、暮らしには困らないくらい支援してもらえるかも。
正直、サバイバル生活ってつらいからな。
さっきは集落を作っていこうと言ったけど、この森に危険な動物がいそうなところを見ると、開拓はかなり難しそうだ。
一度、町での生活に戻れるんなら、力を蓄えるためにも町に降りていくべきかもしれない。
そんな感じで期待を抱きつつ、そういえばファル伯爵についても何も知らないなぁと思って、そっちを調べてみる。
だが、その結果に俺は大きく絶望するのだった。




