23話:魔道具づくり
ダザさんやヒッチさんは建築作業に戻り、俺とルウ、クリーリャロさん、ミィさん、アーティは魔道具づくりを始めることにした。
「アーティ。核は回収できたわけだけど、魔道具への加工はどうすればいいんだ?」
「加工の工程は大きく分けて二つになります。
一つは、ルウさんの擬態スキルを核の魔金に刷り込む作業。
もう一つは、核が傷つかないように、周りを包む作業です。」
「なるほど。先にルウのスキルを刷り込めばいいかな?」
「はい、マスター。それが良いと思います。
刷り込むには、ルウさんが魔金に触れ、擬態スキルを発動してください。
スキル発動中に魔力を核へと流し続けることで、情報を定着させられます。」
「ほうほう。ルウ、これに触ったまま擬態スキルを発動してくれる?」
「いいよ。」
そう言って、ルウは魔金を受け取った。
「じゃあ、いくよ。」
「うん、お願いね。」
俺がそう返事をすると、ルウは目をつぶった。
そして少しして、ルウの体に変化が見え始める。
さっきまであった尻尾や耳がだんだん透けていっているのだ。
これが擬態スキル…。
ルウはもともと人狼だから、耳と尻尾がなくなるだけでも人間に見えるようになりそう。
「ルウさん、擬態しながら魔力を魔金のほうに流せますか。」
アーティがそう尋ねたが、ルウからの返事は返ってこなかった。
相当、集中しているんだろう。
「アーティ、俺が魔力を流してもいいのか?」
「ただ魔力を流すだけではいけません。
ルウさんが擬態をしている最中の魔力を魔金に流すことで、スキルを刷り込むことができます。
ですから、マスターがルウさんの体を通して魔金に魔力を流せば、それでも刷り込めると思われます。」
ルウの体を通して、魔力を流す…。
さっきの岩に引っ付いた魔金をくり抜くときもそうだったけど、手から勢いよく魔力を出すだけじゃなくて、正確に、丁寧に魔力を送る作業か。
目を瞑り、深呼吸して自分の中の魔力の軌道を意識する。
そして、俺はルウの背に手を触れて、少しずつ少しずつ魔力を出した。
ルウの体の中に流した魔力の行方を追う。
とりあえず侵入は完了。
さて、ルウの体の中にある魔力の渦を見つけて、そこでルウの魔力と合流。
そして、ルウの魔力を伴って魔金に流れていこう。
―――だが、俺が追っていた魔力は渦に巻き込まれるわけでもなく、急に動きが止まった。
あれ…渦は?
渦に巻き込まれるなりして動いてくれないと、魔金に魔力は流せないな。
もう一回試してみよう。
そして俺は再び魔力を流して行方を追ってみるのだが…これも同じ結果になった。
おかしいな。
でも、おかしいおかしいなんて言っているうちに、ルウも擬態を終えてしまうかもしれない。
…やりたくはなかったけど、こうなったら仕方がないか。
俺の手からある程度の勢いを持って魔力を出して、魔金に魔力を送ろう。
ルウには何も影響が出ませんように。
そう願いながら、俺は少し多めに魔力を流すことにした。
「うっ、ぐう…!」
ルウの少し苦しそうな声が聞こえる。
ごめん、ルウ。少しの辛抱だぞ…!
そして、俺から出た魔力は勢いを持ってルウの体を通過し、魔金へと行き着いた。
届いた…!
「マスター!聞こえているかわかりませんがつたえておきます。
魔金に擬態のスキルが付与されました!もうやめて大丈夫ですよ。」
よし、うまくいったようだ。
「ふぅっ。」
「マスター、成功しました!」
「あぁ、聞こえたよ。ルウ、もうできたって。」
だが、ルウはまだ目を閉じたまま、なにも声を出さない。
というか、俺が背中に触れる前と姿勢も全く変わっていない。
まぁ、耳と尻尾がなくなったってところは変わったか。
……大丈夫かな?
「ルウ、大丈夫か?」
返事がない。
「ルウ!!起きろーー!!!」
「うわぁ?!」
「ほっ、目が覚めてよかった。ルウ、大丈夫?」
「うっ、うん。」
「良かった。それで、うまくいったって。」
「本当?良かった!」
「まさか一回で成功させてしまうなんてね……。ルウくんも、よく頑張ったわ。」
とミィさんが驚きながら声を上げる。
「えへへ……ありがとうございます。」
「ルウ、本当にお疲れさま。」
「うん!」
「そういえば、アーティ。もう魔道具としての機能は出来上がったのか?」
「はい、マスター。あとは防護するためにコーティングを施すのみなので、魔道具自体はもう完成しています。」
「ありがとう、アーティ。ルウ、人間に変身できない誰かを連れてきて、魔道具がしっかり働いてくれるか実験してみようと思うんだけど、その役目を任せてもいい?」
「もちろん!任せといてよ、アサヒ兄ちゃん!」
「私がついていこう。」
そう言って、クリ―リャロさんとルウが建築作業をしているところに向かっていった。
「それで、次はコーティングだっけ?なにでコーティングしたらいいの?」
「そうですね…。魔金は核としてはこれ以上ないほど優秀ですが、そのままでは傷つきやすいため、ある程度丈夫な外殻を形成する必要があります。」
「ふむ…何がいいかな。ミィさん、何かアイデアはありませんか?」
「そうね…。あまり分厚くなくてもいいなら、樹液はどうかしら?」
「樹液、ですか?」
「えぇ。かなり硬くなるから、耐久面では申し分ないわよ。」
「なるほど、樹液いいですね。アーティ、魔金を守るのに適した樹液はある?」
「はい、マスター。魔金の保護には魔樹漆が適しています。硬化後は非常に丈夫で、魔力の伝達も妨げません。」
「なら、魔樹漆を探しましょうか。」
「アサヒ、その必要はないわ。」
「えっ?」
「そうですね、ミィさん。マスター、目の前に生えているその木が魔樹漆のとれる木です。」
「えっ!」
まさか、目の前にあったとは(笑)
ミィさんが人間からモモンガに戻って、手の鎌でその木に傷をつけた。
「これで樹液はたれてくるわ。あとは、集めてそこに魔金を漬けて乾かせば出来上がりよ。」
「ミィさん、ありがとうございます。」
そう言って、俺は近くに落ちていたすこしくぼみのある石を拾い上げて切り口の下に置いた。
「アサヒ、漆の樹液はかぶれるから、素手では触らないほうがいいわ。まぁ、魔金の回復効果で治るとは思うけどね。」
「本当ですか。教えてくれてありがとうございます。」
そして俺は石の少しへこんだ部分に樹液を集めるのだった。
それから30分程経った。
樹液はへこんだ部分に十分な量が集まった。
「アーティ、どうやってコーティングしたらいいかな。」
「マスターの地魔法で魔金を浮かせて、魔金全体に樹液が行き渡るよう、ゆっくり動かしてはいかがでしょうか。」
「それがいいと思うわ。」
「分かりました。」
そして俺は魔金をいい感じに動かして、表面に琥珀色の薄いコーティングができた。
琥珀色の液体がゆっくりと石へ滴り落ちる。
「完全に乾くまで30分ほどかかりますので、それまで持ち上げておく必要があります。」
「分かったよ。」
「かなりうまくいったわね。もう少し待ちましょうか。」
「そうですね。」
あと30分で完成か……。
実験がうまくいくといいな。




