22話:魔金鉱をとりにいく(3)
「アサヒ…これは。」とクリーリャロさんが驚きの声を上げる。
「抽出した魔金鉱です。というか、もう不純物を取り除いた純粋な状態なので、魔金鉱ではなく魔金ですね。」
「でも、どうやって取り出すのよ。まだ熱いでしょうし、このまま冷えたら岩にくっついちゃうじゃない?」
「とりあえず液体のままじゃ回収しにくいので、十分に冷えて固まってから回収しましょう。
量もあまり多くなさそうですし、その時に地魔法で慎重に集めます。」
「その方法が最適かと思います、マスター。」
「……まぁ、アーティがそう言うなら、その方法でいいかもね。」
「アーティ。持てるくらいまで冷えるのに、あとどれくらいかかる?」
「はい、マスター。現在の大きさですと、自然冷却では約30分ほどかかる見込みです。」
「そうか。」
30分くらいなら待っていてもいいだろう。
「ということなので、回収してから帰りましょう。」
「あぁ、分かった。」
「えぇ、分かったわ。」
そして、俺達4人(実質3人…というか2人と1匹、いや、1人と2匹?)はその付近で待機することにした。
「あら?」
ミィさんが突然、耳を立てて声を出した。
「どうしました?」
「何かが近づいてきているような音がするわ。
魔獣っぽくない歩き方、どちらかというと人間っぽいけど、人間とは違うような…。」
そこまで音で感じ取れるものなのか?!と驚きつつ、俺とクリーリャロさんも周囲を警戒する。
「マスター。こちらの方から獣人の気配が近づいてきています。」
「ってことは、ミィさんが感じ取っているのはそれの音…?」
「なるほどね。方向的にはマリラ伯爵領からかしらね、アーティ?」
「はい。間違いないと思います。」
「アーティ、マリラ伯爵領って?」
「マリラ伯爵領とは、ダンテ王国の北西を治める唯一獣人の伯爵、マリラ伯爵家によって統治されている領土です。
ダンテ王国は北西に山岳地帯があり、そこの豪族であるマリラ家を伯爵家として自治を任せています。」
ダンテ王国…はファル伯爵領も属する国の名前だったはずだ。
「マリラ伯爵領とファル伯爵領は隣接しており、ここ、チャル川上流の森林はファル伯爵領となってはいますが、マリラ伯爵領から誤って侵入してしまうケースがあります。」
「なるほどな、ありがとうアーティ。」
「マスターのお役に立ててよかったです。」
「どうやら、迷い込んだだけのようね。マリラ伯爵領に引き返していってるようだわ。」
「本当ですか!この魔金が見られなくてよかったです。」
「そうね。ここで金が取れると知られたら、ろくなことが起こらないでしょうし。」
「マスター。そういえば、そろそろ30分が経過します。魔金が冷めた頃かと。」
「よし、いよいよだな。アサヒ、失敗するなよ?」
「はい、任せといてください。」
そして、魔金の穴へ近づく。
よし、まずは魔力を流す。
さっきは地面に裂け目を入れるだけの、雑なくり抜き方だったから、次は集中してやっていこう。
「アース」
魔金と石英の地層との分かれ目が感じられた。
これにそって分けていくイメージ。
…精密作業で、ものすごく集中しないと一気にバリっといってしまいそうだ。
だけど…俺にかかりゃ、こんな作業なんてイチコロだぞ!
なんですか、あの集中力は。
私、アーティはご主人様であるマスターを見ながら、そのように強く思いました。
私は『鑑定』の分身として存在しているからわかります。
マスターは今、視覚、聴覚、嗅覚、触覚、味覚――五感から入ってくる情報を意識的に遮断しています。
その代わり、魔術によって得られる情報だけを脳内で処理し、魔力の制御へと全ての思考を注いでいるのです。
人間でありながら、ここまで集中できる者を私は知りません。
マスターについては、他にも解析できない項目があります。
魔力表記が「B+a」となっていることです。
鑑定Lv.3では世の中のだいたいのことが分かります。
ですが、「+a」についての記録は存在しないのです。
……やはり、マスターは私の記録では測れない存在です。
………よし。
これで、完成したはずだ。
おそるおそる、地魔法でくり抜いた部分を持ち上げて、それを手に取る。
…岩石の付着なし。
穴の方にも魔金の付着なし。
完璧な魔金だ!!
「やった……やったぞ!!」
「マスター、おめでとうございます!お見事でした!」
「アサヒ、頑張ったわね…。」
「よくやった、アサヒ!」
「はい!!」
大きさはスマホくらいの大きさもないけど、重さはかなりずっしりしている。
これならきっと、優秀な魔道具の核になってくれるはずだ。
そうして俺たちは、魔金を大事に抱えながら、クリーリャロさんの背中に乗ってルウたちのもとへと戻るのだった。
集落建設予定地が見えてきた。
ミィさんがめちゃくちゃ木を切り倒していたから、ある程度近づくと、ものすごく目立ってる(笑)
「アサヒ兄ちゃーーん!!」
「ルウーー!!」
ルウが元気よく出迎えてくれた。
「魔金とれた?」
「ほら、これを見てみな。」
そう言って、魔金をルウに手渡す。
「まさか…族長、本物ですか。」
ヒッチさんが目を丸くしながら尋ねる。
「えぇ、掘るところから取り出すところまでしっかりと見ていたから、正真正銘、本物の純魔金よ。」
その言葉を聞くと、モモンガたちも狼たちも興味津々に魔金を眺め始めた。
……なんか、みんなに見つめられると恥ずかしいな。
ここは話題を変えよう。
「ところで、こっちの方はどうだった?」
「こっちもダザさんたちが手伝ってくれたおかげで、一気に作業が進んだよ。」
「ルウも手伝ってくれて、助かったよ。」
ヒッチさんが褒めてくれて、ルウも嬉しそうだ。
「ありがとうございます、ダザさん。」
「気にするな。これくらい当然だ。」
みんなのおかげで、集落づくりも順調に進み始めている。
そして、俺の手には魔道具の核となる純魔金。
あとは、これを人間化の魔道具へと加工するだけだ。
集落は順調に完成へと向かうのだった。




