20話:魔金鉱をとりにいく(1)
アーティが回答を始めた。
「鑑定スキルの情報から、採掘・錬成・加工の過程の方法は得ることができますから、私が説明することは可能です。」
「……は?」
そして、アーティの回答に全員が口をぽかんと開ける。
無論、俺もだ。
だって、そういうのって採掘・錬成・加工とかの特別なスキルを持ってないとできないもんだろ?
なのに、鑑定スキル一つでこんなにも。
「マスター。鑑定スキルの説明は、これらのスキルには劣ります。
というのも、そういった専門スキルを持っている人は、感覚的にそれらを行うことができるため、素早く、精密に作業できますが、鑑定スキルの知識では方法が説明されるだけであり、実行する人の再現性が問われるためです。
ただし、その方法を繰り返し実践すれば、やがて採掘や錬成、加工といったスキルを習得できる可能性があります。」
「…というと、素早さや精密さを問わないならば、スキルがなくても魔金鉱を魔道具にできるのか?」
「はい。その人がよほどのミスをしない限りは可能かと思います。」
「なるほど…ということらしいですけど…?」
俺がそう言うとクリーリャロさんがもう何も疑うことをやめたような表情で
「そういうこともあるんだな。」
とだけ言った。
「じゃあ早速、私は魔金鉱を回収しに行こうと思いますが、クリ―リャロさんたち狼族はどうされますか?
もしよろしければ、モモンガ族と協力して家を建てるのを手伝ってほしいのですが…。」
「うむ。そうしたいのはやまやまなのだが、狼族は一人ひとりがモモンガ族ほどステータスが高くないから、人間に変身できるのは私とダザくらいしかおらぬ。」
「…そうなんですね!ならば、私達と魔金鉱を掘りに行きませんか?」
俺がそう尋ね、クリ―リャロさんが答えようとした時、モモンガ族のヒッチさんが声を上げる。
「おーい、狼族!集落づくりを手伝ってくれるなら、ミィ様が切り倒した木を運んでくれよ!」
「ふむ、そういう方法もあるか。
ならば、私はアサヒについていくが、ダザは他の狼を連れてそっちの手伝いをしてほしい。」
「族長、了解しました。」
「助かるわ。クリーリャロさん。」
「ミィさん!朝から手伝ってくれて、本当にありがとうございます。」
「いいのよ。それよりも、魔金鉱を掘りに行くらしいわね。」
「はい!」
「ぜひ、私も連れて行ってほしいわ。魔金鉱というのがどんなふうにあるのかも知りたいからね。」
「本当ですか。では、お願いします。」
「まさかミィが人間に助力するとはな。」とクリーリャロさんが言うと、
「あら、私もクリーリャロさんが人間を認めるとは思っていなかったわ。」とミィさんが返す。
「お二人は昔からの仲なのですか?」
「まぁな。私は狼族の一員で副族長だったし、ミィもモモンガ族の族長で、チャル川魔獣会議で何度か合うことがあったのだ。」
「何度かファル伯爵を相手に共闘したこともあるしね。」
「昨夜、ダザさんからファル伯爵と狼族の因縁についてお話を聞きました。
当時の狼族はかなり無理をしていたそうですね。」
「聞いたのか。まぁ、狼族も無茶はしていた。だが…一番無茶をしていたのはミィだった。」
「…昔の話はやめて。」
…昔?何があったんだろうか。
その時、「俺、ここで家作るの手伝ってる。アサヒ兄ちゃんは魔金鉱集め頑張ってねーー!」
とルウが言った。
「うん、分かったよ〜。ヒッチさん、ダザさん。ルウの事お願いしますーー!」
「おう、このヒッチに任せとけぇ!」
ヒッチさんに軽くお辞儀して、再びクリーリャロさんとミィさんに視線を戻す。
ナイスタイミングだルウ。
さっきの空気はちょっと嫌だったからここで一旦リセットだな。
「じゃあ、クリーリャロさん、ミィさん、魔金鉱を掘りに行きましょうか。」
「あぁ。」
「えぇ。」
「アーティも期待してるぞ。」
「はい、マスター。」
そうして俺達は、魔金鉱が眠っているというチャル川の源流を目指して歩みだすのだった。
「へぇ、へぇ。思ったより遠いな…。」
俺達は一時間くらい川端を歩いて源流を目指していたのだが、想像以上に傾斜が急で登山のような感じだからか、疲れがすごい。
いちおう朝から何も食べていなかったので、どんぐりを漬けてあるところに寄ってそれを食べて進み始めたのだが、食べたばかりだからというのもあってか余計に体調が悪い。
「なんだ、アサヒ。これくらいでへばるのか。」とクリーリャロさんが笑う。
「一旦休憩しませんか?」
「マスター。申し上げにくいのですが、まだ目的地まで距離があり、このペースで進むと、今日中に帰れない恐れすらあります。」
「えぇ、そんな…。」
「つくづく思うけれど、人間っていうのは、体が弱い生き物ね。」
「…人間ですみません。」
「…別に謝ってほしくて言ったわけじゃないわ!ごめんなさいね。」
「いや、いいんです。事実ですし。」
「でも、その代わり人間には人間の強みもあるでしょう?」
「ミィさん…ありがとうございます。」
「にしても遅いわ。」
その直後、俺の服の襟がなにかに噛みつかれたかと思えば、投げ飛ばされた!
「って、うわぁ!」
だが、俺の体に衝撃が伝わることはなかった。
そう。俺はクリーリャロさんの背中に乗っていたのだ。
「ここに乗れ。連れて行ってやるわ。」
「本当ですか!?ありがとうございます。」
「まぁ、まさかクリーリャロさんがここまでするとはね。私も乗せてもらうわ。」
「はぁ、何?お前はついてこれるだろうが。」
「別に女の子一人乗ったくらいで、そんなに変わらないでしょ。」
その瞬間、さっきまでそこにいたモモンガの姿が淡い光に包まれる。
光が収まると、そこには黒髪の少女が立っていた。
彼女の頭にはリボンが付いている。
「これなら文句ないでしょう?」
「…好きにしろ。」
「ん?アサヒ、どうしたの?」
「いや、人間になるところを見るのは初めてだったので。ミィさん、なんですよね?」
「えぇ、そうよ。」
そう言ったミィさんは慣れた様子でクリーリャロさんの背中へ飛び乗る。(なお、俺の前)
「行きましょう。」
「はっ、はい。クリーリャロさん、お願いします!」
「まぁ、人間くらい背中に乗ったところで何も変わらんわ!よし、行くぞ。」
「まっ、待ってくださいーー!私を置いて行かないで!」
アーティは駆け出したクリーリャロさんの尻尾にかろうじて掴まっていた。
俺が手を貸して救助してあげる。
「大丈夫、アーティ?」
「はい、マスター。大丈夫です!」
「スピードを上げるぞ。しっかりと捕まっておけよ!」
「はい!」
「クリーリャロさん、結構速いじゃないの!」
「フッ。ミィに言われると皮肉に聞こえるわ。」
そして、さらに源流を目指すのだった。




