18話:集落づくり開始!(1)
その直後、森の中から出てきた複数の何かが俺の足元に降り立った。
足元を見ると、リボンを付けたモモンガを中心に複数のモモンガがいた。
「おはようございます、ミィさん。」
「おはよう、アサヒ。」
「ところで、なぜこんなところに?」
「なぜって…なかなかに白々しいわね。作るんでしょ、集落を。」
「それはそうですけど…。」
モモンガがいるからどうなると…?
「モモンガがいたところで何もできない…とでも思ってるんでしょう?」
図星すぎるミィさんの言葉に一瞬驚きつつも、どんな事ができるのか尋ねようとした。
だが、それよりも前に、その答えは意外なところから返ってきた。
「マスター、ステータスが高い魔獣は人間に変身することが可能になります。
その力を使えば、どれだけ小さい魔獣であっても、集落づくりの労働力となれます。
たとえ、その魔獣がモモンガであってもです。
また、ミィさんを筆頭にここにいるモモンガたちは非常に高いステータスを有しています。
おそらく、全員が人間への変身可能です。」
「なるほど。ありがとう、アーティ。」
でも、ミィさんが本当にそういう意図で来てくれたわけじゃないと、今の発言は無礼だな、
と俺が心のなかで思ったら
「失礼しました、マスター。そしてミィさん。今の発言は配慮が足りていませんでした。」
とアーティが返した。
恐る恐るミィさんの方に目をやると、もともと大きくてまん丸の目が、より見開かれていた。
あちゃあ…。怒らせちゃったようだ。
「…モモンガを自分の下で働かせようとするような発言をしてしまって申し訳ないです。」
そして、ミィさんが口を動かしだしたのだが…
「えっ、ええ。まぁ、そのつもりで私達は来たから別にいいのだけれど…その小さな精霊(?)はなにかしら?
昨日の会議にはいなかったと思うのだけれど。」
あっ、そっちか!
そのつもりで来てくれたというと…集落づくりをモモンガたちが手伝ってくれるということだ。
俺とルウ(とアーティ)だけでは建築となるとなかなか難しいと思っていたし、かなりありがたい助っ人だ。
「本当ですか?ありがとうございます!
それで、この精霊についてですが…昨夜、鑑定スキルをLv.3に上げたら、出てきたんですよね。」
と俺が返す。
すると、ミィさんについてきたモモンガたちが何やら騒ぎ出す。
「Lv.3だと…?」
「出てきたってどういうことだ。」
そしてミィさんも話しだした。
「もう私は驚かないわよ。アサヒの規格外さは昨日の会議で知ったつもりだから…。」
その後、ボソボソと
うん、そうよ私。アサヒはこういうのが普通だから…。
と言っていた気がしたが、小さくて正確には聞き取れなかった。
「それで…本当に精霊なの?」
ミィさんがそう尋ねる。
「いえ、もともとは名前なしの火の玉の姿で出てきたのですが、アーティという名前をつけて、姿はお任せで変更してもらったんですよ。」
「そう…。アーティ、よろしくね。」
「はい、ミィさん。よろしくお願いします!」
すると、洞穴から目をこすりながらルウが起きてきた。
「朝からうるさいよぅ、なんの騒ぎ……、えっ?ミィさん?なんでここに?」
「集落づくりを手伝うために、来てくれたんだって。
あと、アーティはこんな見た目になったんだって。」
「ルウくん、集落づくり頑張りましょうね。」
「ルウさん、おはようございます!」
と二人がルウに言うと、ルウはまたも嬉しそうに尻尾を振った。
というかよく考えたら、昨日まで俺は、一人で暮らしてたわけだよな。
それが、ルウもミィさんも、アーティも増えた。
知り合いなら、クリーリャロさんや、ダザさんも増えたわけだ。
――賑やかな生活っていうのはやっぱりいいな。
と、目の前の光景を見ながらしみじみ思うのだった。
洞穴よりも川に近い場所に来た。
水はけは良さそうでぬかるんではおらず、上になにかを建てても、支障はないだろう。
「では、このあたりの木を切って開発用地を広げて、その場所に家を建てていきましょう。
モモンガの皆さん、今日はよろしくお願いします。」
そして俺達は作業に取りかかり始めた。
ミィさんが木の幹を手から生えた魔力の鎌のようなもの切断する。
まるで豆腐でも切っているかのような切れ味だ。
そして、簡単に建材としての木が手に入った。
他のモモンガたちは、人間に変身して、その木をうまく加工していく。
そして、家が一つ完成した―――。
大きさが20cm四方くらいの家…。
いや、どうやったら住めると??
「あの…なんでそんなに小さい家を造るのですか?」とちかくにいたモモンガ(人間に変身中)に尋ねると、
「えぇ?小さい?俺らからすりゃこのサイズは普通だが。」と答えられた。
「てことはおっちゃん、これってモモンガサイズって言うこと?」とルウが聞くと、
「そうだとも。」と返す。
「…一旦中止!!こんなサイズのうちだと住めないから、人間サイズのやつを建ててほしいです。」
と俺が言うと、
「でもなぁ。この集落は魔獣が住んでもいいと言っていたんだろう?
別にモモンガが住むんだからこのサイズでよくねぇか?
逆に人間サイズくらい大きいと、人間に変身できないやつからすれば、ドアすら開けられないほど大きい家ってことになる。」
う~む。まさかの集落の家の大きさで迷うことになるとは。
そう言われても困るんだけど、宣言しちゃったもんは仕方がないのかもしれない。
それぞれの種族の大きさにあった家も造る…?
それはそれで大変そうなんだけどなぁ。
「もしみんなが俺の擬態スキルを持ってたらいいのにね。」とルウがつぶやく。
そうだなぁ、擬態をみんなが持っていれば、楽に解決できるんだけど。
んっ?
「…アーティ、仮にだが、ルウの擬態スキルを他の魔獣に付与することはできないか?
そして、擬態を使って、ステータス不足の魔獣でも人間に変身できるようにはできないのか?」
とアーティに尋ねる。
「理論上は可能です。ただし、擬態スキルを魔道具へ転写する工程が必要になります。
ルウさんの擬態スキルを魔道具に刷り込み、それを運用すれば、ステータス不足の魔獣でも変身が可能になるでしょう。」
「本当?!変身できるって言うことですけれど…?」
「なんだよ。解決方法があるならすぐにそう言ってくれよ。
お前ら、作る家は人間サイズに変更だ!」
「アイアイサー!!」
「こっちの方針に沿ってもらっちゃってすみません。」
「いや、いいんだよ。俺はモモンガ族のヒッチ。人間サイズの家を造るんだったら何日かかかるだろうし、これからよろしくな。」
「はい、ヒッチさん。お願いします!」
そして作業が再開されるのだった。




