47.【法人設立】
「法人設立……ですか?」
高橋先生の提案に俺は躊躇っていた。
「池田さんによると、メタン発酵発電が理論最大値を超えている。
それに髪の毛も理論以上の強度を持つようになってる。
これらはステージ3と同時に起きてるから、関連を調べてるところなんだ」
それがどうして法人設立に飛躍するんだ?
「現在のメタン発酵発電は約三百世帯分はある。
そこから住居使用分を差し引くと二百世帯分は安定して売電に回せる。
プロジェクトと芽依ちゃんで折半すると百世帯分だ」
一般家庭の電気代を月一万円とした場合、芽依に毎月百万ってことか。
「今年分は松本が押さえたが、一個人の収入としては頭抜けてる」
なるほど、税金対策としての法人か。
「税金対策もあるけど、芽依ちゃんの保護がメインだね。
女子高生が産官学プロジェクトに参画して大金を得ているより、法人として関与するほうが、隠しやすい」
と、なると俺が会社ヤメて表向きの代表かな?
でも会社にはお世話になってるから『はい、さよなら』とは言いにくい。
「隼人君が今勤めてる会社は、隼人君のプロジェクトへの出向が対価だろ?
なら別の対価をプロジェクトに派遣してもらえば問題ないんじゃないかい。
その方向でボクから調整しておこう」
「いえ、でも今回は芽依の都合ですし」
「芽依ちゃんを守ることが、プロジェクトを守ることだからね。そこは心配いらないよ」
◇
後日、会社に向う。
珍しく正装して胸ポケットには辞表が入ってる。
「高橋先生から話は聞いてるよ。
でも、その辞表は一度預からせてくれないか」
まあ、散々お世話になったのに突然『ヤメます』はないよなあ。
「勘違いしないんで欲しいんだが、諸星君の意思を尊重しないワケじゃないんだ。
ただね、社内の制度が間に合わなくてね」
はい?
聞いてみると『社員の独立支援制度』の新設を考えているらしい。
「前から議論はあったんだ。高橋先生の打診がちょうどいいキッカケになったことは否定しないけどね。
一定の条件で会社をヤメて独立を目指す社員に会社から支援が出来ないか、ってね」
そのテストケースにならないか?
という話だった。
詳細は、引き続き高橋先生が調整してくれるとも言ってる。
あんまり甘えるのもよくないが、俺にとっては芽依が最優先だ。
なのでいったん引き上げることにした。
◇
『合同会社 M生体素材研究所』
カッコいい名前だが、実態は、芽依の排泄物を使った発電効率の向上が主な業務内容だ。
ヤメた会社からは俺の先輩に当たる社員が一名、専属で出向になる。
経理の人だが資格マニアで、行政書士に司法書士、社労士や宅建まで持ってる。
当然税理士の資格もある。
この先輩のおかげで、登記がすんなり終わった。
最大二年、ウチに出向扱いでいてくれるらしい。
合同会社なんで社長はいないが、俺が表向きの「代表社員」となった。
収入は、芽依から出たモノだけどな。
慣れない起業の準備に時間がかかり、芽依の卒業まではあと半月になっていた。
なんにせよ間に合ってよかった。
卒業したら、芽依も社員になる。
とっていうか、芽依のための会社だ。
俺たちの新しい門出だ。
反応があると励みになります。よろしければブックマークや高評価、リアクション/感想等いただけると嬉しいです。
これからもお付き合いいただければ幸いです。




