44.【ジャンボバナナパフェ】
唇に触れる柔らかくていい匂いで目が覚めた。
目を開けると目の前にピンクのパジャマ、芽依の満面の笑みがあった。
あ!怒ってる。
「義妹が無防備に寝落ちてるのにのしかかってこない義兄!
なんか言うことある?」
それで怒られるのはさすがに理不尽じゃないか?
明日は余裕を持って移動日にあてたので、実質今日が旅行の最終日だ。
少しは観光らしいこともしようかと近くのテーマパークに来てみた。
温泉熱をふんだんに利用して冬場でも暖かい園内に熱帯の植物が植えられている。
芽依はジャンボバナナパフェにご満悦だった。
機嫌が直ったのはいいが、ジャンボバナナパフェ四つはいくらなんでも食い過ぎだろう。
「大食いタレントかしら?」なんてウワサされてるよ。
午後までかけてノンビリ観て周りホテルに戻ると、高橋先生から連絡があった。
北条教授が常宿にしてる別のホテルに二人は泊まってるんだが、ディナーのお誘いだった。
お受けすると、立派なリムジンが迎えに来た。
芽依は無邪気にはしゃいでるが、俺は既にビビってる。
案内されたのは、ドラマで政治家が使うような料亭だった。
出てくる食事はドレも逸品、酒も美味い。
あれ?
おい、芽依……それ酒じゃ?
「えぇ?そぉ??」
取り敢えず取り上げると、やっぱりお酒だった。
教育者が二人もいるのに……ってあの人たちは、『フラットランド理論』に関する考察で盛り上がっていて周りが目に入ってない。
「芽依、酔ってないだろうな?」
「ダイジョブ、ダイジョブ」
お冷を持ってきてもらって飲ませる。
度数の低い酒で、すぐに気づいたからまだよかったけど、しばらく要注意だな。
◇
美味しい食事を堪能して、またリムジンで送ってもらう。
部屋に戻ると、二人で風呂に入る。
芽依は例の水着だ。
今日で最後だからな。
芽依のわがままに応じた形だ。
二人で並んで夜の海を眺めながら入る温泉は格別だった。
「今日で終わりかー」
「また来ればいいさ」
二人の世界に波の音だけが響く。
俺の肩に芽依がコテンと頭を乗せた。
「ねえ。アタシ、お義兄ちゃんのこと、前から好きだったんだよ?」
そりゃ俺だって大切な義妹だ。
「そうじゃないよ。家族の好きじゃなくて、男の人として好き。ずっと前から」
…………絶句してると、さらに。
「お酒の力でも借りないと言えないモン」
え?もしかして酔ってるの?
「もう……ホント、ツインズの言う通り朴念仁だね」
うぐっ
「まあいいや。頭洗うから先に出てて。
その代わり、今日は絶対添い寝だからねっ」
こりゃ逆らえそうにないなあ。
今夜も天国が待ってるのか。
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