41.【漁船救助】
結局、その後二十分で高橋先生の白いクラシックスポーツカーは到着した。
「都心は迂回したしね。
オフシーズンでターンパイクからこっちもガラガラで助かった」
それにしたってどんなスピードで走ってきたんだか……
「これ、芽依ちゃんに松本から」
中身はダイバースーツだった。
これで素性を隠せということだろう。
今回は芽依も『可愛くない』と文句をいうことはなかった。
でも内心では不満なの、丸わかりだけど。
「芽依、またご褒美だな?
ナニがいい?」
「別にいらない」
ん?なんかご機嫌ナナメ?
「芽依ちゃんはもっと他のモノを所望してるように見えるけど?」
あー、もう。
「なんでも言ってみろ!
俺にできることならなんでもやってやるから!だから機嫌なおせ」
「ホントに?じゃ約束!
絶対だからねっ」
そんな話をしてる間に北条教授が話をつけててきくれた。
なんでもここの市長と古い仲で役所の中にも、昔世話をした人が何人かいるそうだ。
『私の教え子の秘密を暴露したら、それは私の秘密を暴露するのと同じだと思え』
そう言われた役所の人たちは一様にガクブルになってた。
高橋先生も苦笑いしてるし、昔はよっぽど怖かったんだろう。
◇
提供された倉庫でダイバースーツに着替えてダイビングマスクを付けた芽依は、完全に誰だか分からないようになっていた。
北条教授の手回しで人払いを済ませた場所で、芽依は巨大化する。
「ほお!」
と声を上げたのは北条教授。
そう言えば、話はしてたけど実際に見るのは始めてか。
「高橋の『フラットランド』論文、アレ夢物語だと思ってたが、これを実際に見ると仮説としてはじゅうぶんだな」
「じゃあ芽依ちゃん、事故現場の様子をボクたちが見えるようにできないかな?」
『分かりました』
芽依の声がヘッドフォンマイク越しに聞こえてかる。
どうするのかと思えば、俺が摘み上げられた。
あー、やっぱりこういう役回りなのね。
そのまま、事故現場がよく見える高い岩の上に降ろされる。
なんかもう抗議するだけ無駄なんで素直にDiscordのカメラをオンにして座礁した漁船にスマホをむけた。
その船に芽依が慎重に近づいていく。
水深は芽依の膝下くらいだから10mないだろう。
芽依はゆっくりと船体を持ち上げた。
『あー、船底に大穴あいてますよ?』
『芽依ちゃん、そのまま砂浜へ……』
『いや。その砂浜は満潮で水に浸かる。
諸星君。もう一段上の護岸にそっと置いてくれたまえ』
割り込んできたのは北条教授、さすがにゆかりのある土地だな。
こうして漁船を救助したあと。
『じゃ。お義兄ちゃん、旅行の続きしよっ』
そう言って俺を摘み上げると、元の場所に戻って行った。
ストーリー上はダイビングマスクで顔を隠してますが、挿絵ではイメージ優先にしています。
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