40.【事故】
前日の夜にレンタカーを借りて朝早くに出発したが、都心を突っ切るのに時間がかかり、現地に着いたのはもう午後だった。
閑散期の海水浴場にしては妙に騒がしい。
それでも旅館はすぐに分かった。
名前から日本旅館だと思い込んでいたがホテル風の宿。
まあそれはいい。
部屋がツインではなくダブルだった。
……なんで運命まで俺の理性を試そうとするの?
取り敢えず荷物を置いて再度フロントに。
ウェルカムドリンクサービスをもらいに行った。
なんか騒がしいと思ったら地元の消防団まで集まってきてる。
「火事でもあったんですか?」
折角遊びに来て、火事に巻き込まれたらシャレにならない。
ところが返ってきた答えは想像を超えていた。
「えぇ、近くで漁船が座礁しまして……
このままだた転覆の恐れがある、っていうので人を集めてるんですよ。
折角お楽しみに来ていただいたのに騒がしくてすみません」
あちゃー!またこのパターンか……
漁船のサイズは全長5mほど。
芽依が巨大化すれば助けることはできるだろう。
でもここは地元とは違う。
というかあの時だって、俺は要救助者よりも芽依の安寧を優先しようとした。
でも、芽依は話を聞いちゃったら放っておけないタイプだよなあ。
芽依を見ると、明らかにその気はありそうだが、俺の苦労を考えて口にしてないのが分かる。
伊達に長年、義兄妹やってない。
「どうしたい?」
「助けられるなら助けたい。
でも無理は言えないから……」
はあ。
深いため息をつくと、高橋先生に連絡をいれた。
◇
『隼人君か、そろそろ連絡がくると思ってた』
「えーと、先生はもしかしてエスパーかなにかで?」
『そんなワケないだろ、事故発生直後の速報をTwinsが拾ってね。
ボクのところに連絡をよこした』
「なんでTwinsは?」
『Twinsには、芽依ちゃんのスマホ位置情報を共有してるだろ?』
あ、そうか。
つまり今の状況を真っ先に推測したのはTwinsってワケか。
アイツも、ただのAIのワクからハミ出してるよな。
「それで先生は今どちらに?」
『君たちのところに向かってる。ああ、北条教授も一緒だよ。
彼はそっちに縁があるそうでね。
地元の偉い人ともパイプがあるから隠蔽は可能だそうだ。
ドコまで見越してるんだ?この人?
「でもこっちまで距離ありますよ?」
『それも問題ない。
さっき箱根を抜けたよ。久しぶりのターンパイクだったね。
今は、スカイラインだから後三十分くらいで到着する予定だ』
俺は怖くて聞けなかったことを、思い切って聞いてみた。
「先生、さっきからタイヤのスキール音鳴きっぱなしですよね?」
『うん?気の所為じゃないかな?
安全マージンはちゃんと取ってるよ?』
あー、『安全運転してる』とは言わないのね。
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