36.【ステージ3】
ほどなくして正式に推薦入学が決まり、俺は学校やら高橋先生やらとの調整に追われていた。
早いモノでもうすぐ初冬だ。
「ご馳走様、お義兄ちゃん、いつもありがとうね」
ん?
なんか違和感が……
あっ!
「なあ芽依?メシ食べたのになんで巨大化しないんだ?」
「やっぱりお義兄ちゃん、巨大化したほうが好きなんだねえー」
そう言った直後、芽依は巨大化していた。
どういうことだ?
◇
「芽依ちゃんはついに、自分の意思だけで巨大化をコントロールできるようになったみたいだね」
わざわざ様子を見にきた高橋先生がそういう。
「不安にさせるのもよくないから言って無かったけど、ボクはMMGSにはさらに次のステージがある可能性を考えてたんだよ」
えーと、つまりコレはステージ3ってことかな?
「マッシブマッシュの経口摂取トリガーがステージ1」
うん。これは芽依以外にも症例があるしな。
「そして感情トリガーがステージ2」
芽依をみる限りではそれは正しいっぽい。
ただし芽依以外にステージ2の症例がいないから確定はできない。
「さらにアクティブトリガーがステージ3なんじゃないか、と、ボクは考えてる」
つまり今の芽依は自分の意思だけで155cmと40mを自由に行き来できるワケか……
「さらに言うと。
芽依ちゃんは155cmでいるよりも40mのほうがリラックス出来ると言ってたね?」
芽依が首肯する。
「今の芽依ちゃんは155cmが40mに巨大化するんじゃなくて、40mが155cmに縮む、と内心では無意識に思ってるんじゃないかと思う」
またトンデモ話が出てきたな。
「隼人君は、"フラットランド"という古典SFを知ってるかな?」
知らないなあ。
「あ、アタシ知ってます。
この前、ツインズにオススメされたんで読んでみました。
面白いお話ですよね」
「ほう、Twinsがねえ。
"知力の厚み"なんて言い回しもしてたし、ボクと似たような推論でもしたのかな」
意味が見えない。
「『フラットランド』っていうのは二次元世界に三次元存在が来訪するSFなんだけど。
思考実験としてひとつ次元を増やして考えるとMMGSの様々な不思議現象にも一部説明がつくんだ」
「あっ、平面世界では球は大きくなったり小さくなったりする円に見える……つまりアタシが四次元的存在になっちゃったってことですか?」
なるほど、なんとなく話が掴めてきた。
俺も後でその本を読んでおこう。
「ボクは四次元どころかもっと高次元まで存在が広がってるんじゃないかと推測してるけどね」
なんか、話のスケールがデカ過ぎて……
「この考えに至ったのは、芽依ちゃんが『ケイリー・ハミルトンの定理』に対する見解を述べたからなんだけどね」
なんでそうなるんだ?
「普通の人間では三次元までしか直感的には分からない。
それより上の次元は概念でしか思考できないからね。
でも芽依ちゃんは『なんとなく』でケイリー・ハミルトンの定理が成り立たない場合があるんじゃないか、を直感的に導き出した」
高橋先生はポケットから自分のスマホを取り出すとなにやら操作を始めた。
どうやら医大のサーバにログインしてソコからTwinsに何かのデータを送っているらしい。
「Twins、このデータを三部、印刷してくれるか」
『ドクター高橋、了解しました』
コイツ、俺よりも先生のほうが対応がいいだと?
渡されたプリンタ用紙に目を落とす。
Reinterpretation of the Mass-Conservation Law and Human Gigantism Phenomena in Massive-Mush-Giant-Syndrome (MMGS) based on High-Dimensional Projection Theory
えーと。
『Massive-Mush-Giant-Syndrome(MMGS)における高次元投影理論に基づく人体巨大化現象と質量保存則の再解釈』
とでも訳せばいいのかな?
追記:高橋先生の似非論文を活動報告に載せました。
https://syosetu.com/userblogmanage/view/blogkey/3654692/
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