20.【入居】
次の週末、遂に芽依の巨大化対応の住居が居住可能になった。
『施工責任者』松本さんの案内で家に入る。
まずは人間サイズの入口から入る。玄関からまっすぐに廊下が伸びていて、左右にひとつづつ客間がある。
その先に進むの右側がキッチンで左側がトイレ、風呂、洗面台と水まわりがまとまっている。
さらに玄関からまっすぐ進むとリビングだ。それもかなり広い作りになってる。
リビングに入って向かって左に二つのドアがありそれぞれ俺と芽依の寝室になってる。
なお、俺が向かって左で芽依が右と決められている。
まあ、これには理由があるんだけどな。
俺らの寝室の反対側はサッシのガラス戸になっていてベランダに出入りできる。
ベランダには洗濯物も干せるようになってる。
さて。ここまでは普通の大きめの4LDKだが、ここからが普通じゃない。
玄関から入ってきてリビングのさらに突き当たりに普通の家にはない扉がある。
ここを開けると、そこは物流センターの倉庫ですか?という広い空間が広がっていた。
ほとんどがらんどうだが、目を引くものがいくつか。
まず最初は巨大ベッドだ。
万が一、巨大化した状態で寝なきゃならないハメになった時用だそうだ。
もう一つが、デッカいモニタ。なんと500インチの業務用だそうだ。
これも万が一、巨大化状態でリモート授業を受けるしかない場合を考えているらしい。
このモニタは、Bluetoothでスマホと連動できるように改造されたカスタムモデルだそうだ。
これらは高橋先生の、医師としての強い推奨だと言う。
主治医として万が一の備えだと聞いた。
この巨大空間に出入りするには、リビングの他に芽依の寝室からも直接出入りできる扉があった。
これが、俺の寝室と芽依の寝室の位置が決められていた理由だそうだ。
巨大空間の一角にデカい物置があって、これがあるから人間居住区の収納は最低限にしてるらしい。
「じゃあ、芽依ちゃん、ちょっと巨大化して住心地の確認してくれるかな?」
そう言ったのは松本さんだ。
「分かりました」
芽依は応えると、高橋先生のタブレットを口に放り込む。
その場で40mに巨大化した芽依は、まずベッドに横になった。
「どうだい?」
「はい、寝心地はいいですよ。広さは普通のシングルみたいな感じですけど」
そのベッド、50m×27mあるんだがな。
「ただ高さがだいぶ低いですね」
「それは仕方ないだろ?そのサイズだと、必要資材がシャレにならん」
「でもさあ……」
「普段は人間サイズに戻って寝ればいいだろ?
あくまで緊急用なんだから」
「そうだね」
次は、さっきの巨大モニタだ。
巨大化したスマホを芽依が操作するとスマホ画面が500インチモニタに映し出される…………
ってちょっと待てぇ!!
「おい芽依!
なんで待ち受けが俺の写真なんだよ?」
「あっヤバ……えーとほら。
お義兄ちゃんって特徴ない顔してるから時々確認しないと忘れちゃうの」
「お前、そんな理由なワケないだろ?」
「べ、別にいいじゃない。
お義兄ちゃんの写真を待ち受けにしてるのなんてアタシくらいなんだからね、感謝しなさいよ」
「えーと、先に行きませんか?」
おっと、松本さんが困ってるよ。
その奥には、机があった。
俺から見たら巨大だが、今の芽依には、ちょっとした座卓感覚だろう。
椅子にするのは構造的に不可能だったと聞いた。
さらに一番奥には、池田さんチーム渾身のトイレだ。
「ねえ、お義兄ちゃん、イマドキ和式のボットンはひどくない?」
「仕方ないだろ、そこはガマンしてくれ。
普通の節水トイレでも四リットルくらいの水を使うんだ。今のお前の大きさで水洗トイレにしたら下水道が溢れる」
それに水道代もシャレにならないしな。
同じ理由で風呂もない。
その辺は155cmに戻ってから済ませてください、ということだろう。
そして、人間用エリアから最も遠いところに巨大なドアがひとつ。巨大化芽依が出入りするための扉だ。
主に屋外で不意に巨大化してしまった場合に緊急避難するためのものだそうだ。
この巨大扉、鍵がない。
こんなものを開けられるのは芽依か芽依と同じくらい大きくなった人間しかいないからな。
普通の人間には大き過ぎて開けるのは無理だ。
芽依がその巨大扉を開けて外に出る。
その後を俺と松本さんもついて行った。
「この小屋はなんですか?」
「高橋の提案で芽依ちゃんの生活を支援するAIを入れるそうです。私にはさっぱりですが……」
「中を確認しても?」
「どうぞどうぞ、今後は隼人君に使ってもらうと、高橋も言ってましたから」
は?聞いてないぞ?
「近日中に高橋がここにくると言ってましたからその時に詳細を聞いてください」
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