17.【フェイク動画】
芋ジャージはドロドロだし芽依は目を覚ます気配すらない。
このままリビングに放置もできないし、泥だらけのままベッドに寝かすワケにもいかない。
詰んだ。いや正確には【やってはイケナイひとつの方法】以外は詰んだ。
さすがに悩む。
『コイツは義妹、血のつながりはないけど俺の保護対象』
そう頭の中で何度も繰り返す。
それでも途中で何度か起こしてみることを諦めない。
その努力は無駄に終わった。
やむを得ない。
明日、コイツ激怒すんだろうな。
意を決して、ジャージのジッパーを降ろす。
ジジジジジジ…………
俺のほうが緊張してるわ。
やがてジャージの下の紺のタンクトップが見えてくる。
芽依が目を覚ます気配はない。
インナーは体育用の速乾素材だがシットリ濡れている。
このままじゃ風邪ひきそうだが、さすがにこれを脱がせるワケにもいかないよな。
ジッパーを下げ終わると腕を抜いてジャージを脱がせる。
それでも起きる気配がない。
さて……次は下だ。
ジャージをゆっくりと脱がせていく。
体育用のクォーターパンツを下に穿いていた。
ふう、イキナリ下着じゃなくてよかった。
そうして、泥だらけのジャージを脱がし終えた後、一度芽依をソファに横たえると汚れたジャージを洗い場に持って行く。
リビングに戻ると、芽依はすっかり夢の中だ。
ふう。風邪ひかないうちにベッドに寝かせてやろう。
もう一度、お姫様だっこで芽依の私室に運び込む。
汗はかいているが、ドロドロジャージで寝かせるよりはマシだろう。
そうしてベッドに義妹を横たえて部屋を出ようとした。
「ねえ、お義兄ちゃん。その先は着替えさせてくれないの?」
心臓が止まるかと思った。
「め、芽依?おまっ……いつから起きてた?」
「お義兄ちゃんがジャージのジッパー下ろし始めたあたりから」
ほぼ最初からじゃねぇかよ。
「アタシ、お義兄ちゃんならいいのに」
「ちょっと待てぇ、いいわけないだろ!」
「いいわけなくないよ。アタシたち、血のつながりないんだし?」
「そういう問題じゃねぇ。お前は俺にとって保護対象なんだよっ!」
そしたら芽依がイキナリ泣き出した。
「お義兄ちゃんのバカぁーっ!もういいっ」
そう言って頭から毛布を被って寝てしまった。
明日、大変だな。
仕方なく俺は義妹の部屋を退散した。
◇
翌朝。
「あ、お義兄ちゃん、おはよっ」
芽依は不自然なほど自然体だった。
もしかして覚えてない?
「ねえ、コレ見てよ」
大画面テレビをスマホにつないでるらしい。
『今日は、とある研究所で作られた最新の災害用ロボットを紹介するぜ』
『どのへんが最新なのかしら?』
『自律機動で救助活動ができるんだぜ』
『それは凄いわね』
『このロボットの解説をしていくぜ』
『頼んだわ』
『それじゃ今日も』
『『ゆっくりしていってね』』
いやコレ、写ってるの芽依じゃん。
『高橋先生からURLが送られてきてね。
フェイク動画だって』
たしかに……顔の部分に雑にゲームキャラの顔を合わせてある。
しかもなんか妙に動きがカクカクしてる。
だが、この画像は間違いなく昨日俺がDiscordで共有したものだ。
そうか高橋先生、フェイク動画っぽく見えるようにワザと動きをカクカクさせてんのか。
コメント欄を見ると案の定『釣り動画乙』みたいなコメントが並んでる。
「この動画見てアタシ思ったんだ。周りのみんながアタシの秘密を守るために色々やってくれてるって」
ああ、そうだな。
そう言って頭を撫でてやる。
「だから……ごめんね、お義兄ちゃん」
「ん?ナニがだ?」
「お義兄ちゃんのヘタレ具合、アタシ見誤ってた」
「へ?」
えーと、つまりだ。
昨日のこと覚えていらっしゃる?
コクンと頷く芽依。
「でもね。そのウチに絶対、義妹って立場から抜け出すからっ!
覚悟しといてね、お義兄ちゃん♪」
いや音符付きで言われても。
「芽依、ハッキリ言うぞ。血のつながりがなかろうとお前は俺の義妹だ」
「うん、今はそれでいいよ」
芽依はそう言って屈託なく笑った。
その笑顔を見て、俺の理性は大丈夫なのか凄く不安になった、
反応があると励みになります。よろしければブックマークや高評価、リアクション/感想等いただけると嬉しいです。
これからもお付き合いいただければ幸いです。




