16.【重労働】
「芽依、聞こえるか?」
『うん、お義兄ちゃん、バッチリ』
『こちら高橋。芽依ちゃん、下手に動かすと崩落の可能性がある。隼人君から見て奥側から掘り始めてくれるかい』
『先生、分かりました』
「それにしても、芽依のスマホも巨大化してるんですよ。なんで普通に通信出来てるんですか、先生?」
『MMGSの不思議としか言いようがないね。興味深い。新しい研究テーマになるよ』
「いや……研究テーマって」
『あー、もうお義兄ちゃん、うるさいっ。アタシが頑張ってんだから応援くらいしなさいよね』
何故に俺だけ?
だが、ここに来てしまった以上、今は芽依のモチベーションを保って手早く片付けてしまうのが一番だろう。
「分かった、分かった。応援してるぞ」
『心がこもってないっ!』
「じゃあまたご褒美にケーキ買って帰ろうか?」
『ねぇお義兄ちゃん?ケーキさえ買っておけばアタシが機嫌よくなるとか思ってない?』
ぎくっ
「じゃ、なんかあるのかよ」
『……いつものファミレスでジャンボパフェ』
「え?あのデカいヤツ?」
『最近、大きくなって動き回るとなんかお腹減るのよ』
『芽依ちゃん、それ詳しく!』
先生、そこに食いつくのか。
そんな話をしているウチに一台目の被災車両がほぼ掘り出せた。
重機じゃこんな短時間では無理だろうな。
『芽依ちゃん、中には要救助者が乗ってる。慎重に、水平に保ったまま、ゆっくり持ち上げて』
高橋先生の指示で気を遣いながら、芽依はそっとクルマを持ち上げる。
なんとか一台目の救助に成功した芽依は、引き続き土砂を掘り起こしていた。
『ねえお義兄ちゃん、なんかもう一台埋まってるみたいだよ?』
『芽依ちゃん、ドコに埋まってるか教えてくれないか?』
と、高橋先生。
『えーと、今掘り起こしてる場所の右側』
『松本!把握してるほうの緊急度は?』
「普通の重機じゃ救出困難だが、ケガは軽傷だ」
高橋先生からの指示が一瞬途切れる。
たぶん、どっちを優先すべきか考えてるんだろう。
『よし、芽依ちゃん。そっちのほうが、崩落の危険が少ない。
今まで把握されていなかったことから緊急性が高いかも知れない。
そっちを先に掘り出してくれるかな?』
『分かりました』
芽依も真剣な表情になってる。
これで、助けられませんでした、だと芽依のメンタルが心配だ。
重機ではとてもじゃないが掘削出来る量じゃない土砂を必死に掘り起こした芽依はついに被災車両を掘り出した。
その後も休まずに残り車両を救助したころには、もう芽依はドロドロだった。
◇
「芽依ちゃん、ホントに助かった。お礼は改めてするから」
松本さんがそう言っても芽依はもう疲労困憊だ。
救助作業終了とともに力尽きたように元のサイズに戻った芽依を支えてやる。
「俺は、現場で隠蔽工作するから、先に帰って休んでください」
松本さんの申し出をありがたく受け取って、来た時とは別のミニバンに乗って俺たちは帰宅した。
わざわざクルマを変えたのも隠蔽の一貫なんだろう。
帰宅する頃には、芽依はすっかり寝落ちてしまっていた。
まあなあ。
労働量的にも精神負担も計り知れないだけの活躍をしたんだ。
いわゆる『お姫様だっこ』で家の中に運びこんだが目を覚ます気配がない。
ベッドで休ませてやりたいが、さすがに泥汚れが酷い。
「おーい、いったん起きて着替えて寝ろよー」
何度声をかけてもまるで反応がない。
…………どうしよう、これ。
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