15.【救助活動】
公用車の中で芽依はむくれていた。
さっきまであんなやる気出してたのにどうしたんだ?
「ナニよっ?」
「いや、なにも。やっぱりイヤなら断わるか?」
松本さんが勘弁してくれ、って顔してるがスルーだ。
「別にイヤじゃないっ」
「じゃあ何なんだよ?」
一瞬ためらった後、芽依は言った。
「可愛くない」
はい?
「なんて?」
思わずそんな言葉が漏れる。
「だからっ!このジャージ可愛くない!!」
そんなこと、とは言えないな。芽依に取っては大切なことなんだろう。
「あのなあ、義妹よ。万が一にもテレビに見つかったら、俺たちの暮らしはめちゃくちゃなのは分かるだろ?」
「それは……分かるけど。でも可愛くないのはイヤなのっ」
「義妹よ、そこがまだ甘いぞ。確かに芽依は可愛い。
だからこそこんな芋ジャージ着てるのが、可愛い芽依だなんてダレも思わないだろ?
コレはそういう作戦なんだよ」
「え?アタシ可愛い?ホントに?」
芽依はあからさまに顔を綻ばせている。
「おう、芽依は俺の自慢の義妹だからな!こんな可愛い義妹は他にいないぞ。
だからこの『作戦』中はあえて芋ジャージを着て世間を欺くんだ」
「アタシ、可愛い……へへっ、お義兄ちゃんがアタシが可愛いって言った!」
チョロいヤツめ。
すっかり機嫌を直した芽依を乗せたクルマは山道に入って行く。
警察の規制線のところで松本さんがクルマを降りて警察官となにやら話をした後、俺たちはさらに進む。
現場に到着すると、なるほど酷い有様だった。
山の法面から崩れた土砂が完全に全ての車線をふさいでいる。
土砂に数台のクルマが埋もれているのも見える。
コレ、パワーショベルで掘り出そうと思ったら一週間かかるだろう。
となると人命救助を先にやるんだろうけど、それも困難を極めるだろうな。
「よし、芽依。ボイスチャットに入室してくれ。
松本さんもお願いします」
俺も入室すると、高橋先生が先に入室していた。
『隼人君、カメラを起動できるかい?』
俺はカメラを起動して高橋先生に答える。
芽依もボイスチャットで会話出来ることを確認した後、骨伝導のイヤホンマイクを耳につけた。
ああっ、松本さん。そこ、操作が違います。
やっぱりお役所にDiscordはツラかったかな。
そして、粉塵マスクとゴーグルで顔を隠した芽依は、マスクの隙間から高橋先生謹製のタブレットで巨大化した。
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