14.【土砂災害】
芽依がやる気を見せたことで、二週間の予定だった踏み固めは十日で完了した。
俺と芽依は、いったん元の家に戻って引っ越しの準備を進めていた。
そんなある日の午後、俺たちのスマホがけたたましいアラームを鳴らした。
EEW(緊急地震速報)だ。
スマホの警報とほぼ同時に強い揺れがきた。
慌ててテレビをつけると、震源は割と近くマグニチュードもかなり大きい。
取り敢えずは両親に無事の連絡を入れて、家の中に異常がないか、確認して回る。
一通りの点検が終わった頃に俺のスマホが鳴った。
『役所の松本です。芽依ちゃんは無事かな?』
「ええ。無事ですけど……なんかありましたか?」
こんなタイミングで役所から連絡なんてなんだかイヤな予感しかしない。
そして松本さんからの要請は悪い予感がもろに当たっていた。
「え?災害出動要請?
芽依に、ですか?」
『常識的によくないことは分かってる。だが、人死にを出さないためには他に方法がないんだ』
説明を聞いたところ、山あいの道路で大規模な土砂崩れが発生、通行中のクルマが埋まってるそうだ。
他人の不幸を喜ぶような悪趣味は持ち合わせていないが、申し訳ないが俺は芽依のプライバシーのほうが大切だ。
芽依の意向を確認してから折り返すと連絡していったん電話を切った。
さて、どうするか?
俺の本音を言えば、芽依に拒否されたことにして断わってしまいたい。
被害にあったひとには気の毒だが、大切な義妹を災害現場になぞ連れて行きたくない。
それに、マスコミにでも捕まったら芽依の平穏な生活は望めなくなるだろう。
でも……なあ。
本人に知らせずに勝手に断わって、後で芽依がそれを知った時がコワい。
特に40mで暴れられたら、誰も抑えられない。
「ナニ難しい顔してるの、お義兄ちゃん?」
うわっ、びっくりした。今の顔、見られてたか、ヤバイな。長い付き合いだ、たぶんバレたな。
やむを得ず俺は松本さんからの要請を芽依に話した。
「ふーん、アタシが行けば助けられるのね?」
「たぶん、な……こういうのに絶対は無い」
「でも、松本さんはアタシにしか助けられないと思ってるんでしょ?」
「そうなんだがな。てか、お前、ずいぶんと積極的だな?」
「アタシのことなんだと思ってんのよ!」
ここで凶暴義妹、なんて言おうもんなら話が拗れる。
「もうひとつ心配なのは、もしマスコミに見つかったらお前、自由もプライバシーも無くなるぞ?」
「ソレはお義兄ちゃんが守ってくれるんでしょ?」
クッソ……芽依、その笑顔は反則だ。
「あぁ、分かったよ。ソコまで言うなら俺も腹を括る」
それから松本さんに連絡すると、俺たちは準備を始めた。
◇
「松本さんへの条件は、芽依の身バレを完全に防ぐこと、これひとつに絞った」
自宅で待機していてくれと言われたので待ってると、役所の公用車がやってきた。
松本さんから手渡されたのは、いわゆる『芋ジャー』。
芽依の高校のジャージと似ているが細部が異なる。
学校特定からの本人特定を避けるため、だそうだ。
色はエンジでこれも芽依の学年色とは違う。
さらに工事用のスコップを渡された。
「高橋から聞いたんですが、芽依さんの所有物のほうが、一緒に巨大化しやすいとのことなんで、芽依さんに差し上げます」
「お義兄ちゃん、アタシ、こんなのもらっても嬉しくないよ?」
「分かった、俺がケーキ買ってやるから」
ついでに、ゴーグルと工事用粉塵マスクも用意されていた。
持ってきてくれたジャージに着替えてBluetoothのイヤホンマイクを耳につけ、スマホはジャージのポケットに。
もらったスコップとゴーグル、マスクを手に、芽依は公用車に乗り込んだ。
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