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涙の中に宿っているすべての想い

『ご覧ください。大きな雲の塊は不屈な雷をまとい一つの街を今にも滅ぼしてしまいそうな禍々しさを醸し出しています!かの有名な魔法少女、ストロベリースフレの命日である勇者の日に過去最大級の災害が起きるのはもしかしたら運命のようなものなのでしょうか?』


すべての番組が急遽特番を組み、大きな入道雲をカメラに収めている。


魔法少女たちは各地からもれなく召集され、先んじて戦っている三人を見上げる。



『各地の魔法少女が史上最凶のガーゴイル、《嘆きの乙女・乙姫》を討伐すべく集まりました。すでにこの町の魔法少女たちが戦っています!ショコラミント、ソルトエース・・・あと一人は・・・新人でしょうか?』


魔法御少女たちのほとんどはその三人の魔法少女の空中戦を見て、レベルの違いに戸惑った様子で見上げるばかりで戦闘に入れないでいる。


「魔法少女ユニット、マジカルメロディ、出動!」

「先日の支援要請のお礼を詩に来ました」

「僕たちはサポートに回ります!攻撃の迎撃は任せてください!」


三人が一斉に建物を伝って上空に向かって飛び立つ。


マジカルメロディに続いて次々参戦する魔法少女たちが雲の塊から放たれる様々な攻撃を自身の攻撃魔法で相殺していく。


「前線の三人に攻撃が行かないように私たちで攻撃を分散させるよ!」


パチットキャンディの声が皆を先導するようにこだまする。


その声に魔法少女たちのまなざしに強い光が宿った。


「雲の中心に行くには風穴を開ける必要があるけれど、その厚さは未知数。最悪ショコラミントしか行けない可能性があるわ」


デスサイズの言葉にソルトエースが思わずショコラミントを見る


「別に、あなたたちは私のわがままに巻き込まれただけでしょ?私さえあの人の元に行ければそれでいいの。それにデスサイズが言っていた自爆装置だけど、大臣に聞いたら魔力抑制装置だったよ」

「・・・なんで今更?」

「魔法少女の中には力の制御が苦手な人もいるから、うまく戦えるようにサポートしてくれる機能らしいよ。外部干渉されたら魔力暴走する可能性はあるらしいけど。それだけ」

「・・・そう」


ソルトエースは二人のやり取りに意味が分からないといった様子で首をかしげると、再度足場を生成し、雲の方に階段を作り出した。


「あとはあの中に入るだけだよ!」


ソルトエースの叫び声は暴風に邪魔されてあまり聞こえていないようだったが、言わなくてもその言葉は届いていた。



「・・・私の風を作り出す魔法をお使いください」


いつの間にか追いついていたのか、リリートーンが三人の背後に立っていた。


「それなら私がその風を利用して風穴を開けられるか試してみてもいいかしら」


デスサイズがリリートーンに何やら耳打ちし、頷きあう。


「・・・ウィンドゥドリル!」

「ダークカッター!」


二人が各自魔法を発動し、雲にその先を向ける。



「「マーブルマックススクリュゥ!!」」


二人の声が重なり、鋭利なドリル型の魔法が雲に向かって発射される。


そのドリルはまっすぐ雲の壁に向かって突き進むと、分厚い壁を引き裂き中に向かって消えていった。

しかしその壁はすぐにふさがろうと動き始める。


「ショコラミント!早く行きなさい!」

「町の防衛はまかせてください!」

「ショコラミント!行って!」



「・・・片づけてくる。みんな、ありがと。あと、ごめんなさい」


ショコラミントは振り返ることなく今にもふさがりそうな穴に飛び込んでいった。

ショコラミントの背中がその暗闇に消えると同時に、真っ白な壁は完全にふさがり、また大小さまざまな魔法攻撃があたりにまき散らされ始めた。


「あの子が帰ってくるまで、町の被害を最小限に抑えるわよ」


デスサイズの言葉に、二人は真剣な面持ちで頷いた。





《どうして・・?》

《みんな嫌い・・・だいきらい》

《死にたい・・・もう死なせて》


暗闇の中に、涙にぬれた少女の震える声が幾重にも重なってこだましている。

その声の重圧にショコラミントは頭痛を感じながら、一歩一歩足を前に運んだ。


「私が救わなきゃ・・・」


ショコラミントは背後の穴がとてつもないスピードでふさがっていることに気が付くと、足を動かすスピードを徐々に速めていった。


進めば進むほどにショコラミントの足にからみつく重力がどんどん重くなっていく。


「・・・っ」


その重力は確実にショコラミントの体を蝕み、苦しめている。魔法少女に変身していなかったらきっともう死んでいるだろう。


「おねえさん、ごめんなさい・・・ごめんなさい」


ショコラミントは雫の跡を足元に残しながら、震える声を漏らした。


《しにたいよぉ》


中心に近づけば近づくほど、死を望む悲痛な声ばかりになっていく。


霞というガーゴイルが言っていた「魔力を体に取り込みすぎて、すでに人じゃない、死ねなくなっている」という発言が頭をよぎる。

大臣から教えられた魔力抑制機能の動かし方を脳内で何度も何度もシミュレーションを繰り返す。



ふと、ショコラミントの前に空間が広がる。


そこは真っ白な綿菓子のような繭の中のような壁や床が特徴的な、何もない空間だ。


空間の中心には泣きつかれたのか床に伏せったままの髪の長い少女だけが異様な気配を発している。


《どうして来たの・・・?私を化物にしたくせに・・・今更謝罪なんて・・・》


脳内に声がこだまする。ショコラミントはその場で魔法を解くと、静かに少女の元に歩いていった。

空間は壁の中と違って変身しなくても体に負荷がかかっていない。


「謝ったところで意味がないのはわかっているのでいまさら言いません。私は責任を取ってお姉さんを死なせるために来ました。」

《もう死ぬことができないのに!?どうやって私を殺すというの!?そんなこと言って馬鹿にするために来たの!?》


少女は葉月を魔力の衝撃波で壁にたたきつける。


葉月は内臓がいくつか傷ついたのを感じ、血を口からこぼしながらも再度少女に近づく。


そのたびに絶叫とともに衝撃波で遠ざけられ、葉月はどんどんボロボロになっていく。

しかし葉月はショコラミントに変身することもなく、まっすぐ十その目を見つめて、また少女に近づいていく。


《どぉして・・・?私はただみんなのために戦いたかっただけなのに・・・どうしてみんなに化物を見るような目を向けられるの?どうしてどうしてどうして・・・!》


「お姉さん!」


少女が頭を掻きむしり咆哮を上げようとした瞬間、葉月はその体を強く抱きしめた。


「私のわがままだったんです。私はほとんど友達もいなくて、基本人間不信で、もう死んじゃおうっ思ってた時にあなたに命を救われました。生きて良いって思ったんです。だから、今度は私が、あなたを・・・助けます!」


葉月は涙でぐちゃぐちゃになった顔で抱きしめる力を強くした。


《あ・・・あ・・・あ・・・ぁ・・・あぁぁ~・・・》


少女はその腕に手を回し、まるで迷子の子供のように泣き声を上げた。


二人でしばらく泣いた後落ち着いたのか少女が大人しくなると、葉月は手に持った一つのリボンを強く握りしめた。


《??》


少女は何もわからないといった様子でいつまでも抱きしめたまま離れない葉月に視線を向けた。


「私に任せてください。一人じゃないですよ。お姉さん」


葉月の声はどこか冷静で、穏やかな雰囲気をまとっていた。

~エルエルの魔法少女解説~


こんにちはエル!ぼくは魔法少女の相棒をしているエルエルだエル!

葉月が何を考えてるかは相変わらずわからないけれど、きっと何とかしてくれると信じているエル!

エルエルは優秀だから、パートナーのことを心から信じているんだエル!だからみんなもショコラミントのことを最後まで応援してくれると嬉しいエル!

なので解説番組は今日でおしまいエル!エルエルも寂しいけれど、みんなとまた会えることを楽しみにしているエル~!

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