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黒曜石の奇跡

町の上空に真っ白に輝く大きな光の玉が音速を超える速さで上っていった。


数日間空を支配したその光はとてもまぶしく、歴史に名を刻むのではないかと言われるほどに神々しい空気をまとっていた。


光はまもなくなくなり青空が帰還してくると、鳥のさえずりは消え去り犬や猫は上空を一斉に見つめた。


恐いほどの沈黙が空気を震わせる。


皮肉なほどの快晴が、大きな力を受け入れるかのように微笑んだ。



ひとつの飛行機が伸ばす飛行機雲が青いキャンパスに一本の線を描いている。



葉月は魔法少女御用達の空港ロビーで斜め下に視線を落としながらブツブツと何か言い訳をつぶやいていた。



「葉月!」

「サエ」


ゲートから走って出てきたサエに向かって力なく手を上げる葉月の様子を見て、サエは何かを察したようにそのからだを抱きしめた。


「スフレちゃんがいないから、そういうことだよね」


「・・・」


葉月は何も言葉を発しようとせず、唇を強く噛んでいる。


「ところであの子は?」


サエの視線に気が付いたのか本を読んでいたやよいが椅子から立ち上がり、軽く挨拶をした。


「葉月のクラスメイト。やよいって呼んで。その、あなたには『ノラ』って言った方が通じるかしら?」

「っ!」

「あぁ、構えないで。もう変身する能力は没収されたから。今は普通の一般市民よ。もともと正規の魔法少女じゃなったから」

「ごめ・・・」

「謝らなくていいわ。それよりも、私はこの黙り込んでるガキ臭い魔法少女の代わりに説明するために同行しただけですし」


二人の会話にもまるで興味がないといった様子で「こんなはずじゃ・・・」など同じ言葉を繰り返しつぶやき続けている。


やよいがこの一週間に起きたこと、ストロベリースフレに起きた出来事をざっと説明した。

葉月から無理に聞き出した内容もすべて、何一つ隠すことなくぶちまけた。


「じゃあ、私があの日葉月にあげた魔力残滓は・・・」

「まあそういうことね」


サエは顔を青くさせて寄り添っているうーにゃんを抱きしめる力を強めた。


うーにゃんは不思議そうにサエを見上げる。


「そういえばエルエルは?ここにいないみたいだけど」


サエの一言に、やよいはハッとしてあたりを見回した。

先ほどまで葉月のふらつくからだを支えていたエルエルの姿がどこにも見当たらない。


「エルエルは、みんなの味方エル!だからエルエルは苺花も葉月も笑わせるエル!」


ノイズの混ざった聞き覚えのある声が天井付近から聞こえる。

二人の視線の先には目の色が黒から黄色に、身体の色が白から真っ黒になったエルエルが四つの羽をせわしなく動かしていた。


「エルエルは笑顔が大好きエル!」

「魔法少女とパートナー妖精はマジカルジュエルを通じてつながっている・・・。もしかしてストロベリースフレのマジカルジュエルって・・・」


「ないと変身できないでしょ」


葉月の声が聞こえてきた。


「絶望しても彼女のマジカルジュエルが残っている限り、ストロベリースフレの内面とつながってエルエルにも影響が出てるんでしょ・・・」


二人が葉月の声に思わず視線を向けると、葉月はいつの間にか何か決意を固めた視線を何もない壁に向けていた。


「私がまいた種だもん。私が全部けりをつける」


「で、でも葉月、私も少なからず協力しちゃったから・・・」

「サエは何も知らなかったんだから関係ないよ。わざわざ帰国してくれてありがとう。全部私が終わらせるから留学再開していいよ」


サエの言葉はすぐに遮られた。


「全く・・・どうするかは任せるけど、手助けはさせてくれないかしら?先日見た光の大きさからして厄災級のガーゴイルよりも強いわよ。近づかせるための何か手伝いくらいは・・・まあ、学力しか使えないけれど」


やよいの悔しそうな声が部屋にこだまする。


「とにかく!私は終わるまで留学は再開しないよ!手伝う!」


ふんすと鼻息荒く答えたサエはもうだれにも止められないようだ。


葉月はもう止めるのを諦めたのかチカラのない足音をロビーの空間内に響かせて姿を消した。



町の上空には不思議な形をした入道雲が浮かんでいる。

よく耳を澄ませると中からは悲しみに濡れた女の子の声が聞こえてくる。

その言葉は人の言葉にも、動物の鳴き声にも聞こえる。

ドローンにカメラを積んで接近すれば耳が痛くなるような金属をひっかくような音が聞こえてまもなく破壊されてしまう。


その雲に一番近い、町で一番高いタワーのてっぺんに人影が三つ、立っている。


「じゃあ、計画通りにお願い」


やよいの冷静な声に二人は無言でうなづく。


「・・・冷たいミント、熱いショコラ、巡り巡って目を覚ませ。マジカルマジカル☆スクリーム」

「めぐるリボンは謎の中、不思議の国へご招待・・・!」


二人が変身を終えると、高く飛び上がる。


ソルトエースはいつの間にか習得したのか白いリボンを空中に張り巡らせ足場を次々に作っていく。

その上を雲からの攻撃を避けながら飛び移り、ショコラミントはどんどん雲との距離を縮めていく。


「・・・!」


ショコラミントに複数の小型隕石が向かって行く。


「ショコラミント!」


ソルトエースは足場に使っていたリボンの内一つを盾のようにしてショコラミントを守る。


「避けれたのに」

「そんなことに力使わないで温存して!」

「・・・」


ショコラミントは反応することをやめ、改めて雲に向かって高く跳んだ。



「・・・あの二人だけだと手が足りない・・・あと一人魔法少女がいたら計画も完璧なのに」


やよいが悔しそうに歯を強くかみしめた。



「特別措置のためのリミッター解除をするでび!」


やよいの目の前に紫色の球体が現れ、声を発した。


「・・・!?」


その球体は形を変え、四つのとがった羽を動かしながらやよいに向かって一つだけの目を開いた。


「お初にお目にかかるでび。魔法少女デスサイズのパートナー妖精、デビビンだでび。よろしくお願いしますでび。今はコミュニケーションの時間すら惜しいでびね。・・・これを」


デビビンはそれだけ言うと虚空から紫色の見覚えのあるランタンを取り出した。

それは色こそ違えどデザインはあの羨みの灯と全く同じで、やよいは思わず後ずさり構えた。


「大丈夫でび。もうやよいは命を削って変身なんてしなくていいでび」


デビビンはそう言って弥生に変身を促す。


「・・・わかった」


やよいはランタンを手に取ると、額にそれを当て、静かに変身の呪文を口にした。


「・・・わたしの願いは夢の果て、希望の迷路へともに二人で・・・!」


その言葉に反応するようにランタンの真ん中にあるハート型の黒曜石が強い光を放った。

ランタンから延びる鎖がやよいの体に巻き付き締め付ける。

鎖はやわらかな布に姿を変えやよいの体を着飾り始める。

ランタンが最後に鎖を使って腰にぶら下がると、変身が完了したのか紫色の光を強くはなった。


「魔法少女デスサイズ・・・悲しみの連鎖はここで断ち切る・・・!」



「魔法少女デスサイズ・・・!?」


ソルトエースは驚い後ろを振り返った。


「いいから動きなさい。計画は続行よ」


デスサイズがぴしゃりと冷たく言い放つとソルトエースは慌ててリボンの足場の大量配置を再開した。


「・・・全く」


デスサイズはため息をつきながら高く高く鉄の地面を蹴った。


「さっさと終わらせるわよ!」

~エルエルの魔法少女解説~


こんにちはエル!ぼくは魔法少女の相棒をしているエルエルだエル!

今日は魔法少女デスサイズのパートナーのデビビンについて解説するエル!

・・・わぁっ、本人が飛び出してきたエル!!

『デビビンのことを呼んだでび?』

今日はあなたの紹介をするつもりだったエル!

『・・・デビビンはデビビンでび。生まれたばかりだけれど少なくともこの白饅頭よりは優秀だと思うでび。こんな事態にしてしまうやばい妖精よりは・・・でび』

デビビンは難しい言葉をたくさん知っててすごいエル!

『・・・もういいでび。デビビンはこの美しい黒曜石色の一つ目と美しい四つの羽がチャーミングな妖精でび!みんなはこれよりもデビビンとデスサイズのファンになるべきでび♪』

えっ!エルエルとショコラミントのファンを取らないでほしいエル~!!!!

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