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赤に向かう時計の針



「ここは・・・」


やよいが目を覚ますと、見覚えのない天井が視界に入った。室内には時計はないが、窓の外は真っ暗だ。


「委員長」


やよいが声のする方に視線を向けると、エルエルを連れた葉月が二人分の紅茶をお盆に乗せて持ってきた。


「体調はどう?ずいぶんうなされてたみたいだけど」


葉月の心配する様子が見られない声色の言葉にやよいはあきれてため息をついた。


「どうもこうもないわ。私はもう帰るから・・・・ああれ?羨みの灯は?」

「あの魔法アイテムは禁忌のアイテムだからエルエルが責任もって女王様の宝物庫に転送したエル!!えへん!」



エルエルの誇らしげな様子にやよいの動きが止まる。


「・・・え・・・じゃあもう変身できないってこと・・・」


やよいの顔がみるみる青ざめていく。


「でも、委員長死にかけてたからもう変身はしない方がいいよ。アレ、生命力を代償にして変身する者みたいだし」

「・・・私の命なんて無価値なんだからいいの。お姉ちゃんがいない今、私は魔法少女という存在をこの腐った世界から消し去れるなら何でもする。だれも傷つかない世界を作るためだったら・・・!」


やよいの声色がいたってまじめなことに気が付いた葉月は、無言で扉の鍵を閉めた。


「さっき魔法研究をしてる知り合いに報告したからしばらくは学校を休んでも何も言われないはずだし、しばらく委員長はこの部屋から出ないでね」

「なぜ?監視者は私にはいないのに?自爆装置もないのに?」

「監視者・・・?」

「あなた隣に浮いてる不快な生き物のことよ。魔法少女なのにそんなことも知らないの?ちょっと調べたらわかることでしょう?」


やよいの呆れた声に驚いてエルエルの方を見る葉月。

エルエルはそれすら気にすることなく、パタパタと四つの羽を動かしている。


「・・・それならあなたたちの敵であるガーゴイルのことは知っているの?」

「えと、信ぴょう性には欠ける情報源だけど・・・」

「あぁ、知ってはいるのね。まあ一応本当だと思うわ。変身アイテムも没収されたし、仕方がないから協力してあげる。その代わり、私の代わりに魔法少女という存在の撲滅をしてほしい」


やよいは疲れたように視線を下に向けた。


「委員長、それはできないよ。だって私は魔法少女を蘇生するために魔法少女をしてるんだから」

「は?」

「余計な事されても困るからこれ以上は言わないけど、まだ魔法少女でいなきゃならない。」


葉月はやよいの言葉を待たずに、部屋から出て行った。

ガチャリと鍵が閉まる音が静かな室内に響き渡る。

高価そうなテーブルの上にはすっかり冷めた紅茶の入ったカップが二つ、おいてある。


「・・・まずい紅茶。安物じゃない」


紅茶を一口、口にすると、やよいは静かに窓の外を見た。



ベッドに横たわる可愛らしい少女に光の粒子が降り注ぐ。

その光が体を包み込み、また消える。


「まだ足りない・・・・いったいどのくらいの魔力残滓が必要なの?」

「わからないエル。でも確実に心臓の色はもとに戻っているはずだエル!」


エルエルはそう言いながら、なにかの魔法を展開している。


「・・・見えるの?」

「簡単な透視魔法エル!魔法少女として死んだとき、高火力の魔力を凝縮させた爆弾をもろに食らったからなのか、心臓が灰色になっていたけど、今はきれいなピンク色になっているんだエル!もう少しだと思うエル!」


エルエルの言葉に想像ができないといった様子で葉月は目線をそらした。

最後の一瓶が空になると、瓶が空気に溶けて消えていく。


「もう少し・・・かぁ」



窓の外には真っ白な月が光を放っている。

その向こうに白い羽をはやした金髪の少女が心配そうな笑顔を向けてきているような気がした。


日が昇り、葉月が食事を持っていくと、やよいは眠れなかったのかうつろな目でベッドに座り込んでいた。


「よく眠れ・・・てはいないみたいだね」

「・・・」

「ま、ご飯は食べてよね。私はこれからまた討伐に行くから」


葉月は再度、扉の鍵を閉め、拠点を後にした。




それから葉月・・・ショコラミントの日常は元に戻った。


ガーゴイルをかたっぱしから討伐し、魔力残滓を集め続ける毎日。

ショコラミントはただ淡々と集めた魔力残滓を少女の遺体に注ぎ続ける。


ときにはエルエルに透視してもらい、あとどのくらいなのか確認もした。





「あと少しエルね~葉月の願いも来月にはかなうかもエル!」


エルエルの言葉に、思わず葉月の口角が上がる。


「あと少し・・・かぁ」


葉月のつぶやきは冷たく静まり返った空気に溶けて消えていく。




「待っててください、赤い魔法少女・・・いえ、お姉さん」


葉月は瞳を閉じる美しい少女の肌に軽く触れると、マジカルジュエルから流れ出る魔力をその体にまとわせた。


肌の通夜は数年前から変わらず美しいままだ。


彼女のマジカルジュエルであろう真っ赤な宝石にも忘れず魔力をそそいでいく。


魔力が充填されていくと徐々にくすんだ赤から美しい透き通った赤になっていく。


葉月は心の中で何度もありがとうと言う練習をしながら少女の方に向かって優し気でどこか悲し気な笑顔を向けている。



「また来るね、おねえさん」



ーあの日、命を救ってくれた、その感謝を伝えるまではー

~エルエルの魔法少女解説~


こんにちはエル!ぼくは魔法少女の相棒をしているエルエルだエル!

今日は自爆装置について解説するエル!


魔法少女たちには、政府のデザインした自爆装置が体、もしくは衣装の一部に埋め込まれているエル!

中には、変身アイテムのマジカルジュエルに埋め込まれている魔法少女もいるみたいエル1


自爆装置は、一応表向きは敵・・・主に言葉を交わし考える脳みそを持っている人型の連中に人質に取られてしまったり洗脳状態になってしまった時に外部からそれを開放するためのものなんだエル!


表向きの意味エル?特に意味はないエルよ?エルエルわかんないエル!

タダ生まれたときからインプットされてるものだからよくわからないことには答えられないようになっているエル!女王様との生まれながらの契約なんだエル!


まあ、ショコラミントはそんなへまする子じゃないから自爆装置は必要ない気もするエルけどねぇ。

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