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夢窓の輝き

「おかあさんは今日も泣いてるの?」

「私が歌えば笑顔になってくれるかな?」


テーブルには三人分の食事がならび、暖かな湯気が食卓を彩った。


「おとうさんは今日も帰ってこないんだって。だから思い切ってごちそうを作ったの。冷めないうちに食べよう!」


震える手に力を入れ、無理に元気な声を絞り出している女性を、双子の姉妹は心配そうに見上げた。


父親は医者の仕事が忙しく、めったに家に帰ってこない。普段は病院で寝泊まりしているのだという。


「お母さんおいしいよ!」

「お母さんのごはんだいすき!」


姉妹の言葉に母親の頬が緩む。今にも泣きだしそうな様子のまま、静かに食事の時間が過ぎていった。


父親が帰ってくるのは月に数回だけ、寝るためだけの帰宅は病院の仮眠室の何が変わるのだろうか?

父親は厳格な性格なのか、よく母親に冷たい言葉をかけていた。


「たまにしか帰って来れないんだから、もっとちゃんとしたメシを作るのが普通の嫁じゃないのか?」

「お前は働くのに向いてないのに、家事もまともにできないなら結婚した意味ないだろう?」

「女しか産めないんだから、せめて二人の教育をしっかりしていい婿を取れるようにしろよ」


強い叱責ではなく、淡々と冷たい声色で母親を淡々と攻め立てる。その様子が姉妹にとってはとてつもない恐怖に感じた。


母親はひたすらごめんなさいとだけつぶやきながら下を向いていた。



「お母さんが不出来なせいでごめんね。二人は絶対私が幸せにするから・・・みつき、やよい、あなたたちは絶対笑顔にしてもらえる人と添い遂げるのよ」


泣き疲れて眠ってしまった母親の腕の中で、双子はこっそりと指切りをした。


「お母さんを幸せにするのは私たちだね」

「また笑顔が見たいね」

「やくそく」

「うん、やくそく」








両親が離婚したのは、それから一か月後のことだった。


「お姉ちゃん、お母さんをお願いね」

「やよいも頑張ってね」



父親の手に引かれ少し速足で歩くスピードを合わせて、やよいは歩き始める。

振り向くことすら許されない雰囲気に身震いをして、足の動きを速める。


「お前は姉よりも優秀なんだから、勉学に励むんだ。内申も上げに上げて、いい婿を取れ。わかったな?」


やよいは幼さから父親の言っていることの意味をあまり理解はできていなかったが、口答えしてはいけないと、その幼い脳で理解し口を噤んだ。



母親の元に残った姉、みつきとは手紙のやり取りを通じて近況を報告し合っていた。

どんなつらいことも、その手紙のやり取りが二人の心をつないでいる限り平気だった。


父親は仕事が忙しく、めったに帰ってこない。週に数回、家政婦がやってくるため食うには困らないやよいは安心して勉強に身を投じることができていた。


ある日を境にみつきからの手紙の頻度が減った。


しばらく忙しくなる。割のいいバイトを始めたと手紙には書いてあった。

やよいはその手紙の消印を頼りに休みの日を使って調査を始めた。

父親にばれないように勉強と並行して行うのは骨が折れたが、は保谷と姉が住んでいる町が分かれば後は簡単だった。


その町で活躍している魔法少女の噂を耳にし、活動頻度から高確率で出会える日を計算し、やよいは魔法少女と接触を図った。


その魔法少女はやよいの姿を見て驚いたように目を見開いた。その様子から魔法少女の正体が誰か、やよいにはわかってしまった。


疑惑が確信に変わった瞬間だった。



やよいは狂ったように勉強に打ち込んだ。

魔法少女保護法や、魔法少女についての歴史。過去の魔法少女がどうなったのかなど。

その中で見つけてしまったのは、とある動画投稿サイトだった。

その動画を売買しているそのサイトは、魔法省のロゴにそっくりなマークがついていた。


やよいは恐る恐るそのサイトに課金してみた。

するとそのサイトが変化し、およそ人前には出せないほどにおぞましい、様々な魔法少女の動画作品が陳列していた。


中にはテレビメディアで活躍していたのに、いつの間にか見なくなった魔法少女や、殉職したと報道されていた魔法少女、不正により捕まったとされていた魔法少女など、今前線で活躍していない魔法少女たちが多く並んでいる。


そのグロテスクさに吐き気を催したやよいは、姉が同じ目に合う前に止めなければと一念発起したが、その力がないことに憤慨し、拳で強く勉強机をたたいた。



みつきは、やよいの言葉に一切耳を傾けなかった。


「お母さんは私がいないとダメだから」

「私がはじめて認められた才能なんだ。どんなに腐っててもいい!あなたならわかるよね?私のアイデンティティを奪わないでほしい」


みつき・・・魔法少女エアリィの輝く瞳は揺らぐことなく、そのままやよいに背中を向けてガーゴイルを倒しに飛び出していった。



やよいは自分に魔法少女の適正がないことが心底悔しかった。


どうして自分は姉を守れないのか。姉は母親を守ることができてうれしそうだったが、それなら姉のことは誰が守るのか。

やよいはとにかく努力した。魔法少女になれるといわれた様々な特訓を実行した。

あやしいサイトのものも試した。

しかしやよいはそれでも選ばれることはなく、ショコラミントとソルトエースという二人の魔法少女に嫉妬する日々だった。


父親にいつも通り成績表をPDFで送り、近況報告を済ませると、疲れ果てた様子でベッドに身を投げた。





朝陽が容赦なくやよいに降り注ぐ。

まぶしさ目を細めながら勢いよく体をおこすと、金属特有のひんやりとした感触が手に触れる。


驚いて手の方を見れば、黒光りしているランタンがベッドの上に転がっていた。

中の炎はあやしく燃えているのに、何にも燃え移ることはなくゆらゆらと揺れている。


やよいはそれが魔法少女に関係するものだとすぐに気が付いた。


触れたら後戻りできない気がしていたが、その妖艶な雰囲気に思わず触れられずにはいられなかった。



とある町の豪奢な白い家のまどから、紫色の光が漏れ出て消えた。


一人の魔法少女が新たに誕生した瞬間だった。



「私が全部、終わらせる。犠牲は私だけでいい。」


その瞳にはゆるぎない暗く強い光が宿っていた

~エルエルの魔法少女解説~


こんにちはエル!ぼくは魔法少女の相棒をしているエルエルだエル!

今日は妖精の女王様について解説していくエル!

もし前にも解説していたらごめんなさいだエル!


女王様は膨大な感情エネルギーを羽に集め、様々なことに使うことができるエル!

美しい女性の姿をしていて、それが本当の姿なのか、みんなに見せるための仮の姿なのかはわからないけれど、優しくてあったかいお人だエル!


たまに、テレビにも出てるんだエルよ?


下っ端の僕じゃ対面はかなわないけれど、いつか、お話ししてみたいエル!

憧れエル~!!

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