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純粋な願いと届かぬ現実

「あぁ、いいなぁ、そうやって知らなかったといえば許されると思っている浅はかさ、実に人間って感じだ!」


まるで舞台上ので役者が話すようにそう告げた人型のガーゴイルの姿が夢の中に現れては消える。


「くそガーゴイルが・・・!」


窓の外は皮肉にも快晴で、美しい鳥の声が響き渡る。


葉月は質のいい布団の中で意味もなく寝返りをうち、端末からまほリンクを眺める。

毎月更新されるトピックスは相変わらず「魔法少女の殉職」だ。


ここ三年程で殉職する魔法少女が急激に増えている。

その中には魔法少女ショコラミントがかかわりを持った魔法少女も数人見受けられる。


「魔法少女ルージュナイト、山岳地帯に多数のガーゴイルを匿い繁殖をしていた疑いで謹慎処分。容疑が晴れ次第活動再開か・・・」


『驚きましたよね、すみません。俺、男なんですけど、この辺りで魔法少女になれる素質あるのが俺だけなんですよ・・・』


嫌な予感が頭をよぎった葉月は、素早く変身すると窓からある方角に向かって飛び出した。





「・・・嘘」


ショコラミントの目の前には瓦を一枚一枚はがしては投げ捨てる、羽の生えた一つ目のガーゴイルが笑い声に似た鳴き声を上げている・


村にいた住民はもう避難したのか、人間の気配が一切感じられない。


「掃除するか」


ショコラミントは奥歯をギリリとかみしめると白銀の糸で作り出した大きな槍を構えた。


ショコラミントは手当たり次第に視界に映るガーゴイルを殺して回るが、一向に数が減っているように見えず、違和感を感じていた。


「ガーゴイルは繁殖しないはずなんだけどな、・・・でもあの記事には繁殖していたって・・・」



その時、ショコラミントの耳に、聞き覚えのある呻き声が聞こえた気がした。


「・・・!?」


そのうめき声は、一つの民家から聞こえてくる。

どこか聞き覚えのある男の声に交じってぶちゅぶちゅと不気味な音が聞こえだす。


「ルージュナイトさん・・・?」


《み・・・な・・・くるな・・・》


古い民家の玄関扉は古いのか、手をかけるだけでギシギシと不吉な音を立てる。


「大丈夫ですか・・・・・・!?」


きしむ扉を力づくで開けると、中から色濃いガーゴイルの気配が漏れ出てくる。

廊下や部屋の壁はすっかり破壊され、民家の中に大きな空間が広がっている。

その中心にはショコラミントもよく知る顔があった。



「ルージュ・・・ナイト・・・さん?」


「魔法少女、ショコラミント・・・?」



かろうじて人の言葉を話すことができる、おそらく魔法少女ルージュナイト()()()それは、顔以外は不気味な虹色の肉塊になっており、ぶちゅぶちゅと不快な音を立てつづけている。


「これは・・・」


目の前の様子に吐き気を催しながらもショコラミントはその姿を観察する。


「プピィ!」


おかしな鳴き声がショコラミントの足元から聞こえてくる。

ショコラミントが足元を確認すると、目の開いていない肌色の異形が一匹足にまとわりついている。


「きもちわるい・・」


ショコラミントはその異形を踏み潰すと、改めてルージュナイトの方に視線を戻した。

その瞬間、ルージュナイトの体だったであろう肉塊の一部が分裂すると、不気味な産声とともに動き出す。


「ショコ・・・ミ・・・ト・・・に・・・」


「?」


「村を・・・もやし・・・ショ・・・ト・・・マ・・・ジュエ・・・棚に・・・・」


「・・・わかった」


ショコラミントはルージュナイトのかすれた声に力強くうなづくと、部屋の端に不自然に残っている桐箪笥から真っ赤な宝石をつかみ、魔力を込めて不自然に燃えている薪ストーブの中に投げ入れた。途端に炎に魔力がこもり、暴発の準備を始める。



「・・・ルージュナイトさん、ありがとうございました」


ショコラミントはそれだけ言うと、村から一目散ににげだした。


ショコラミントが村から一歩外に出た瞬間に大きな爆発音が山をゆらした。


みるみるうちに村の家々が炎に包まれる。魔力をまとっているせいなのか異様に火の回りが早い。

そして炎が意志を持っているかのようにガーゴイルを選んで襲い掛かっていく。

ガーゴイルの泣き声と炎の燃える音があたり一面を包み込んでいく。



ショコラミントは無言で小瓶をあるだけ取り出すと、地面にすべて並べ、村から流れ出す魔力残滓を回収していく。


「すごいエル!こんなに魔力残滓が手に入るなんて!やっぱりエルエルの目はたしかだったエル!ぐえっ」

「エルエル、黙って」


ショコラミントは周りを飛び回るエルエルを殴り飛ばして黙らせると、静かに空を見上げた。


快晴の空に気持ちのいい風が吹いているのに、ショコラミントの足元には雨が降っている。


ショコラミントがふらふらと山を後にすると、それを応用にエルエルも宙を飛んでついていった。






「カメラも破壊されていましたか」

「はい。おそらくルージュナイトのマジカルジュエルが暴発したものかと思われます。」

「彼の需要はかなりのものだったのですが・・・残念ですね。変身前に撮ったものだけでも収益はとれるでしょう。仕方がないです」


黒服の男たちは焼けこげた村の前で大きなスクリーン越しにだれかと会話している。


「まあ魔法少女は探せばどこにでもいますから。しかしまぁ、あの大臣が一番邪魔ですね」

「魔法少女保護法、でしたっけ?表向きだけやればいいものを、このままでは国の財源も魔法少女などという一般人の子供に食いつぶされてしまいます」

「むしろそれを理由にあの女を引きずり落せませんかね?出産モノは需要がありますし、ルージュナイトのリベンジ作品として・・・」


黒服の男たちは不気味な笑みを浮かべながら声を潜める。


思い出の香水(メモーリアパフューム)ならあと5つはありますし、問題ないでしょう」

「《古の伝説の魔法少女、後輩のために自ら身を捧げすべての母になる》・・・なんてタイトルはどうでしょう?」

「ははは、滑稽ですな!それで行きましょう!」

「汚職などいくらでも捏造できますからな!」


黒服の男たちの笑い声に森がざわつく。


「おっと、生き残りのガーゴイルに我々が食われてしまったら意味がありませんからね。そろそろ帰るとしましょう」


男たちが高級車に乗り込むと、山の土を弾き飛ばしながら、その場を去っていった。





「次のニュースです。ガーゴイルの温床と言われていた紅市郊外の山が爆破されました。魔法少女ルージュナイトが自らの誤認逮捕を証明するために自爆特攻したとされており、彼女の遺体はいまだ見つかっていません・・・」


テレビのニュース番組から淡々としたニュースキャスターの声が聞こえてくる。


上質な作りのベッドの上に力なく寝転がった葉月は、力なく息を吐く。


「・・・・」


魔法少女は全国にいる。

数については一般人は把握できないだろう。


ショコラミントは静かに目を閉じると、そのまま夢の世界に落ちていった。

~エルエルの魔法少女解説~


こんにちはエル!ぼくは魔法少女の相棒をしているエルエルだエル!

もうそろそろ解説するものがなくなってきたエルね・・・


今日はエルエルと相棒二人について解説していくことにするエル!


エルエルは二人の魔法少女の相棒を務めた経験を持つ希少な妖精なんだエル!

一人目は勇者の日の元になったストロベリースフレ、二人目は今の相棒のショコラミントだエル!

ストロベリースフレは圧倒的魔力量と正義のココロを瞳に宿したみんなのヒーローだったエル!

ショコラミントにもその信念はしっかり受け継がれているエル!その証にガーゴイルの討伐数はストロベリースフレに次いで歴代二位!

エルエルが優秀な相棒だって表彰される日も近いかもしれないエルね~!


おっと、葉月が呼んでるエル!みんな、またお話しようエル!

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