CURTAIN CALL
「ようやく、気が済んだことだろう。全員に戻るように指示……いや、命令を出してくれ」
「了解しました……場外活動中の総員に告ぐ。帰還命令がオメガ……」
ふぅっと息をつくと、オメガ1は、艦長席を発った。今回の事態。思いもよらずに発生した境界面の異常。それを見た全員が飛び出したくなる気持ちはオメガ1にもよくわかることだった。だがら、少しだけ好きにさせた。
だが、自由行動の時間は終わりだ。家に帰らせないといけない。
「全員に命令が行きわたりました。ただ、数チームは命令を拒否」
「直接回線で、待機中の全チームを呼び出せ。懲罰権限を与える。
……おそらく、アルファ1は、相応に鬱憤がたまっていることだろう。好きにやれと伝えろ」
「おお、怖。はい」
即座に、女王の玉座からアルファチームが出撃し、命令違反する戦闘姫たちに襲い掛かる。小規模な戦闘こそ起きたようだが、鎮圧には、そう時間はかからなかった。
「さて、貴女たちの命令違反に関してだが、司令部は、120時間の拘束、また、ゼクスマキナを含む全能力の凍結。並びに、リボーンを禁じる決定を行った。また、命あるまで自室に謹慎。以上だ」
「しかし、司令。これは、好機なのではないですか?この……」
「ベータ40 口を慎め。発言を許可していない」
数時間後、格納庫に集められた命令違反を行ったベータチームは、ドレスを強制解除させられ、手錠、足枷をかけられる。エンジンからのエネルギー強制排出が起こっているはずだが、気丈に反論する。中には、穴だらけになり、そこから、蒼い血を流して動くことのない戦闘姫の残骸も運び込まれている。
「好機なのです!この機を逃さずして……」
銃声。
乾いた音が響いた。ベータ40だったものは、頭蓋を叩き割られて、床へと崩れ落ちる。
「全く。アルファ11。反省を促すための処置なのだ」
「いえ、おそらく、この者はそのような行為を行うことはないと思われます。また、ほうぼうで騒がれると士気にも差し障ります。よって処理しました。
よって問題はないと思われます」
「固いね」
「真っ先に、飛び出して攻撃を行った貴女に言われたくはないです。懲罰を、と言われましたが、戦闘姫を処理しろとは言われていないですよ」
アルファ1は、それもその通りと肩をすくめた。
「……発言の許可をお願いします」
「発言を許可する、シグマ15」
そんな中で、一人の戦闘姫が手を上げて発言を求めた。それに、オメガ1が応じる。
「……今回の事態に、全チームの№1~12は、出撃を行いませんでした。それはなぜです?納得のいく説明を求めます。」
じっと、見つめるシグマ15の視線を、オメガ1は受け止めた。
「……」
「それは、私から説明いたしましょうか」
不意に場に聞こえてきた声は、場に驚きと困惑を生じさせた。オメガ1の肩になれなれしく手を置くそれに、アルファ1を除くすべての戦闘姫が銃を向ける。
「貴様、どこから……」
「いえ、楽しそうに遊んでいるなと思ったから、
しばらく様子見してた。なんだか楽しそうで、声をかけるのははばかられたからね」
「全員、銃を降ろせ。こいつには、現在の我々の火力では無力だ。で、今日は何の用だ?アマンダ?」
それに、なれなれしく、また、呆れたように声をかけるアルファ1を見た戦闘姫たちの間に衝撃が走った。
「もう、水臭い。私とあなたの間柄じゃない。膝枕までしてあげたのに。さて、そこの戦闘姫の疑問を解消してあげようと思ってね。
各部隊のコールナンバーには、今何が起きているのかをきちんと教えてあげていたの。
だから動かなかった」
その声に驚きの声が上がった。
「あなたたちのデルタ12周辺が、一通り、片付いたから。できれば上演会をしたいなって思って、今日は来たのだけど。
どう?」
苦々しい表情を浮かべるアルファ1をしり目に、楽しそうな表情を浮かべるアマンダ。オメガ1が許可する。
その映像は、ゼクスマキナを通じて、一瞬にして全員に共有された。
「いい加減好き勝手されるのも疲れてきたというところです」
アマンダが去った後、艦長室に呼ばれたアルファ1がこう切り出すと、一緒に呼ばれたブラボー1とシータ1は、苦笑いを浮かべた。その様子を見ながらオメガ1は、UNISSのコーヒーメーカーでコーヒーを淹れる。その香りが部屋に広がると、ほっとしたように落ち着いた空気が部屋に満ちた。
「まあ、そう言わないで。彼女ったら結構律儀なもので、今回の作戦が終了したからって、これから為になる目的を教えてくれたのよ。」
「それは、彼女の作戦の目的ですか?」
ええっと微笑むと、オメガ1はカップを傾ける。
「ええ、彼女の目的は、イハーブの30分を3年以上にすること。それ一つだったということ。極論してしまうと、彼女の当初の目的に私たちの排除は含まれていなくて、お互いの目的自体は、最初から同じだったということ」
その言葉を、一瞬3人の戦闘姫は信じられないと言った様子で見つめた後、静かに頷いた。
「つまり、女王の羽音がわたし達を呼ぶ日も近いということですか」
「……」
誰かの上げたその声に、オメガ1は答えず、カップを手に取り飲み干した。浮かべたのは、極上の笑みだった。
「ええ、そうよ。女王の羽音は未だ止まない。空の底から浮かび上がったそれは、大きな波となり、わたし達に届く。その時こそが、我らの宿願達成の導となる」
全員が同じように笑みを浮かべ、その言葉に聞きほれているようだった。満足げにオメガ1は立ち上がり、窓の外を見る。そこには、見えないはずのあの世界が見えているようだった。
「わたしには見える。羽音に満たされた世界が安寧の時を迎える姿が
さあ わたし達を はやく呼びなさい
臆病で 愚かで そしてとっても勇敢な 女王蜂 デルタ12」




