獣の生誕祭
扉が開いた。それは、人間の世を終わらせるために開いた終末の扉のように見えた。
大聖堂から湧き出でたるは、獣と、それに魅入られた聖女たちだった。そして、その聖女に魅入られた聖職者たち。それを歓喜をもって受け入れるもの。そして、嫌悪をもって拒絶するもので、大聖堂周辺は混乱に陥る。
惨い混乱。永劫に続き、やがて、この小帝国全域を覆うのではないかと思う。それは、わずかな後に、始まった……光の反撃に、一時停滞を余儀なくされた。
四方八方から飛来する光の矢が獣を駆逐していく。それに紛れて、悪魔のように、対人に特化した部隊が投入された。
群衆は、悲鳴すら上げることを許されず、昏倒。気絶。失神。あっという間に、骸なならざる人垣が、出来上がる。
それでも、獣の搬出は止まらない。大聖堂から、底なしに現れる。獣。獣。獣の群れ。
悲鳴 怒号 それでも、それは、あきらめることはしない。人垣を守るように、車両が陣を強固に敷く。そこに、軍師が、わずかに一味を加えると、その簡素極まりない陣は、難攻不落の様相を呈する
数的な有利があっても、攻めあぐねる獣は、その強大な攻撃の前に、1匹、1匹と倒れていく。焦りこそないものの、時間がかかりすぎることに、獣の中、そして聖女にも焦りが広がる。それは、細波のように、本来生じえない、困惑を獣たちにもたらす。
訪れる。獣にとって、本来訪れようのはずない均衡。
そして、それが、その均衡を破るように、戦場に到達する。
前触れもなく少女が降ってくる。石畳を砕き穿ち、着地の衝撃で、一体を、荒野に変えながら降り立つ。
その少女は、白いドレスを身に纏い、そこから、青い何とも知れないものが流れ出でている。ただ、その流れ出でているものは、まるで、奔流のように一部滴っている。その、奔流を纏う少女は、獣に対して、怒っているように見えた。
直後、爆音。その背後に、巨大な竜と女性。その二人とも、まるで忠誠を誓っているよう少女に膝を折る。その光景に、獣は驚く。
少女は、その光景に何の感慨も抱くことなく、ただ、何気なくだろうか、
自らの、空虚な隣を見る。
そこには、誰もいない。
少女の眼に、わずかに、悔やむような、そして、決意に満ちた表情が生れた。その想いのままに、獣に瞳を向ける。対して、獣が向けるのは敵意。それを、少女は感じとったのだろうか?右手を握り閉めにして左の肩への方へ張らせる。その行為を敵対行動と見たのか、獣は少女に向かい飛び掛かった。
少女は、その行為をただ瞼に焼き付けながら、その手を、まるで、引き戸をただ開け切るように振りはなった。
ベキッ ペキキキッ メキャッッッ!!
目に触れない衝撃が、一瞬で、獣を大地から引きはがし、上下に引きはがしたように、その身を引きちぎる。その余波そのまま後方に待っていた獣たちに襲い掛かり、それを蹂躙する。
獣たちの間に、恐怖にも似た動揺……が広がる。
「……我は、最も古く、そして、最も新しい事象なり。」
ゆっくりと、少女は口を開いた。決して大きくない声。ただ、その声が、まるで意思を持っているかのように、その場にいるすべてのものに染み渡っていく。
「三十事象管理者の第二位。我が管理事象の名は
†攻撃†
第一位事象管理者……の名を借り、誓する。
滅せよ絶望 贖せよ大罪 そして、……消えよ滅亡
今宵は 星辰帰す 宴なり」




