もっと早く会いたかった
フォルスターの中心部にある森林、首都へとやって来た玲、楓、勝峰。
「改めて……オレはここの王、デイブ・サンドライト「おいおい、待てよ兄弟。オレ“達”がこのフォルスターの王の間違いだぜ。俺はプッチ・ペリドットだ。コイツとは腐れ縁でよ、兄弟みたいなもんだ。まぁ、宜しくな」
デイブの挨拶に被せるように喋りだすプッチ。
そして、その自己紹介に
(兄弟じゃなかったのかよ)と、同じことを思う玲と楓。
「……」
「そっちのあんちゃんは何か言いたそうだな」勝峰が無表情でデイブとプッチを観察しいることに気づくプッチ。
「ここに来る前、いくつも罠が仕掛けられていたにも関わらず、簡単に我々をここへと案内したこと、500年も前に勇者と共にその名を世界に轟かせたドワーフが、何故こんな森の奥に住んでいるのか、貴方方の目的が分かりません」
キッと二人を睨む勝峰に、玲は注意しようとするが……
「勘がいいじゃねぇか。けど考えすぎだぜ」
「あの罠は食料用の野生動物を捕まえる為のモンだ。勇者との冒険も昔の話だ。今じゃただの老いぼれに過ぎねぇんだからよ」
そう言ってケラケラと笑いながら酒を煽るデイブ。
「出会ってばっかりで申し訳ねぇんだが、一つ頼まれちゃくれねぇか?」
プッチが神妙な面持ちで話し出す。
「オレ達はかつての大地震で妻や仲間や友を失ったんだが、最近やっと洞窟へと姿を変えちまった地下帝国の安全が確認されてな、洞窟に埋まっているであろう遺品を探しちゃくれねぇか?こんなこと、初対面のアンタ等にお願いするのは間違っているとは思うんだがよ、フォルスターの人間はあの大地震がトラウマで洞窟に近づけやしねぇんだよ」
「オレに任せろ!!亡くなった人は帰ってこなくとも、思い出は消えないんだからな。大切な物、オレが持ってきてやるよ」
眩しいほどの満面の笑顔に、デイブもプッチも涙ぐむ。
「案内は俺達の娘のリアがしてくれる。頼んだぜ嬢ちゃん」
「初めまして、リアです宜しくお願いします」
デイブの紹介と共に現れたのはゆるふわな女の子。頭には丸っこいケモ耳、茶髪のゆるふわパーマで、丸くて大きな黒目、ふっくらとした頬、小ぶりな口に、身長の半分はあるふわふわの大きな尻尾。ドワーフとリスの獣人のハーフである。
「公主様、本気ですか?何か裏がありそうです。もう少し様子を伺ってからでもよろしいのでは?」
ヒソヒソと玲にこっそりと囁く勝峰。彼はまだこのフォルスターの様子に違和感があるようで、玲を止めようとしていた。
「オレは別に嘘だって構わないんだ。ただ困ってるって言うなら助けないなんて選択肢はない。自国の民ではなくとも、他国の王族、貴族でも、助けを必要としている人がいたら、犯罪者でも孤児でも貧民であっても、見返りを求めること無く助ける!!」
玲は、右手を拳にして自身の胸にドンと叩きつける。
「分かりました…公主様がそう仰るならば従いますが、危険と判断した場合は直ちにこの場を離れると約束してください」
勝峰に、真剣な顔でそう言われ玲は、少し間を置いてから頷いた。
「では、早速洞窟へご案内しますね、離れずにしっかり着いてきて下さいね」
リアはそう言って森の奥へと歩き出す。
「で、お前は何が怪しいと思ってんだ?」
楓はヒソヒソと隣を歩く勝峰に問いかける。
「まず、この森の入り口付近で見かけた罠ですが、あれは動物用の罠ではありませんでした。まるで攻めてくる何かを迎え撃つかのような罠でしたから。そして、首都へと案内されてからやけに町が静かでした。若い人たちはおらず、賑わっている様子がなく、戦争を始めると言われた方が、納得するほどでした」
「そして、最後に彼女…リアさん。プッチ殿の言葉が本当であるならば、彼女もトラウマで洞窟には近づけないはずです。それなのに案内をしてくれるとゆうのは、矛盾しています。戦闘ができる方ではないようなので危険は少ないかもしれませんが、逃げ場のない洞窟では何があるか分かりませんから、警戒しておいた方が良さそうです」
勝峰は森に入ってから彼等から一度も目を離さず、背後にも意識を向け警戒態勢を崩さなかった。
目の前を歩く玲は、リアに好きな食べ物は?とか、兄弟姉妹いる?だとか、世間話をしていて、警戒している様子は無い。
「昔の私であれば考えられませんが、あの方は人を疑わず純粋なままで良いと思っています」
その言葉に楓はギョッとする。
「その分、我々が疑い、警戒し、公主様をお守りすれば良いのですから。前までは必要以上の仕事、給料外のことなど無駄だと思っていた筈なのですが、あの方には不思議とそんな考えは抱けないのです。それは、元盗賊のお前も同じような考えなのでは?」
勝峰はそう言ってフッと笑う。
「ケッ……カッコつけやがって、テメェばっかに美味しいとこ持ってかられたんじゃ、面白くねぇからな」
「着きました、ここが元・地下帝国の入り口です」
目の前には小さな穴。覗いてみると大きな空洞が奥まで続いている。暗くて見えないが人が歩けるくらいの道はありそうだ。
玲が早速その中へと入ってしまったので二人も慌ててそれにつづく。
「……フォルスターは今晩には焼け野原になってしまいます」
リアが入ってくる様子が無いと思っていたら、そう突然ポツリと呟いた。
「お…おい……そいつはどゆう……」
楓の問いかけも虚しく、洞窟の出入り口は岩によってジワジワと塞がっていく。
「こんなこと間違ってるって分かってる。でも貴方方まで巻き込むわけには行かないんです。明日には救助隊が来てくれますから、どうか私達のことを許さないで……」
リアの声がだんだんと遠ざかっていく。その小さな声は震えていて、泣いているようだった。
「もっと早く会いたかった……さよなら、公主様…」
リアのその言葉を最後に、洞窟の出入り口は完全に封鎖されてしまった………




