ドワーフ兄弟
「玲……確かに人員は欲しいですが、こんな大勢どうするつもりですか……」
ロンが呆れてしまうのも無理はない、何故ならあの後……。勝峰と楓が退職すると言い出すと、支部にいた構成員達も退職を宣言して玲に雇ってくれるよう迫ってきたことで、全員採用してしまったからだ。
カルディア本部には今頃、全員分の退職届が届いているのだろう……。
「安心してくれロン!劉家の汚職を暴き、捕まえたら全財産を差し押さえして、闇金も横領した金も回収して給料払うからよ!!」
ニカッとイイ笑顔で言う玲に、ロンはため息しか出なかった。
「まぁ、これから宜しく頼むぜ、ロンさんよー」
楓は馴れ馴れしい言動はあるものの、すぐに馴染んでいた。一方、勝峰は真面目でコチラに来てからは、自分で仕事を見つけてはテキパキと作業をしてくれている。
その他の元カルディア構成員達は、町の警備や町人の手伝い、周辺の調査や情報収集を進んでやってくれているので有り難い。
これが給料未払いだった構成員達の力なのだろうかと、玲は一人しみじみと思う。
「では、次の段階に入りましょうか」
「彼らのことをああだ、こうだと言っていても時間の無駄ですので」
まだ付き合いの浅いロンと玲だが、なんとなくロンの性格が見えてきて、虚無顔になる玲。
「今は、彼らのお陰で証拠、人員を揃えることができました。しかし、民を動かすには権力と発言力と信頼が必要です」
「これらは王族には無くてはならないモノなのですが、今のバイフウ王家には無いので、一から築き上げなければなりません。今のバイフウ王家に民は不平不満を募らせています。ソレを解消し、味方に付け、クーデターを起こすのが目標です」
ロンの説明に頭が痛くなる。まだ爺ちゃんである、先代の虎・史の時代では尽力してくれた重臣や宰相、民との硬い絆があったと言われていたものの、比丘尼が嫁いでからは各国との外交にも影響が出始め、戦争が始まったのもその時期からだったと聞いている。
「竜獣大戦に原因と言われてる事件が、獣人の竜人殺人事件と竜人の獣人殺人事件らしいが、これもなんか裏があんだろうなー。この件はうちのギルドで調べてもらえるよう連絡しとく」
リベーリュがそう言って暗い顔をすると、何処かへと行ってしまう。
「竜獣大戦の原因もそうですが、これ以上戦争で食料が枯渇し、大地が荒れ果ててしまうと、バイフウ全土が食料難になります。今でも食料の価格高等に上税ですから、民間人の暮らしはかなり厳しいものとなっています。この問題を一刻も早く解決し、民の信頼を得なければなりません」
そうは行っても、畑は度重なる戦争で荒れて使い物にならず、耕そうにも農民は戦争の影響で病気になる者が多く、畑仕事ができる人が少ないのが現状。
新しい食料の入手方法を考えなければ、食料難で国が滅ぶ可能性もある。輸入とゆう選択肢もあるが、戦争中で危険なうえ、取引できる国も限られてしまう。
「輸入は危険も多くて、物価もあるから難しい……だったら、物々交換とか対価交換とかどうだ?お金じゃなくて、バイフウが誇るモノと交換することで、出費を押さえる……けど戦争中で運搬が難しいんだよなー」
ハァーっとため息を付いて、うーんうーんと唸りながら頭の中でシュミレーションする玲。
「いきなり大きな国と取引するのではなく、危険が及ばないギリギリの範囲内の近隣小国との外交から始めてはどうだ?」
ファントムが提案してくれる。
「それが良さそうですね、まずはバイフウの更に西にある小国、”フォルスター”なんていかがでしょう?」
ファントムの提案で思いついたように頷き、具体的な案を出してくれるロン。
「フォルスターなら何回か行ったことがあっからな、俺が案内するぜ」
「いいえ、あの森は経験者でないと危険もあるでしょうから、公主様をお守りできるこの私がお供致します」
先に楓が立候補したものの、遮るように手を上げる勝峰に、また喧嘩が始まりそうになる。
「ストーップ!!ストップ!!二人共、とりあえずオレとフォルスターに行ってくれるか?」
「「おう/はい」」
二人はほぼ同時に返事をした。
ロンに装備を整えてもらった玲は、赤い色の布地に銀の虎が刺繍された袖が狭い上着にズボンの胡服を着ていた。
そしてバイフウの更に西に進んだ森を、楓と勝峰と共に来ている。
「リベーリュの情報によると、フォルスターは昔地下帝国“クリスタルネス”ってゆう国だったらしいが、300年程前の大地震で崩壊してから国を追われてた種族が集まる今の他種族国家になったらしい」
玲はリベーリュから貰った地図を見ながらズンズンと迷い無く進んで行く。
「公主様、フォルスターを治めているのはドワーフ族ですから、気をつけてくださいね。ドワーフ族は子供のような見た目の者もいますが、100年は生きていたりしますから。それに、職人気質で気難しいことで有名です」
勝峰の説明にウゲーっと嫌な顔をする楓。
すると……
「おっと、そこの若僧達。此処から先への立ち入りは辞めといたほうが身のためだぜ」
何処からかオッサンの声がする。
「これ以上進むってんなら、覚悟しな」
声の主は二人。だが声が反響していて何処から聞こえるのか分からず、見渡しても声の主はいない。静かな森には人の気配はない。
「どっから狙ってやがる……さっさと姿を表しやがれ!!」
イライラとしながら森に向かって怒鳴る楓。どうやら彼は短気のようである。
ガサガサ……
シュタ…
木の上から降って来た、二つの小さな影。
そこに立っていたのは少年のような容姿をしたドワーフが二人。
一人はこげ茶の短髪に少し焼けた肌にクリクリの丸い茶色の瞳。服は鍛冶師が着るような作業着で、手にはハンマーを持っている。
もう1人は金髪のツンツンヘアの茶色のキリッとした瞳にゆるっと上がった口角。子供のような二人だが、どうやら先程の声の主はこの二人のようである。
「おいおい、兄弟。ソイツは相棒の武器じゃなくて酒入りの瓢箪じゃねぇか」
茶髪のちっこい方が、金髪のちっこい方の手元を指差しながらケラケラ笑う。
「待てよ兄弟。コイツもオレにとっちゃ夜の楽しみで、相棒だぜー」
金髪の方がご機嫌な笑顔で瓢箪を持ち上げる。
「うお……酒クセェ…」
二人の掛け合い見ていた楓が顔を歪ませる。確かに二人からは酒の臭いがする。
「親父ぃー、急に走り出してどうしたん…だ……よぉ……」
そこに森の奥から走ってきた、鼻の長い茶髪のドワーフがやって来る。玲達を見た瞬間黙り込み、目を見開いたかと思うとスーっと息を大きく吸い込んで………
「ぎぃやああああああああああああああああ!!!!!!!!」
まるでお化けでも見たかのような大きな悲鳴を上げて…………気絶した。
「ったく、俺の倅だってぇのに情けねぇぜ」
金髪のちっこい方がそう言うと、気絶した鼻の長い男を担ぎ上げる。
「アンタ等、何処のモンかは知らねぇが、話くらいは聞いてやるよ。付いてきな」
茶髪のちっこい方がそう言って、森の奥に向かって歩き出す。
(否、最初に進むなだの、身のためだぜとか、覚悟しろって言ったのアンタ等だろ)
玲と楓は同じことを思っていたが、勝峰は二人のドワーフの背中を見つめながら真顔で何かを考えていた……。
ファンタジーと言えば、獣人にドワーフにエルフですよね。動物が好きな私は異世界に行って獣人をもふもふしたいな、なんて思っているのですが、異世界が好きな読者様は異世界に行けたなら何をし、どの種族と会ってみたいですか?




