就職?
ロンに案内され、リベーリュに担ぎ込まれながらやって来た場所は南西部にある広大な平野“クアイフオ”にある洋風に作りの屋敷。白い壁、青い屋根、太陽に反射してキラキラ輝く窓。整えられたお庭には季節ごとに植え替えているであろう花々。
その屋敷へと入り、広々とした食堂ヘ行き席に座る。大きな窓のある食堂ではクアイフオの街を見渡せるようだ。
平野は平野でもまだ戦争とは無縁のような平和な町で、首都とは違って活気に満ちた小さな田舎町である。
「我々がまずすべきことは、カルディアを味方につけることです。カルディアは国の警備に支部を配置してはいますが、戦争には不介入とゆう規定があります。ですが、我々がしたいのは戦争ではありませんので、カルディアは心強い味方になることでしょう」
【カルディア】
いわば、警察的な役割をしている組織の名前であり、世界各国にカルディア支部が配置されている。主に国の警備をしているが、役所のような存在でもあるカルディア支部では、国からの要請があれば様々な雑務も請負っている。
なお、ここ最近のバイフウ支部は、国からの雑務全てを断っており、最悪なことに仕事もボイコットしている。これは、戦争に不介入の規定があるカルディア本部からの支持らしい。
「カルディアは民間人の安全を第一としているからな。今のバイフウ王家からの言葉に耳を傾けないだろうが、王家の汚職、劉家の横領、誘拐、書類偽造の疑いがある今、その証拠さえあれば味方となり、利もろともお縄にしてくれんだろう」
予想外の話の内容に目を丸くするが、ロンもファウストも驚く素振りは無く前々から準備をしていたらしいことが分かる。
「もっと面白いのは、劉・比丘尼は子供を産んでいないとゆうことだ」
ファウストの言葉に口をあんぐりと開けて呆ける玲。
「寝耳に水かもしれませんが、利は関・美玉と虎・史との子であるとゆう“魔法学血縁鑑定書”もありますし、美玉から子供を誘拐したと言う、当時比丘尼の元で下働きをしていた下女からの証言もあります。他にも、いくつかの証拠はありますよ」
汚職はしているとは思っていたものの、予想を遥かに超える罪状の数に玲はボケーッとしたまま動かなくなる。
「今回の騒ぎに乗じて書斎から盗んだ証拠の書類なんかも手に入れたからな」
ファウストは懐から茶封筒を取り出して、ニヤリと悪い笑みを浮かべる。
この三人悪い笑みを浮かべる人しかいない。玲は、三人を眺めながらそんな風に思った。
それからは早かった。玲は三人と協力して情報を整理し、劉家や父親を捕まえてもらうべく、ありとあらゆる罪の証拠を手に入れた。
玲は、バイフウのカルディア支部にリベーリュと共にやって来た。ファウストは闇ギルド所属である為同行できず、ロンにも断られてしまったので、リベーリュと来ているのである。
カルディアの本部はフレグレンスではあるが、建物は街に馴染ませる為、その国の建築技術が使われる。なのでバイフウ支部では、中華な大きい屋敷のような建物となっている。
木造の柱と梁を基本とし、左右対称の配置や反り返った屋根が大きな特徴で、釘をほとんど使わず、木を組み合わせる技術である斗栱で重い屋根を支えており、中心には通路や正門を置き、左右に同じような建物を並べて配置しれているバイフウ支部。
早速中へと入ると、中は王宮と作りが似ていて、役所の役割もある支部では受付、待機する為のベンチなどが設置されていた。
その受付の人に声をかけるもバイフウ支部長、“林・勝峰”は玲達の面会を拒否。それでも粘る玲を見て一人の男が近づいてくる。バイフウ支部機動隊隊長、“張・楓”。
茶髪の長い髪を後頭部に高く結い上げ、紺色の布に赤と白の袖が細い上衣にズボン、黒と銀の革の帯を組み合わせた胡服と呼ばれるバイフウの男性戦闘服の男。ニヤリと悪巧みでもしてそうなイヤな笑みで近づいてくる。
「アイツに取り入ったって、聞いちゃくれねぇよ。金積まなきゃ動きっこねぇんだよ、アイツは」
「変わりにこの張・楓様が聞いてやるぜ」
楓は二人の前で腕を組み、仁王立ちすると、自信満々にそんなことを言う。
「カルディアなのに?金を積まなきゃ話も聞いてくれないのか?どうなってんだよカルディア支部……」
玲は眉を潜めてイヤそうな顔をして吐き捨てるように言う。
「今のバイフウ支部のカルディア構成員は聞いた話じゃ給料が未払らしいからなー。本部に掛け合っても門前払い、国は戦争中で規定により不介入するしかない……つまり、板挟み状態なんだよ」
リベーリュが丁寧に説明してくれる。
確かに、見渡すとカルディア構成員は生気の無い者達がグッタリと机や椅子にもたれ掛かり動かない。
「……給料、俺が払ってやろうか?」
その言葉にリベーリュも楓も目を丸くして驚く。
「まぁ、条件として劉家の横領とか闇金とか色々の証拠掴んで、捕まえてくれたらだけど……回収した金で未払い分の給料払えると思うからよ」
そう言った瞬間、バーン!!と勢いよく奥の部屋の扉が開け放たれ、黒茶色の長髪の美男子がすっ飛んでくる。楓と同じ服ではあるものの、左胸にはカルディアのマークが入った銀のピンバッチ。これが支部長である証だとすると、彼が林・勝峰なのだろう。
「給料を払って頂けるのであれば!!このバイフウ支部は貴方様の為に馬車馬のように働かせていただきます!!」
美しい青年の声音なのだが、目をキラキラと輝かせ、眩しいくらいの笑顔でドMのようなことを言う彼に引いてしまう玲。
「おい!!この俺が話してたんだ!!テメェはすっこんでろ勝峰!!」
喧嘩腰に勝峰を睨みつけ、怒鳴り散らす楓。
「おや、いたんですか?楓。このお話は元々私の元へ来たお話ですから、貴方には関係無いでしょう」
フッと笑った勝峰は馬鹿にしてような声音で言う。
「んだとー!?」
更に怒りが増したのか、今にも掴みかかりそうな楓。そんな楓を見下して馬鹿にしたように笑う勝峰。
「そもそも、私より出世の遅い貴方には選択権はありませんよ」
勝峰にそう言われ、プルプルと震えだす楓が、キッと玲を睨みだした。八つ当たりか!?と思ったのもつかの間……
「カルディアなんか退職してやらァ!!」
「アンタ!!俺を雇いやがれ!!証拠でも何でも俺がブン捕ってきてやらァ!!」
大声でそう宣言しだした。
「それはイイ!!私も退職しますので、どうかそちらで採用してください!!」
カルディアに協力要請をしに来ただけのはずが、なぜだか人員が自ら飛び込んできたことに同様する玲。面白いものを見たと大笑いするリベーリュ。
まだまだ先は長そうである。




