お前“だから”イイ
皆様、夏ももう時期終わりを告げ秋がやって参りますね、私は体調を崩してしまいましたが、なんとか執筆ができております。
皆様も体調にはお気をつけて、無理せず頑張って参りましょう。
「玲、宴会についてですが、“紅鳳院”に舞のお披露目を依頼致しました。しかし、肝心の料理長が不在とゆうのは………」
ロンは資料を片手に話す。
「料理長がいないなら、探しに行けばいいじゃねぇかー。さぁー、今から行くぞー」
玲はそう言ってロンの腕を強く掴んで、何処かに向かって引っ張る。
「どちらに行かれるおつもりです?」
ロンが問いかけるも、玲は返事をせずに急かすように走り出した。
玲が向かった先は、貧しい暮らしを強いられているスラム街だ。
身寄りのない子供達が主に身を寄せ合い、助け合って暮らしている。廃村した場所でゴミを漁り、住み着いている子供達は事情があって親がいない子がほとんどだ。
戦争で親をなくした子供。生活が苦しくなって親に捨てられた子供。親から虐待で逃げてきた子供。色街で生まれた子供。犯罪者の子供で迫害を受けている子などだ。
親がいるものの、ハイエナの獣人とゆうだけで差別されることもあるから、世知辛い世の中である。
つまり、このスラム街は飢えた肉食獣人の子供達が多く住んでいるのだ。崩れた建物であろうと、子供達にとってみれば屋根があるだけで有難く、ゴミ山で散乱した道も、生きるのに必死でやり暇もない。毎日物乞いをしたり、ゴミを漁って売れそうなものを探して、食べれるものはみんなで分け合って生きている。
ロンは生まれながらに皇族であり、嫌いとはいえ母に甘やかせれて育った。書物で見て学び、知識として知っていたものの、実際に見るのとでは衝撃が違った。
汚い身なり。あっちこっちから放たれる異臭。子供の中にはウジが湧いている子もいる。
思わず顔を顰めてしまうが、慣れていないはずの玲は何食わぬ顔でド真ん中を歩いてゆくものだから驚かせれる。
道を少し歩くと、子供たちにご飯を配っている男の姿が見えた。質素な漢服を着ているものの、貧民のものとは思えない身キレイな男は、茶髪のサイドテールにキリッとした細眉、ギラギラした瞳は焦げ茶色、明るい笑顔で子供たち一人一人に挨拶している。
「慌てずにゆっくり食うんだぞ」
「ちゃんと皆の分はあるからな、取り合うなよ」
高くもなく、低くもない心地の良い声音で彼が話しかけると、瞳に影が指していた子供達の瞳がキラキラと輝き出した。
男の名は、孫・雲。先々代の獣王の重臣である御三家が一角、孫家の当主だ。
「まさか、武力を極めし孫家の当主が、自ら手料理をスラム街で振る舞われるとは………。玲?」
隣にいたはずの玲が居なくなっていることに気づいたロンは、少し焦りながらも辺りを見渡すと、子供に混じって雲に近づいている玲の姿を発見した。
そして、雲との接触に成功した玲は、嬉しそうに彼の手を取って言った。
「オレの料理人に永久就職してくれ!!」
「ワリィ、断る」
プロポーズみたいな勧誘をする玲だったが、すぐさまバッサリと断られる。
「分かった!!また出直す!!」
あっさりと引き下がるが、“また”とゆう言葉には引っかかる。玲の行動には日々頭を悩ませているロンだが、次は危機管理能力の教育をしなくては等と考え、現実逃避する。
その日はロンに引きずられるようにして帰って行った玲だったが、数日後にはまた雲の前に現れた。
「オレの重臣になってくれ」
「断る」
言い方を変えて勧誘してみるも、またもフラレる。
翌日も彼のもとに行っては……
「部下になってくれ」
「遠慮しておく」
その次の日も……
「料理人に「ならない」……」
玲の言葉を遮るように断る雲。
だがそれからも毎日のように通いつめ、とうとう痺れを切らした雲が問いかける。
「どうして俺にどんなこだわんだ!?とゆうか、護衛はどうした!!」
最初はロンと来ていたが、その次からはこっそりと来ていたのであろう玲。
「オレはお前“が”イイんじゃなくて、お前“だから”イイんだ」
そうニカッと太陽のように眩しい笑顔で言われては、雲としては覆い隠し用もない者で………
「だあああああーー!!!!負けだ、負けー!!!!」
雲はそう叫んで、降参したかのように両手を上げて笑う。
「そんな連日口説かれちゃ、漢としてホタされちまうもんだろ。いいぜ、重臣でも騎士でも下僕でも何でもやってやんよ」
雲は自信に満ちた笑みで玲に笑いかけると、玲はまたあの太陽のように眩しい笑顔で答えてくれる。
「……にしてもアンタ、太陽みたいなキレイな瞳の色だな」
雲はそう言って懐から鏡を取り出すと、玲に手渡す。
「え」
鏡を覗きこんだ玲の瞳は黄金色に光っていた。
玲は雲を連れて王宮に戻ると、ロンには驚かれたが
すぐに呆れられた顔をされた。
「なあなあ、そんなことよりオレの目って黄金色に変わってたことって今まであったか?」
ロンはピクリと眉を少し動かしはしたものの、動じることはなく、至って冷静に口を開く。
「さぁ?存じ上げませんが、その方についてはご説明願いたいのですが?」
そう言われてしまうと、次は玲が慌てふためく番である。
「軍については総入れ替えしようと思ってたし、料理人もいるしで口説いた!!」
「口説かれた!!」
真面目な顔で二人が言うものだから頭が痛い。紅花の報告では玲と衣が入れ替わっている可能性があると、報告を受けたのだが、目の前にいるポンコツな主人は間違いなく玲だと、断言出来てしまうから腹立たしい。
(父上といい、このお方といい、フレグレンスの血筋はどうしてこうも皇族だとゆうのに一人でフラフラとなされるのか………)
「これで舞をする人も、料理人も決まったし、あとは舞台を整えて、その日が来るのを待つだけだな」
楽しそうに笑う玲を見て、詰め寄って問いただしたい気持ちも消え失せ、ため息だけが出る。
「玲、大事なお話があります」
ロンは真っ直ぐと玲を見て、真剣な口調で言った。そのロンの態度に怒られると思った玲は、キューッと唇を噛み締め大きく頷いた。
「その宴会に私の妹と弟が参加します。初めての外交とゆう形になりますので、くれぐれも変なことはしないように………いいです……ね?」
ロンは子供に言いつけるようにゆっくり、丁寧に説明する。だが玲は、怒られないと分かって嬉しそうに笑って、笑顔で頷く。
案の定、先に注意したにも関わらず、分かっていない態度にため息がまた出てしまう。
「宰相殿も苦労してんだな……」
雲にとっては独り言のように、ポツリと呟いただけのつもりだったが、ロンはその音さえも拾った。
「分かっていただけますか、うちの獣王様はお転婆のジャジャ馬ですので、雲殿もお気をつけを」
宰相殿に真剣な表情でそう言われてしまい、雲は早速選択肢を早まったのではないかと、後悔しそうになるのであった。




