カルディア
旅行から帰ってきました。
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世界各国にカルディア支部があるが、本部はフレグレンスである。
カルディアのモットーは“民間人”の安心、安全であり、警備、出生届けの受理、死亡届の受理、婚姻、離婚などの処理や、危険な場所の調査や魔物討伐、犯罪者の捕縛、魔法解析や魔法での血縁鑑定などもしている。
カルディアはすべての国と中立な立場を貫いているが、戦争を嫌っているため戦争には関与してならないというルールがある。
カルディアの給料は、各国からの支援金や王族貴族からの支援金などで払われている。幹部の“プレフェクト”と呼ばれる階級の人達が書類で仕分け、フレグレンスから各国の支部へと運ぶのは階級が“コントゥル”の数人。
階級は創始者のフォダトゥールから、アラミール、プレフェクト、スゴンダール、デスカードル、ヴィス、コントゥル、ヴェソー、フレガット、コルヴェット、リュトナン、プルミエール、ドゥジエムの順だ。今日はそんな彼等に関する事件の真相についての物語だ。
本部からやって来た幹部はプレフェクトのサク・ヴェリンガー。同じくプレフェクトで技術開発局の局長であるピーティ・ルー。デスカードルのテア・マフィンの三名だ。
三名はクアイフオの屋敷に来ると、かつての部下に案内された客間に入り、フカフカの薄緑の花柄ソファーに座り、かつての部下が淹れてくれた紅茶を飲んで一息つく。
「では、聞かせていただきたい。何故、バイフウ支部の全員が一斉に退職届を出したのか」
高圧的な態度で、黒のロング丈の軍服をきっちりと着こなしている彼はどこか洗礼されている。スラッとした平均よりも高い身長。銀の獅子の紋章の入ったバッチをつけた黒髪短髪で、黒縁メガネに目つきの悪い吊目に濃いクマのある真面目そうな堅物こそ、サク・ヴェリンガーである。
「まぁ、落ち着けよ。そもそも無給金で働かせてたアンタ等カルディアがワリィに決まってしな」
リベーリュあ宥めるようなことを言いながらも、証拠書類を片手にニヤニヤと悪い笑みでサクを煽る。
「有り得ん!!こんな偽造書類を作ってまで辞めたいなら好きにしろ!!!!」
書類に目を通したサクだったが、すぐにバン!!と音を立てて書類を机に叩きつけて怒鳴る。
「………テア〜。これちょっと本部に回して詳しい事調べるように連絡しといて」
工事勤務の人が着るような黒のツナギの左胸に獅子の紋章のバッチをつけ、一つにくくり三つ編みにした長いオレンジの髪を右片肩からたらりと流れ揺れていて、小さい一重の瞳は琥珀色で、ソバカスのある頬と鼻、顔には煤のような黒い何かを付けて薄汚れた女性が、ピーティ・ルーだ。
彼女は叩きつけられた資料をすっと手に取り、それをテアに手渡した。
「了解です」
黒の軍服をきっちりと着こなし、胸元には鷹の紋章のバッチを付けている。ブロンズ色のマッシュ系の髪に一般男性程の背丈、顔立ちは整っているこの男性がテア・マフィンだ。
「お、落ち着けよ。資料が偽物ってどうして言えんだよ、リベーリュがそんな男じゃないってオレは分かってるからな。そんな風に言われたんじゃ、話し合いもできねぇぞ」
玲は珍しく怒気のある声音で、言う。その表情は真剣で、目はサクを静かに睨みつけている。微かに黄金色に光るその瞳にロンは心配そうに見ている。
「給料についての書類は前々から俺が処理しているからだ。間違えなど起きるはずが無い」
きっぱりと言ってのけるサクに、リベーリュは眉をひそめてイヤそうにしている。
「とにかく詳しいことを調べたいから、しばらくこの屋敷に滞在してくれ」
玲にそう言われた三人はこの屋敷にしばらく滞在することになった。
三人が居るからと言って、日常が変わることはなく、元カルディアの構成員達である彼等は変わらず忙しく仕事をしてくれている。
「何故闇ギルドの者がいる」
最初、玲の護衛をしているファントムに警戒していたサクだったが……
「そんな風に敵意を向けないでくれるか?ファントムはオレの護衛で、虐待から助けてくれないカルディアよりもよっぽど頼りになるんだ」
なんて言われてしまい押し黙ってしまった。多くの命を助けてきたと自符するサクにとって、バイフウの人々は助けることのできていない人々であった。王族からも、貴族からも、魔物や犯罪者からも守るのがカルディアの責務であるのに、それができていない現状に自身の考えの板ならさに苛ついてしまっていた。
「ギルドの冒険者といい、闇ギルドの者といい、カルディアの構成員まで引き込んで、公主様は一体何を考えておられる?」
渋い顔で言うサクに玲は満面の笑顔を向ける。
「オレは皆のこと信用してるぜ。一番信用できないのは、王族や貴族って知ってるし、そうはなりたくないし、罪のない善良の市民を助けるのが王族であるオレの宿命なんだ。困ってる才能の埋もれている人に道を切り開いてやりてぇんだ」
その笑顔を、サクは眩しく感じて目を細めてしまった。眩しくて純粋無垢なる存在は、世界のどす黒い裏の部分を見てしまっては、綺麗な心が黒く塗りつぶされるかもしれない。ガラにもなくそう思ってしまった自分に苦笑いするのだった。
数日後、事件の真相が発覚した。
カルディアではしっかりと受理された書類。そしてバイフウへと運ばれた給金だったが、バイフウ軍と手を組んだ裏切り者の構成員がいたらしく、お金をそれぞれの懐に入れていたことが分かり、サクは絶句してしまった。
玲は悔しそうに俯き、歯を食いしばって唇から血が流れる。
「ちゃんと構成員達が着服していたって証拠もあるからな」
マジックカメラで撮影された証拠を見てうつ向き目を瞑るサクに、テアに構成員達の情報と捕縛の支持をテキパキと支持するピーティ。
「すまない。これはこちらの責任だ。まさかカルディアに裏切り者がいるとは……こちらでしっかりと処罰する。そして未払分は数日後にフレグレンス支部が運んできっちり払う」
綺麗に90度に曲げられたお辞儀に、かつての構成員達はポカン顔だ。
「顔を上げてくださいサク殿。しっかりと給料を払ってもらえるのであれば文句はありません。謝罪も受け入れます。これからは同じことが起きない用に徹底して頂ければ、言うことは何もありませんから」
勝峰がそう言うと、元カルディアの皆も楓もコクリと頷いた。
こうして支部の未払給料事件は解決したのだった。
申し訳なさそうに、だけどしっかりと背筋を伸ばして立ち去っていく三人を屋敷の門から見守る玲、ロン、ファントム、リベーリュ。
「公主様。最近獣王が、思わしくないらしい。長くはねぇかもしれねぇ」
リベーリュは色がオレンジ色に染まった晴れた空を見上げながらポツリと言った。
「……そっか」
それだけ言った玲だが、無表情で涙もないのを見るに、家族としての情も何も無いのだろう。
利によって最悪な時代となったバイフウだが、今その時代が終焉を迎えようとしていた。




