第九話 修業の達成
私は思わず、頷いた。
「な、なるほど」
そして、聞いてみた。
「それで強いモンスターが人前に出る理由は、お分かりになったのですか?」
するとナバウ様は、少し考えた表情になって答えた。
「これはまだ私の推測なんですが、どうも魔族がからんでいるようです」
「ま、魔族が?!」
魔族はこの惑星シュカに住む、生物の一種だ。この惑星には人間、魔族、モンスターが住んでいる。そして魔族は、人間に近い見た目をしている。でも魔族には角が生えていたりして、人間とは違う。人間の肌の色は普通白だが、魔族は緑色だったりする。そして魔族と人間との決定的な違いは、持っている魔力の大きさだ。
人間も魔力を持っていて、修業をすると魔法などを使えるようになる。だが魔族が持つ魔力は、人間が持つ魔力よりもけた外れに多い。そして魔族はその数も人間よりも少なく、まだまだ謎が多いため人間から迫害されている。そのため魔族は人間の前には、ほとんど姿を現さない。なのに、その魔族がからんでいる?……。私はこれからどうすればいいのか分からなくなって、ナバウ様に聞いてみた。
「そ、それではナバウ様! 私は一体、どうすればいいんでしょうか?!」
するとナバウ様は、冷静に答えた。
「ユーミ王女はまず、今まで通り剣聖になるための修業を続けてください。強いモンスターから、国民を護る強い女王になるために。なぜ強いモンスターが人前に現れて街を襲っているのか、その理由は私が調べますので」
それを聞いて、私は頷いた。
「はい! 分かりました!」
だが私は、一つ疑問が浮かんだので聞いてみた。
「ナバウ様は、また旅に出られるんですよね? 今度、ここに戻られるのはいつですか?」
するとナバウ様は、首を左右に振った。
「それは私にも、分かりません。一カ月後になるのか、一年後になるのか……」
私は思わず、呟いた。
「い、一年後?……」
一年も、ナバウ様に会えないかも知れないのか。つまりそれまでは、剣聖になるための次の修業はできないのか……。と私は思わず、落ち込んだ。すると、そんな私を見てナバウ様は告げた。
「安心してください、ユーミ王女。私は、また必ずここに戻ってきます。なぜ強いモンスターが人前に現れるのかを、国王陛下に報告するために。そして、ユーミ王女。あなたを、剣聖にするために……」
「ナバウ様……」
そして私は、決心した。絶対に、修業をできるようになろうと。だから、ナバウ様に告げた。
「分かりましたわ! 次にナバウ様がここに帰ってくるまでに絶対、マラソンは一〇キロ、腕立て伏せとスクワットはそれぞれ一〇〇回できるようになってみせますわ!」
するとナバウ様は、微笑んだ。
「はい。期待していますよ、ユーミ王女」
そうしてナバウ様は私に背中を見せて、歩き出した。再び、旅立つために。
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そして半年ほど月日は流れて、風が少し冷たくなってきた一〇の月のある日。私はとうとう、やった。マラソンは一〇キロ走れるようになり、腕立て伏せとスクワットはそれぞれ一〇〇回できるようになった。喜びすぎた私は、つい大声を出してしまった。
「やりましたわ、ナバウ様! 私はとうとう、やりましたわ!」
でもその時、ナバウ様はいなかった。彼はまだ、旅から帰ってきていなかった。だから私は、待つことにした。ナバウ様を。剣聖になるための、次の修業を。
それから、一週間が過ぎたある日。私はいつも通り、朝食の後の修業をしていた。マラソンを一〇キロ走り、腕立て伏せとスクワットはそれぞれ一〇〇回やって一休みしていた。すると突然、拍手の音が聞こえた。そちらを見てみると、何とナバウ様が立っていた! いつも通り銀色に輝く鎧を着た、ナバウ様が! 私はもちろん、笑顔で報告した。
「ナバウ様! 私は、やりましたわ! マラソンは一〇キロ、腕立て伏せとスクワットはそれぞれ一〇〇回できるようになりましたわ!」
するとナバウ様は、優しい眼差しで私を見つめて答えた。
「はい、そのようですね。実は私は、ちょっと前にこの城下町に帰ってきたのです。するとマラソンをしている、あなたを見かけました。私は思わず、見守ってしまいました。あなたが一〇キロ、走る場面を。それから腕立て伏せとスクワットをそれぞれ一〇〇回、やり遂げる場面を。ついにやりましたね、ユーミ王女……」
それを聞いた私は、思わずナバウ様に抱き着いた。
「ありがとうございます! ありがとうございます、ナバウ様!」
するとナバウ様は、私の頭を優しくなでた。そして、告げた。
「少々お待ちください、ユーミ王女。まずは国王陛下に、旅の報告をしなければならないので」
「はい!」
「それから剣聖になるための、次の修業をします」




