第六話 修業再開
でも今の私には、明確な目標がある。それは、苦しんでいる国民を救う女王だ。全ての国民を、護る女王だ。だからそのために私は、剣聖にならなければならない。
そう考えた私は、ナバウを追おうとした。もう一度、修業してくれと頼もうとした。だが尻もちをついている私は、立ち上がることもできなかった。体が、動かなかった。な、なんて無様なの私は……。
すると私の両目から、涙がポロポロとこぼれ落ちた。わ、私は剣聖になりたいのに! 全ての国民を護れる、剣聖になりたいのに! だが今、立ち上がることもできない私には、それはできなかった。私は、悔しくて泣いた。生まれて初めて、声を上げて泣いた。
しばらくして、私は泣き止んだ。すると少し体力も回復したのか、立ち上がることができた。そして私は、とぼとぼと城の中の自分の部屋に向かった。部屋の前には二人のメイドがいて、私が近づくと頭を下げた。私はピンクのドレスを脱いで、メイドに渡して小さな声で告げた。
「これ、洗濯しておいて……」
するとメイドはドレスを受け取り頭を下げて、洗濯場に向かった。自分の部屋に入った私はクローゼットを開けて、黄色のドレスを出して着た。そして自分のベットに、倒れこんだ。すると修業と泣いて疲れたのか、すぐに寝てしまった。
私が目を覚ましたのは、部屋のドアがノックされたからだ。その音で、目が覚めた。私はまだ落ち込んでいたので、小さな声で答えた。
「何ですの?……」
するとドアの向こうから、メイドの声がした。
「ユーミ王女。夕食の支度が、できました」
ゆ、夕方?! もう夕方なの?! 私はこの時、初めて自分が夕方まで寝たことに気づいた。だが食欲は全然無かったので、小さな声で答えた。
「夕食は、要りませんわ……」
するとメイドの、心配そうな声が聞こえた。
「それはいけません、ユーミ王女! あなたは昼食も食べていないんです! それを王も王妃も心配しておられます!」
そうか。お昼も食べていない私を、お父様もお母様も心配しているのか。それはちょっとマズイなと考えて私は、食堂に向かった。食堂ではすでに、お父様とお母様がイスに座っていた。そして私の姿を見ると、二人とも喜んだ表情になった。
「おお! ユーミ、心配したぞ! 昼食は食べなかったから、夕食は食べなさい!」
「そうよ、ユーミ。食事は、大事よ」
まだ落ち込んでいた私は、やはり小さな声で答えた。
「はい、お父様、お母様……」
そして私は目の前にある料理を、少し食べた。そして疑問に思ったので、聞いてみた。
「あの、お父様。剣聖ナバウ様は、どうされましたか?」
「ああ。ナバウ様は昼頃、私に挨拶にきたよ。これから、旅に出るそうだ」
「そうですか、旅に……」
そしてお父様は、笑顔で話し出した。
「ナバウ様から聞いたが、お前は剣聖になるための修業ができなかったそうだな。うんうん、それでいい。王女が剣聖を目指すなんて、聞いたことが無いからな」
それを聞いた私は、やはり小さな声で答えた。
「はあ……」
そして私は、イスから立ち上がった。それから二人に告げた。
「私は食欲が無いので、今日はもう寝ます。おやすみなさいませ」
そうして食堂を出た私は城の中にある大浴場でお風呂に入り、自分の部屋に戻って水色のパジャマに着替えて寝た。
次の日の朝。私はメイドがドアをノックする音で、目が覚めた。
「ユーミ王女。朝食のお時間です」
それを聞いた私は、気が付いた。お腹が、ものすごく空いていることに。なので早速、黄色のドレスに着替えて食堂に向かった。ものすごくお腹が空いていたので、私は目の前に用意された料理を全部食べた。するとお父様とお母様は、私が元気になったと喜んだ。
自分の部屋に戻った私は、考えた。これから、どうすればいいのかと。ナバウは、もういない。だから剣聖になる修行は、もうできないか……。でも私は、もう決めていた。全ての国民を護る、立派な女王になることを。だがそのためにはやはり、剣聖になる必要がある。国民を護るためには、力も必要だと思うからだ。でも、どうしよう……。
すると私は、ひらめいた。昨日、ナバウ様から教えられた修業をしようと! ナバウ様はもういないが、昨日の修業をすることが剣聖に近づくために必要だと考えた。だから私はピンクのドレスに着替えると、城下町の西にある広場に向かった。
そこに着いた私は、思い出した。確か最初は、マラソンを一〇キロだったわね。昨日は一キロも走れなかったけど、今日こそやってやるわ! そう決心して、私は城下町から出て左回りでマラソンを始めた。
だがやはり一キロくらい走ったところで、息が苦しくなって脚が重くなった。はあはあ。やっぱりいきなり一〇キロ走るのは、無理があるか。でも、それでもいい! 私は、やるんだ!




