第五話 挫折
なるほど、そういうことか。剣聖になるには、まずは剣士にならなくてはいけないのか。なので私は、言い放った。
「分かりました! それでは私はまずは、剣士になりますわ!」
「はい。それでいいのです。それではまず、マラソンをしてきてください」
「はい!」
そうして私は張り切って、城下町の出入り口まで走った。よーし、ここから私はがんばって、立派な剣聖になるぞ! そして私は城下町を出ると、左回りでマラソンを始めた。
えーと、まずは一〇キロのマラソンでしたわね。マラソンなんてやったことないけど、まあ何とかなるでしょうと私は走り出した。だがしばらくすると、息が苦しくなってきた。脚も、重くなってきた。あれ、おかしいですわ。だんだん、走れなくなってきますわ……。
でも私は、がんばった。これくらいで、へこたれてはいけませんわ! 私は必ず、剣聖になるのですから! だが、どんどん走れなくなった。そして私はとうとう、地面に仰向けに倒れこんだ。もう、少しも走れない。いや、動くことすらできない。そう思って倒れこんでしばらくすると、ナバウの声がした。
「まあ、こうなるとは思ってたんですけどね……」
私が後ろを振り向くと、そこには呆れた表情のナバウがいた。そして彼は、告げた。
「ユーミ王女。まだ、一キロも走ってませんよ」
なので私は、言い放った。
「ちょ、ちょっと私にはマラソンは向いてないだけですわ! きっといつかは一〇キロ走れるようになりますわ!」
するとナバウは、再び呆れた表情で聞いてきた。
「それじゃあ、まだ修業を続ける気ですか?」
「も、もちろんですわ!」
それを聞いたナバウは、やはり呆れた表情になった。
「はあ、分かりました。それでは、次の修業をしてみましょう」
そうして私たちは、元の広場に戻った。するとナバウは、告げた。
「それじゃあ今度は、腕立て伏せを一〇〇回してください。剣士になるには、腕力も大事なので」
なので私は、再び言い放った。
「ひゃ、一〇〇回?! い、いいでしょう! やってやりますわ!」
そして私は、地面に両手をついた。そして、腕立て伏せをしようとした。肘を曲げて、地面に近づいた。それから肘を伸ばして、地面から離れた。よ、よーし。これで一回ですわ。腕立て伏せもやったことは無いけど、何とかやりますわ。
そして二回目の腕立て伏せをしようと思い肘を曲げた時、べちゃりと地面に体が落ちた。あ、あれ、おかしいですわ。腕に力が、入りませんわ……。そして私はそのまま地面に、倒れていた。するとナバウが、声をかけてきた。
「どうしました、ユーミ王女。腕立て伏せは、まだ一回しかやってませんが?」
「う、うるさいですわ! こ、これから二回目をやりますわ!」
「そうですか、それならどうぞ」
そして私は、肘を伸ばして地面から離れようとした。でも腕に、力が入らない。どうがんばっても、肘を伸ばせなかった。するとナバウは、再び声をかけてきた。
「どうやら腕立て伏せは、一回しかできないようですね」
なので私は、言い放った。
「う、腕立て伏せも私には向いてないんですわ! 次の修業をしますわ!」
するとナバウは、冷静に答えた。
「そうですか。でもユーミ王女。その前にまず、立ち上がってください」
「わ、分かってますわ!」
私は右ひざを地面につけて、ようやく立ち上がった。しかし息が切れて、体が重かった。もう、少しも動ける気がしない。それでも私は、言い放った。
「つ、次の修業は何ですの?!」
するとナバウは、冷静に答えた。
「次はスクワット、一〇〇回です。やはり剣士は、足腰の強さも重要なので。できますか?」
と挑発されたので、私は答えてやった。
「あ、当り前ですわ! み、見てらっしゃい!」
そして私は、両腕を頭の後ろにまわして組んだ。た、確かスクワットってこの状態から膝を曲げるのよね。だから私は、両膝を曲げてみた。すると両膝はガクガクと震えだしてカクンと曲がり、私は地面に尻もちをついた。すると当然、ナバウは告げた。
「スクワットは、一回もできませんか……」
なので私は、言い放った。
「こ、このスクワットも私に向いてないだけですわ! つ、次の修業をしますわ!」
するとナバウは、言い放った。
「いえ、ユーミ王女。修業はこれで、終わりです」
「え?」
ナバウは冷静な表情で、説明した。
「マラソンは一〇キロ、腕立て伏せは一〇〇回、スクワットも一〇〇回。これが基本の修業です。これができなければ剣聖どころか、剣士にもなれません」
「そ、そんな……」
そしてナバウは、告げた。
「やはりユーミ王女は剣士にも、そして剣聖にもなれないようですね。それでは」
そう告げるとナバウは、クルリと私に背を向けて歩き出した。そしてドンドン、私から離れて行った。私は思わず、その背中に叫んだ。
「ま、待ってくださいナバウ様! わ、私はどうしても剣聖になりたいんです!」
だがナバウはドンドン私から離れていき、そしてとうとう見えなくなった。私は呆然としながらも、考えた。もし昨日ナバウに会わなかったら、私は成人してわがままな女王になっただろう。そして国民を苦しめる、女王になったかもしれない。




