第五十一話 奥義
私は思わず、叫んだ。
「ナ、ナバウ様!」
するとナバウ様は、申し訳なさそうな表情になった。
「申し訳ありません、ユーミ王女。おそらくあなたはこの城の中にいると考えて入ったのはいいんですが、何しろこの城は広くてここにたどり着くまでに時間がかかってしまいました」
そんなナバウ様を見て、私は心の底から安堵した。私は今まで長い間、ナバウ様と一緒にいたがこれほどナバウ様の姿を見て安堵したことは無かった。ナバウ様ならこの最悪の状況を、何とかしてくれると思ったからだ。すると魔王マモートは、疑問の表情になった。
「何者だ、お前は?」
そう聞かれたナバウ様は、この部屋に入りながら真剣な表情で答えた。
「私ですか? 私は通りすがりの、剣聖ですよ。そしてそこにいる、ユーミ王女の師匠ですよ。今回は私の弟子が、世話になったようですね……」
するとマモートは、言い放った。
「剣聖? 師匠? ふん、どうでもいい。この小娘を殺す邪魔をするというのなら、まずはお前から殺してやる!」
そしてマモートは、一瞬でナバウ様の目の前に移動した。そして次々に左右の拳を、目にもとまらぬ速さで繰り出した。私は思わず、叫んだ。
「危ない、ナバウ様!」
だがナバウ様は、余裕の表情で全ての拳をかわした。するとマモートは、焦ったようだ。
「な、ならばこれはどうだ!」
マモートは、やはり一瞬でナバウ様の後ろに移動すると目にもとまらぬ速さでナバウ様に何度も蹴りを繰り出した。だが信じられないことにナバウ様は、前を向いたまま後ろからの蹴りをかわした。するとマモートは、明らかに焦りだした。
「な、何だと? 儂の攻撃が、一切効かないだと?……」
するとナバウ様は、後ろを振り向いてマモートと対峙した。そして、怒りがこもった声で言い放った。
「私の弟子であり、将来この国を必ずや良くするであろうユーミ王女をよくここまでいたぶってくれましたね。本来ならあなたを塵も残さずに消滅させるところですが、それはユーミ王女の主義に反します。我々人間と同じ生き物である、魔族も倒さないという主義に反します。なので、安心してください。私は本気を出さずに手を抜いて、あなたを戦闘不能にしますから」
それを聞いたマモートは、怒りの表情になった。
「な、何だと?! て、手を抜く?! 貴様、この儂を誰だと思っている?! 儂は魔族の王、魔王マモートだぞ?!」
するとナバウ様は、呟いた。
「なるほど。やはりあなたが、魔王でしたか……」
そして、言い放った。
「私はこれからあなたを戦闘不能にしますが、私が一番強い訳ではありません。一番強いのは、剣聖と真の女王になってこの国の全ての国民を護ろうとしているユーミ王女です。モンスターも魔族も我々人間と同じ生き物だから倒さないという、ユーミ王女です」
そう言われた私は、思わず呟いた。
「ナ、ナバウ様……」
そしてナバウ様は銀色に輝く剣を振り上げて、叫んだ。
「奥義、パーフェクト・パーティー!」
するとナバウ様の胸から巨大な盾を持ったナバウ様が、ナバウ様の右腕からは黒いローブを着たナバウ様が、そして左腕から白いローブを着たナバウ様が現れた。私は、ただただ呆然とした。ナ、ナバウ様が四人になった?! それを見たマモートは、引き締まった表情になった。
「この技は、できるだけ使いたくなかったが……。儂の寿命が縮むほど、体に負担がかかるからな……。だが、そうも言っておれん! はああああ!」
するとマモートの右腕が、巨大化した。元の大きさの、一〇倍もの大きさに。そしてそれをナバウ様に向かって、突き出した。
破壊神の拳!
すると巨大な盾を持ったナバウ様は、それを盾で受けた。
守護神の盾!
だが巨大な盾を持ったナバウ様の、片膝が床についた。やはり大きな、ダメージを受けたようだ。すると白いローブを着たナバウ様が、叫んだ。
守護女神の癒し!
すると巨大な盾を持ったナバウ様は、立ち上がった。どうやらダメージが、回復したようだ。次は黒いローブを着たナバウ様が、叫んだ。
火神の咆哮!
すると黒いローブを着たナバウ様の全身から、マモートに向かって炎がビームのように噴き出した。それを喰らったマモートは一瞬、ひるんだ。そしてナバウ様は、そのスキを見逃さなかった。前にいる巨大な盾を持ったナバウ様を飛び越えて、マモートを何度も斬った。
剣神の舞!
するとマモートは、片膝を床につけた。やはり、大きなダメージを受けたのだろう。右腕も、元の大きさに戻った。そしてナバウ様は、静かに告げた。
「マモートとやら。そのダメージでは、もう戦えないでしょう。あきらめて、降参しなさい」
するとマモートは、うなだれた。
「く、くそう……」
そしてナバウ様は、私の方を向いた。
「大丈夫ですか、ユーミ王女?」
「ナ、ナバウ様……」
「ふむ。だいぶダメージを受けたようですが、どうやら大丈夫そうですね」
「は、はい、ナバウ様。ナバウ様がきてくれなかったら、私はどうなっていたか。本当に、ありがとうございました……」
そう言った次の瞬間、私はナバウ様にドロップキックをぶちかましていた。
「なーんてことを言うと思ったら大間違いですわーー!!」
「ぐはっ」




