第四十二話 魔族の理由
くっ。何って物騒な、鼻歌なのかしら。どうやら私の予想は、当たっているようだ。こんなことをするのは、魔族しか考えられない。そして私が知っている魔族は、一人しかいない。なので私は、大声を出した。
「こらー! ヨダク! そこにいるんでしょう?! 出てきなさーい!」
すると物騒な鼻歌が止んで、誰かが大きな岩の上に登り姿を現した。その姿を見て、私は驚いた。その姿が、丸々と太った魔族だったからだ。ヨダクは、背が低い魔族だった。でも今、私の目の前にいるのは丸々と太って黒いローブを着ている魔族だ。肌の色が緑色だから、魔族には違いないと思うけど……。そう考えていると、その魔族は自己紹介した。
「違うよ~。僕はヨダクじゃないよ~。僕はタフバだよ~」
タ、タフバ?! こいつは、タフバっていうの?! 魔族は、ヨダクだけじゃなかったの?! 魔族って一体、何人いるの?! と私が驚いていると、タフバは話し出した。
「うーん、やるねえ~。この山に人間の気配がしたから、カウマンとキング・エレファントを一〇体づつ召喚して向かわせたのになあ~。全部、倒されたってことかあ~。人間にしちゃあ、やるねえ~」
そう言われたので私は、言い放った。
「いいえ! 一体も倒していませんわ! 全て戦闘不能にして、この山から追い出しましたわ!」
すると丸顔で細目のタフバは、興味深そうな表情になった。
「へえ~。モンスターを、一体も倒してない? すると、アレだね。君がヨダクが言ってた、ユーミっていう人間かあ~。何でもすごく強いのに、モンスターを倒さないんだって~。変わってるね、君~」
私は一瞬、なぜモンスターを倒さないのか説明しようと思った。だが、止めた。魔族に、私が考えていることが理解できるとは思えなかったからだ。なので私は、逆に聞いた。
「この川を、この大きな岩で堰き止めたのはあなたね! 一体、どうしてこんなことをしたの?!」
するとタフバは、ニヤリと笑った。
「そんなの、決まってるじゃないか~。人間を、滅ぼすためだよ~」
くっ、やっぱり。予想はしてたけど、そういう理由か。するとタフバは、説明しだした。
「人間って、水が無ければ死んじゃうんだろ~。だからこの川を大きな岩で堰き止めたら、麓の町の人間を全滅させることができると思ったんだよ~」
「くっ。なぜ、そんなヒドイことをするんですか?!」
するとタフバは、当然だという表情で答えた。
「なぜって、僕は人間と同じことをしてるだけだよ~。人間も僕たち魔族を、滅ぼそうとしてるじゃないか~」
くっ、そういう理由か……。確かに魔族は、人間よりもけた外れに多い魔力を持っている。そして、まだまだ謎が多い。だから魔族は、私たち人間から迫害されているという話を聞いたことがあるが……。でも私は、魔族を迫害する気はない。だからこのタフバを、説得しようとした。
「待つのです、タフバよ! 私はあなたたち魔族を、迫害する気はありません!」
「ふーん~、そうなんだ~。君には、僕たち魔族を迫害する気は無いのか~」
「そ、そうですわ! だから私の話を聞いてください!」
するとタフバは、怒りの表情になった。
「君はそうかもしれないけれど、多くの人間は僕たちを迫害してきたんだ! だから僕たち魔族は今、数人しか残ってないんだ!」
私はその言葉に、衝撃を受けた。す、数人?! 魔族は今、数人しか残ってないの?! 人間はそこまで魔族を、迫害してきたの?! と私が衝撃を受けていると、タフバは両手を伸ばして上に向けた。
「だからユーミ。君にはここで、死んでもらうよ。サモン!」
するとタフバの頭上に、大きな黒い渦が現れた。そしてそこから、ガイコツ剣士が現れた。黒い鎧を着て、黒い兜をかぶって。だがこのガイコツ剣士は、普通ではなかった。腕が左右に三本づつ、合計六本あったからだ。そしてそれぞれの手に、一本づつ黒い剣を握っていた。するとタフバは、高笑いをした。
「はははは! さあ、ユーミ。勝てるかな? この魔界で最強クラスの剣士モンスター、ボーンナイト・ヘルソードに!」
くっ。ボーンナイト・ヘルソードか。確かに、強そうですわ……。でも私はこのモンスターも倒さずに、戦闘不能にしますわ! と私が聖剣アポビーを構えると、ボーンナイト・ヘルソードは早速攻撃してきた。六本の腕から繰り出される、連続攻撃だ。しかも、速い。でもこれくらい、受けられますわ! 私はナバウ様との、防御の修業を思い出した。私はそれで、剣で相手の攻撃を受ける方法を学んだ。
だから今も、剣を立てて真ん中や左右に構えてボーンナイト・ヘルソードの攻撃を受けた。よし、イケますわ! 確かに六本腕の攻撃は手数が多いですが、一つ一つの攻撃を受けてスキを作って攻撃して見せますわ! すると私が剣で攻撃を受けているので、ボーンナイト・ヘルソードは攻撃方法を変えてきた。
まず上部の二本の剣を、同時に振り下ろした。私はこれを、剣を横にして上段で受けた。すると残ったボーンナイト・ヘルソードの四本の剣が、剣を受けて動けない私を攻撃してきた。こ、これはマズいですわ!




