第四十一話 不倒
私は覚悟を決めて、一〇〇パーセントの力で牛頭のモンスターを斬った。お願い、倒れないで! するとモンスターはうずくまり、戦闘不能になった。良かった、何とか倒さずに戦闘不能にすることができましたわ。するとそのモンスターはもう戦えないようで、私から逃げ出した。
うん、これでいいですわ。もう人前には、現れるんじゃありませんわ……。と私がホッとしたのも束の間で、更に一〇体ほどの牛頭のモンスターが現れた! くっ。こいつら、しつこいですわ! だがもう私は、このモンスターを戦闘不能にする方法を知っている。なので私は一〇〇パーセントの力で、モンスターたちを次々と斬った。するとやはりうずくまり戦闘不能になったようで、モンスターたちは逃げ出した。
私は念のために警戒していたが、もうモンスターは現れなかった。そして私は、ようやく一息ついた。すると疑問の表情で、ナバウ様は聞いてきた。
「お見事です、ユーミ王女。見事にモンスターたちを、退けましたね。でも、どうして倒さないんですか? ユーミ王女の実力なら、簡単に倒せるはずですが?」
なので私は、説明した。私は魔法学校を襲ったモンスターと戦ったが、そのモンスターの見た目は人間だった。なのでそのモンスターを倒すことは、人間を倒すように思えた。そして、気づいた。私は人間で生き物だが、モンスターも生き物だ。だから私は生き物であるモンスターを倒さずに、大ダメージを与えて戦闘不能にすることにしたと。するとナバウ様は、真剣な表情で頷いた。
「なるほど。モンスターも、生き物ですか。確かに、そうですね……」
そしてナバウ様は、ニッコリと微笑んだ。
「私は今まで、たくさんの剣士を見てきました。でもユーミ王女のように考える剣士は、いませんでした。この私も含めて。なのでそんなことを考えて実行するユーミ王女はきっと立派な剣士に、いや剣聖になれると思いますよ」
実は私は、この考え方は甘いんじゃないかとも思っていた。やはり相手がモンスターなら、倒すべきではないかと。でもナバウ様に私の考えを認めてもらって、私は自信を持った。よし。これからもモンスターを倒さずに、戦闘不能にするだけにしますわ!
そうして私たちは、水量が少ない川に沿って山を登り続けた。すると今度は、狂暴そうな目をした赤い象が現れた。しかも、一度に一〇体ほども! そいつらは太くて長い鼻を振り回して、周りの木々を倒しながら向かってきた。くっ。こいつら、何てパワーなの?! するとナバウ様は、冷静に聞いてきた。
「さあ。これらのモンスターは、どうしますかユーミ王女?」
なので私も、冷静に答えた。
「決まってますわ、ナバウ様。こいつらも倒さずに、戦闘不能にして退けますわ」
そして私は、一〇〇パーセントの力で斬ろうとした。だが近づこうとした時、振り回していた太くて長い鼻が私の脇腹を直撃して吹き飛ばされた。私は背中を、大木に打ちつけられた。背中の激痛を感じながら、私は考えた。くっ。やっぱりこのモンスターのパワーは、甘くないですわ……。
そして私は、この象のモンスターを観察した。そいつらは相変わらず長い鼻を振り回して、周りの木々をなぎ倒してした。だが、あることに気づいた。確かにこのモンスターの鼻のパワーはとんでもないが、スピードは遅い。なるほど、だったら……。
モンスターが振り回している鼻に全神経を集中して、私は右に左にステップしてそれらをかわした。そして本体に、たどり着いた。今ですわ! 私は一〇〇パーセントの力で、モンスターに斬りつけた。だがモンスターは一瞬ひるんだだけで、戦闘不能にはならなかった。くっ。ならば、もう一撃! 私は再び一〇〇パーセントの力で、モンスターに斬りつけた。
するとモンスターは四本の脚を折り曲げて、山の地面に伏せた。でも、倒してはいない。戦闘不能に、なっただけだ。ふう。一〇〇パーセントの力で、二回攻撃しないと戦闘不能にできないなんて……。でも、覚えましたわ。このモンスターを、戦闘不能にする方法を!
なので私は、残りの象のモンスターも戦闘不能にした。振り回される鼻に注意して、本体に近づく。そして一〇〇パーセントの力で、二回斬る方法で。そして少しするとやはりこのモンスターたちも、私から逃げ出した。ふう。ちょっと苦戦しましたが、このモンスターたちも倒さずに退けましたわ。するとナバウ様は、微笑みながら拍手をしていた。
「お見事です、ユーミ王女。これらのモンスターも、倒さずに退けましたね」
そうナバウ様に褒められて私は、笑顔で答えた。
「はい、もちろんですわ!」
そうして機嫌が良くなった私は、水量が少ない川に沿ってドンドン山を登った。すると川が大きな岩で、堰き止められているのが見えた。水は大きな岩の左右から少しづつ、チョロチョロと流れているだけだった。それを見た私は、嫌な予感がした。
この川の水量が少ないのは、この大きな岩で堰き止められているからだろう。だから麓のミサスの町に流れている川の水量も、減ったのだろう。でもこの川が偶然、大きな岩で堰き止められたとは考えにくい。こんなことをするのは……。と私が予想していると、大きな岩の裏から鼻歌が聞こえてきた。
「フンフンフンフン~。まだかな、まだかな~。麓の町が滅びるのは、まだかな~」




