第三十八話 さびれた町
ミワーヨの町から、南に歩いて三日目。私とナバウ様は、町を見つけた。するとナバウ様は、告げた。
「あれは、ミサスの町です。ちょうどいいので、ちょっと休みましょう」
町に入ってみると、人影が無かった。町の中央には木造の広い建物があり、その周りにはレンガ造りの民家らしき建物があるのだが。するとナバウ様は、疑問の表情になった。
「おかしいですね。この町は近くに金が採れる鉱山があって、それでこの国に流通する金貨を作って大勢の人が暮らしていたはずなんですが……」
なるほど、そうでしたか。でも今は、人を見かけませんわ。こういう時は……。少し考えた私は、ナバウ様に聞いてみた。
「ナバウ様。こういう時はまず、この町の町長に話を聞けばいいんでしたっけ?」
するとナバウ様は、ニッコリと微笑んだ。
「その通りです、ユーミ王女。それでは早速、行ってみましょう」
そうして私たちは、この町の奥にある役場に向かった。そこは正方形で、灰色のレンガで造られた大きな建物だった。うーん。こんなに大きな役場を建てられるとは、この町は金貨を作ってかなり潤ったんだろう。なのに今は、人を見かけない。やはりこれは、町長に詳しい話を聞くしかない。なので私たちは、三階の町長室に向かった。
ナバウ様がドアをノックすると、中から元気が無い返事が聞こえた。
「はい~。どうぞ~」
部屋の中に入ってみると、奥の木製の机にやはり元気がなさそうな痩せた人物が座っていた。一応黒い背広を着ていたが、それも何だか汚れているようだ。髪は白髪交じりで目はギョロリとしていたが、生気は感じられなかった。そうとう、弱っているようだ。それでもナバウ様を見ると、少し元気な声を出した。
「おお! これはナバウ様! 以前は金が出る鉱山を発見していただき、ありがとうございました! おかげでこの町は金貨を作り、貧しかったこの町は潤いました!」
私は町長のその話を聞いて、ちょっと引いた。え? 金が採れる鉱山を発見したのは、ナバウ様だったんですか?! ナバウ様は本当に、剣聖ですか?! 剣聖って、そんなこともするんですか?! 私も剣聖になったら、そんなことまでしなきゃいけないんですか?! しかしナバウ様は、冷静に町長に質問した。
「そうですよね、アシマ町長。この町は金貨を作り、大勢の人たちが暮らしていたはずでしたが?」
するとアシマ町長は、すがるような目でナバウ様に説明した。確かにこの町は大勢の町民が金貨を作って、豊かな暮らしをしていた。だが半年前から鉱山から金が採れなくなり、金貨を作ることができなくなった。さらにこの町の役場の近くに流れていた川も、一カ月前から水の量が減った。なのでこの町で暮らしていくのが難しくなり、多くの人々がこの町を出て行ったと。
うーむ、なるほど。そういうことでしたか。なので今この町で、人影を見ないのですね……。と私が納得していると、アシマ町長は机に両手をついて頭を下げた。
「お願いです、ナバウ様! また以前のように、この町に活気を取り戻してください!」
するとナバウ様は、少し考える表情になったあとに答えた。
「分かりました。ちょっと、考えてみます」
そう言い残してナバウ様が町長室を出て行ったので、私もその後について行った。役場から出ると、ナバウ様は提案した。
「まずはこの町の食堂で、食事をしましょう。今までは硬いパンと干し肉だけだったので、ユーミ王女も久しぶりに温かい食事をしたいでしょう」
「はい! 確かに!」
そうして私たちはこの町の、食堂に入った。この町にはいくつかの食堂があったが、営業しているのはここだけだった。なので私は、嫌な予感がした。この食堂、ちゃんとした食べ物が出るんでしょうね?……。だがやはり、私の嫌な予感は当たった。店員に聞いてみると今出せるのは、パンとスープだけだった。
それでも今までの食事よりもマシなので、私とナバウ様はそれを注文した。そして出てきたのはやはりパンと、コーンスープだけだった。うーん。この町は、予想以上にさびれてますわね……。それでも私たちは、久しぶりの温かい食事にありつけた。パンとコーンスープしか出なかったので、食事はすぐに終わったが。するとナバウ様は、話し出した。
「うーむ。これは予想以上にさびれてしまいましたねえ……」
「はい。そうですねえ……」
この町のあまりにもさびれた雰囲気に影響されたのか、私たちまで気分が落ち込んだ。でも私は、決意した。この町を何とか、活気に満ちた町にしようと。私は今は王女だが、やはりこの国の国民には豊かな暮らしをしてもらいたいからだ。そして、気付いた。ナバウ様も、こんな気持ちだったんじゃないだろうか? ナバウ様もこの町にきた時、同じことを考えたんじゃないだろうか? だから金が出る鉱山を、探し出したんじゃないだろうか? 私がそう聞いてみると、ナバウ様は頷いた。
「確かに、そうです。この町はモンスターに襲われた訳ではありませんでしたが、貧しかったのです。なので私は、この町を何とかしたかったのです」
なるほど、やっぱり……。




