第三十七話 別れ
するとナリンさんの右腕のキズがふさがり、出血も止まった。よ、よかった。これで、一安心ですわ。と気を抜いた瞬間に、私は意識を失った。この戦いで体力も精神力も、使い果たしたからだ。だが意識を失う前に、私はふと思った。あ、そういえば私は治癒の魔法も使えるようになりましたわ……。
それから、どのくらい時間が経ったのだろう。私は、目を覚ました。こ、ここはどこですの?……。辺りを見てみるとここは見たことが無い部屋で、私は木製のベットで寝ていた。すると私の左側から、懐かしいナバウ様の声が聞こえた。
「ああ、ユーミ王女。目を覚まされましたか、良かった、本当に……」
「あ、ナバウ様。どうして、ここに? ここは、どこですの?」
「ここは魔法学校の、保健室です。憶えてますか? あなたはモンスターと戦って、その疲れで意識を失ったようです。なので私がここに、運びました。私が図書館で魔族とモンスターについて調べていると、外が騒がしくなりました。魔法学校に、モンスターが現れたと。なので慌てて私はこの、魔法学校まできました。そして広場で意識を失っている、あなたを見つけたんです……」
そうでしたか……。何だかナバウ様を心配させてしまって、申し訳ないですわ……。あ、そう言えば! 私は魔法学校での戦いで、魔族と遭ったことを思い出した。そして、その魔族が言っていたことを。魔族はその膨大な魔力で、モンスターを魔界から召喚していたと。それをナバウ様に話すと、やはり驚いた表情になった。
「な、何と! モンスターは魔族が魔界から召喚していた?! うーむ、なるほど。そういうことだったんですか……」
と頷いているナバウ様に、私は話を続けた。私は火、風、水、土、光、聖の基本的な魔法を、全て覚えたと。するとナバウ様は、再び驚いた表情になった。
「な、何と、こんなに短期間で?! 全くあなたは、大した人ですね……」
「なのでナバウ様! 早速、私が剣聖と真の女王になるための旅を再開させましょう!」
するとナバウ様は、優しく微笑んだ。
「もちろんですよ、ユーミ王女。でも念のため、明日一日もここでお休みください。それから、旅を再開させましょう」
そうして私は次の日も丸一日、保健室で休んだ。ハッキリ言って退屈だったけど、その甲斐はあった。十分に休んだおかげで、私の体力と気力は全回復していた。よし! これから旅を再開しますわ! と決意していると、ナバウ様がやってきた。もちろんこれから旅を再開するが、その前に校長に挨拶をすることになった。
私たちが校長室に入ると、サカミ校長は深々と頭を下げた。
「ユーミ王女。この度はこの魔法学校を救っていただき、誠にありがとうございます。私としてはこれから生徒たちの安全を守るために、全力を尽くします」
そこまで言われて私は、少し恐縮した。
「いえいえ。こちらこそこの魔法学校で魔法を学ばせていただき、感謝しています。ありがとうございました」
そしてサカミ校長は、聞いてきた。
「更にこの短期間で、基本的な魔法を全て覚えられたそうですね。おめでとうございます。それではこれから、旅に出られるのですか?」
「はい、そうです」
「そうですか。それではこれからの旅がユーミ王女にとって、実り多いことを祈っております」
「はい、ありがとうございます」
そうして私たちは、校長室を出た。更に魔法学校からも出て、この町の端に移動した。するとナバウ様は、呟いた。
「さて。次はどこに行ったらいいでしょうか?……」
それを聞いた私は、思い出した。魔法学校を襲った魔族のヨダクが、『南にこい』と言っていたことを。それをナバウ様に話すと、決意したようだ。
「なるほど、南ですか……。魔族が何を企んでいるのか知るためにも、行く必要がありますね。ユーミ王女も、それで構いませんか?」
「ええ、もちろんですわ!」
そうして私たちはこの町を出て、南に向かおうとした。すると、私を呼ぶ声が聞こえた。
「待ってください、ユーミ王女! 黙って行くなんて、ヒドイですよ! お礼くらい、言わせてくださいよ!」
と走ってきたのは、ハショウ君だった。そしてその後ろには、ナリンさんもいた! ハショウ君も、深々と頭を下げた。
「今回は僕たちを助けてくれて、ありがとうございました! 何てお礼を言ったらいいのか、分かりません!」
なので私も、お礼を言った。
「いえいえ。こちらこそ魔法を教えていただき、ありがとうございました」
するとナリンさんは、私に抱き着いてきた。
「私を助けてくれて、ありがとうユーミ王女! 本当にありがとう!」
なので私は、答えた。
「いいえ、ナリンさん。私は友だちとして、当然のことをしたまでですわ」
「ユーミ王女……」
私から少し離れたナリンさんは、寂しげな表情だった。
「ユーミ王女。私はあなたと別れるのが、とてもつらいです。このまま魔法学校に残って、私たちと一緒にいましょうよ!」
私は、ふと考えた。それはとても、楽しそうだなと。でも私には、目的がある。剣聖と真の女王になるという、目的が。だから私も寂しいけれど、お別れをした。
「そんなこと言わないで、ナリンさん。私は剣聖と真の女王になるためにがんばるから、あなたたちもがんばって。あなたたちはこれからも、王を補佐する高官を目指して。そしたら私が女王になったら、あなたたちを高官にするから。その時に、また会いましょう。それではナリンさん、ハショウ君と仲良くね」
そう言われたナリンさんは、ハショウ君と見つめ合った。そして、決意したようだ。
「そうね、そうするわ。私たちは離れ離れになるけど、お互いにがんばりましょう!」
それでもナリンさんは、聞いてきた。
「でも、ユーミ王女。私たちは、ずっと友だちよね? 私のこと、忘れないでね?」
なので私は、ナリンさんを見つめて答えた。
「ええ。私は初めての友だちを、忘れたりしないわ……」
「ユーミ王女……」
そうして友だちに別れを告げた私とナバウ様は、この町を出た。そして、南に向かった。




