第三十六話 聖剣、目覚める
そしてトロルは再び、巨大な棍棒を振り上げた。私は、警戒して考えた。攻撃するのは、今ではありませんわ。万が一にもあの棍棒を喰らったら、ただでは済まないからだ。するとトロルは、再び棍棒を振り下ろした。私はそれを、左に飛んでかわした。よし、今ですわ! 棍棒を振り下ろして、スキができた今が攻撃するチャンスですわ! 私は八〇パーセントの力で、トロルに連続斬りをあびせた。
だがトロルは、戦闘不能にはならなかった。くっ、このトロル。大きいだけあって、体力もありますわ……。なので私は、覚悟を決めた。一〇〇パーセントの力で、攻撃することを。もしかしたらこのトロルを倒してしまうかもしれないが、仕方が無い。私が、やられる訳にはいかない。なので私は、トロルが棍棒を振り下ろしそれをかわして、スキができたところを一〇〇パーセントの力で連続斬りをあびせた。
だが、トロルを戦闘不能にはできなかった。トロルはまた、棍棒を振り上げた。くっ、マズイですわ。私の一〇〇パーセントの力での攻撃が、効かないなんて。どうする、どうする?! そして私は、考えた。剣での攻撃が効かないなら、魔法を試してみようと。この学校で覚えた魔法はどれも基本の魔法だが、今はそれで活路を見出すしかない!
私は少しリラックスして精神を集中させて、魔力を作った。全身に魔力が、みなぎった。よし。効くかどうか分かりませんが、まずは火の魔法を試してみますわ。すると私の手元から、低い声がした。
「うーむ、久しぶりである。久しぶりに魔力を、感じたのである……」
え? 誰ですか、今しゃべったのは? 私はキョロキョロと周りを見てみたが、誰もいなかった。おかしいですわ、気のせいだったのかしら?……。すると、もう一度声がした。
「我輩である。聖剣アポビーである」
私は、もちろん驚いた。で、でええええ?! しゃ、しゃべった?! 聖剣アポビーがしゃべった?! 私は混乱しながらも、質問攻めにした。
「ど、どういうことですの、剣がしゃべるって?! どういう仕組みですの?!」
すると聖剣アポビーから、気だるそうな声がした。
「我輩は、魔力を感じると目覚めるのである。そんなことよりお主、あの敵を倒すことに集中するべきである」
な、なるほど。さっき私が魔力を作ったから、それに反応して聖剣アポビーは目覚めたようだ。そして、聞いてみた。
「確かにあのモンスターを戦闘不能にしたいけど、あなたにそれができるの?!」
「ふーむ。倒すのではなく、戦闘不能にするだけとはお主は変わっておるのう……。だが、まあいい。その力を、授けよう。さあ我輩に、魔力を注ぐのである」
ま、魔力を?! 今一よくわかりませんが、そうするしかないようですわ。なので私は、聖剣アポビーに魔力を注ぎ込んだ。すると黄色だった聖剣アポビーが、緑色になった。次の瞬間、私は自分の身が軽くなった気がした。試しに剣を振ってみると、いつもより速く剣が振れた。こ、これは一体?……。すると聖剣アポビーが、説明した。
「これは我輩の、力の一つである。今、お主の加速力は普段の一〇倍である。さあ、今のうちの敵を戦闘不能にするのである」
そ、そうか……。なので私は、トロルに突っ込んだ。トロルは棍棒を振り上げていたが、それを振り下ろすより速く攻撃できそうに思えたからだ。そして私は、連続斬りを連続して何度もトロルを斬った。
テンフォールド・アクセル!
私に何度も斬られたトロルは、うずくまり戦闘不能になった。それを見た私は、攻撃を止めた。すると魔族が、驚いた表情になった。
「な、あのトロルを倒しただと?! い、いや倒してない?! とどめを刺さないだと?! お前一体、何考えてんだ?!」
なので私は、答えた。
「モンスターといえども、私と同じ生き物。だから、倒すつもりはありませんわ……」
すると魔族は、大声を出した。
「ぎゃはははは! おもしれえ人間だな、お前! おい、お前、名は何て言うんだ?!」
「私ですか? 私は、ユーミですわ」
「そうかそうか、ユーミか! 俺の名は、ヨダクだ! おいユーミ! お前は南にこい! 俺はお前ともっと、遊びてえからな!」
するとヨダクは、頭上の黒い渦にジャンプして入り込んだ。そして少しすると黒い渦は消え、ヨダクも消えた。わ、私は一応、勝ったのね。と呆然としていると、トロルは必死にこの広場から立ち去ろうとしていた。でも私には、トロルを追うつもりは無かった。その代わりに、呟いた。
「人間がいないところに逃げて、そして二度と人間の前に現れるんじゃありませんわ……」
とこれで一安心したかと思ったが、思い出した。ケガをした、ナリンさんのことを。なので私は、急いでナリンさんの元に戻った。そしてその途中で、戦闘不能にしたモンスターたちがいないことに気づいた。おそらくトロルのように、この広場から逃げ出したんだろう。すると右腕から血を流しているナリンさんを、抱きかかえているハショウ君がいた。彼は、助けを求めていた。
「だ、誰か! ナリンさんの出血が止まらないんだ! 僕は魔力を使い果たして治せないんだ!」
なので、私が治すことにした。私は右手を、ケガをして出血しているナリンさんの右腕にかざした。お願い、ナリンさんのケガを治して! 私の魔力を使い果たしてもいいから! そして私は、魔法を唱えた。
「ヒール!」




