第三十五話 魔族登場
くっ、マズイ! このイノシシ頭のモンスター、さっきのオオカミ頭のモンスターよりも強い! どうする?! と私は一瞬迷ったが、すぐに決断した。こいつらを、八〇パーセントの力で攻撃することを。そうして攻撃していると、このモンスターを倒さずに一撃で戦闘不能にすることができた。ふと見てみると、全てのイノシシ頭のモンスターがうずくまって戦闘不能になっていた。よし、やりましたわ!
でも私は、考えた。もしかしたら、またこの様なモンスターが襲ってくるのではないかと。なので私は、これらのモンスターが現れた方向に向かって歩き出した。そしてこの広場の端までくると、人影が見えた。だ、誰かしら? 私は慎重に、その人影に近づいた。すると、分かった。そいつは、人間ではないことを。
確かに見た目は、人間だ。背は低めだが手足もあり、人間のような顔をしている。プライドが高そうな、どこか私を見下ろしている表情をしている。だが肌の色は毒々しい緑色で、黒いローブを着ていた。つまりこいつは、魔族だ。そう思って警戒していると、その魔族は大声を出した。
「おいおい、マジかよ?! 人狼とオークが、全てやられたのかよ?! 確かにあいつらはそんなに強くねーが、それぞれ一〇体いたんだぜ?! それを皆、倒したっていうのかよ?!」
そう言われたので私は、答えてやった。
「いえ、倒していませんわ。ただ戦えないように、戦闘不能にしただけですわ……」
するとその魔族は、聞いてきた。
「おいおい、倒してない? 戦闘不能にしただけ? 一体、何考えてんだお前? つーかお前、剣士じゃねーか? ここは魔法学校のハズだろ? 何で剣士がいるんだよ?」
なので私は、再び答えた。
「私は、より強い剣聖を目指しています。だからこの学校で、魔法を学んだのですわ」
するとその魔族は、一応納得したようだ。
「なるほどねー、そういうことかー! かー、タイミングわりー! ツイてねー!」
何なんですか、この魔族は。自分だけ、言いたいことを言って。なので今度は、私が質問した。
「あなた一体、どういうつもりでこんなことをしたんですか? あのモンスターたちは、あなたが連れてきたんですよね?」
するとその魔族は、不敵にニヤリと笑った。
「何って、決まってるじゃねーか。人間どもの戦力を、潰しにきたんだよ」
「戦力を潰す?」
「ああ。人間の剣士は、やっかいだ。強い剣士は、普通に何倍もの魔力を持つ俺たちを倒せるんだからな。でも、魔法使いもやっかいだ。そいつらが集団になると、やっぱり何倍もの魔力を持つ俺たちを倒せるんだからな。だからその魔法使いがガキのうちに全滅させようと思って、今日ここにきたんだ。どうだ、俺って頭良いだろ? ぎゃはははは!」
この魔族の話を聞いて、私は恐怖を感じた。この魔族は、狡猾だ。そして本当に、この魔法学校の生徒たちを全滅させるためにここにきたんだろう。もしそうなったらと想像しただけで、恐ろしかった。だから、私の本能が告げた。この魔族は、今ここで倒しておかなければならないと。
私はもう、モンスターは倒せないだろう。なぜなら、モンスターも私たちと同じ生き物だからだ。そんなモンスターを、もう私は倒せない。もしこれからモンスターと遭遇したとしても、倒さずに戦闘不能にするだけだろう。
だが、この魔族はヤバい。今ここで倒しておかなければ、この魔族によって人間が全滅させられると私の本能が告げた。もちろんこの魔族も、私と同じ生き物だ。だがそれでも、この魔族は倒さなければならない。私は聖剣アポビーを握る両手に、力を込めた。その私の殺気が伝わったんだろう、その魔族は告げた。
「ほほう、おもしれえ。お前、俺を倒す気満々だろう? でも、それはねえな。お前の相手は、このトロルだ」
そしてその魔族は両手を伸ばして、上に向けた。そして、魔法を唱えた。
「サモン!」
するとその魔族の頭上に、大きく黒い渦が現れた。そしてそこから何と、モンスターが現れた。そいつは巨大な体で右手に巨大な棍棒を持ち、地面にドスンと飛び降りた。私は、混乱した。な、こ、この魔族、モンスターを召喚しましたわ! すると私の混乱を見破ったのだろう、その魔族は得意そうな表情で説明した。
「ふはははは。俺たち魔族はお前ら人間よりも強大な魔力を持ってるから、魔界からモンスターを召喚することができるんだ。もちろん、さっきの人狼とオークも俺が召喚した……」
な、魔族がモンスターを魔界から召喚?! ナバウ様は魔族とモンスターは何か関係があると言っていたが、まさかこんなこんなことだったとは……。でも今は、そんなことを考えている場合じゃなかった。トロルが巨大な棍棒を振り上げて、私に向かって振り下ろしてきたからだ。
そしてそのスピードは、私の予想以上に速かった。私はとっさに後ろに飛んでかわしたが、私のいた場所に棍棒が振り下ろされ地面が大きくえぐられていた。私はそれを見て、死の危険を感じた。あんな攻撃をまともに喰らったら、ひとたまりもありませんわ……。




