第三十二話 邪魔者
火の魔法を使えるようになった私は、魔法を使うコツをつかんだような気がした。だからその日の夜も私は、学校の広場に向かった。そしてまず、火の魔法を唱えた。
「ファイア!」
するとやはり私の右手から、炎が放出した。うん。火の魔法は、完全に覚えましたわ。そして確か魔法の基本は火、水、風、土でしたわね。あれ? でもそれらの魔法って、どうすれば使えるのかしら?……。と考えていると何と、ナリンさんとハショウ君がやってきた! ハショウ君は、説明した。
「ナリンさんから聞いたんだけど、ユーンさんは夜もここで魔法を使えるように特訓してるって聞いたから。だから僕も、力になりたくて……」
なるほど。それは、ありがたいですわ。でもハショウ君の目的は、ナリンさんと一緒にいたいだけのような気がしますわ。いやいや。今はそれは、置いておこう。とにかく私は、早く魔法を覚えたい。そしてまたナバウ様と、剣聖になるための旅がしたい。だから多少のことは、目をつぶりますわ。するとハショウ君は、話し出した。
「火の魔法を使えるようになったのなら、次は風の魔法を覚えるといいですよ。この二つの魔法は、似ているので。自分の中の魔力が、風になって放出するイメージです。広場を囲んでいる木に、放ってみると良いと思います」
なるほど。それでは、やってみますわ。私は言われたとおりに、魔力が風になって右手から放出するイメージで魔法を唱えた。
「ウインド!」
すると私の右手から放出した風が、木にぶつかり枝を揺らした。お。できましたわ! 私は風の魔法も、使えるようになりましたわ! うーん。やはりこれは、ハショウ君の教え方が上手いからのような気がする。なので私はハショウ君を、せかした。
「それでは水の魔法と土の魔法も教えてください!」
「はい。もちろんです」
とハショウ君は、説明した。水の魔法と土の魔法も、似ている。水の魔法は手を水に入れて魔力を流し込んで、水を思い通りに操る。土の魔法は地面に手を置いて魔力を流し込んで、土を思い通りに操る。うん。なるほど。なので私は広場の隅にある小川に右手を入れて、水の魔法を唱えた。
「ウォーター!」
すると水は私がイメージした通りに、水流になって小川から噴き出した。それを見たハショウ君は、頷いた。
「うん。やっぱりユーンさんは、魔法を使うコツを覚えたようですね。それでは次は、土の魔法を使ってみましょう」
私は広場の地面に右手を置くと、土の魔法を唱えた。
「アース!」
するとやはり地面の土は私がイメージしたとおりに、壁の形になって突き出た。うん。土の魔法も、覚えましたわ。これはやはり、ハショウ君の教え方が上手いからですわ。なので私は、ハショウ君にお礼を言った。
「ありがとうですわ、ハショウ君。おかげで一気に、基本の魔法を覚えましたわ」
するとハショウ君は、答えた。
「いえいえ。僕はユーンさんに、魔法のセンスがあるからだと思いますよ。それとやっぱり、こんなに夜遅くまで魔法を覚えようと本気だからだと思いますよ」
それを聞いたナリンさんは、呟いた。
「そうかもしれないけど、私はやっぱりハショウ君の教え方が上手いからだと思うわ……」
「え?」
とハショウ君とナリンさんは見つめ合ったあと、恥ずかしそうに二人ともうつ向いてしまった。あらあらあらあら。やっぱり私は、お邪魔なようですわ。ここは私は先に、女子寮の部屋に戻った方がいいですわね。と私が女子寮に向おうとすると、男子寮の方から三人の男子がやってきた。背が低い子と背が高い子と太っている子。あれ。この子たちは確か私が入学した時に、ヤジを飛ばしてきた子たちですわ……。
私は何だか嫌な予感がしたが、とりあえずこの子たちがどう出るのか見てみることにした。するとやはりこの三人は、ハショウ君とナリンさんをからかいだした。
「よう、ハショウ! お前、こんな夜中に寮を出て女と会ってんのか? クラス委員、失格だなあ」
「そうだ、そうだ。先生に言いつけようぜ!」
「そうしましょう、そうしましょう。イヒヒヒヒ」
するとハショウ君とナリンさんは、うろたえた。
「え、えっとそれはちょっと困るなあ……」
「う、うん。それはちょっと困るわ……」
でも三人は、更に調子に乗った。
「うるせえ! こんな美味しいネタ、黙ってられる訳ねえだろ!」
「だいたいお前らはちょっと成績が良いからって、調子に乗ってんだよ!」
「そうだ、そうだ! イヒヒヒヒ」
そんな三人を見て、私は思わずため息をついた。良い感じの二人に対して、何て野暮なのかしら。なので私は、言い放った。
「ちょっとそこの三人! この二人は何も悪くありませんわ! この二人は私に、魔法を教えていただけですわ!」
するとその三人は、今度は私を標的にし出した。
「ふん。こんな時期に入学してくるなんて、どうせお前は落ちこぼれなんだろ!」
「俺たち貴族の令息に、生意気を言ってんじゃねえよ!」
「そうだ、そうだ!」
それを聞いて、私は再びため息をついた。全く、こんなのが貴族の令息だなんて、今時の貴族は何をしてるのかしら?……。




