第三十三話 約束と友だち
とにかくこんな三人のせいで、ハショウ君とナリンさんの学校での評価が下がるのは我慢できませんわ。なので私は、言い放った。
「ちょっと、あなたたち。ハショウ君とナリンさんのことを先生に告げ口つするのは、止めた方が良いと思いますわ。なぜなら夜に寮を抜け出した二人を見つけたあなたたちも、寮を抜け出したんですから。お分かりかしら?」
すると三人は悔しそうな表情になって、吐き捨てた。
「うるせえ! そういうのを、屁理屈って言うんだよ!」
「全く、こいつは生意気な女だぜ!」
「そうだ、そうだ!」
でもやはり自分たちも寮を抜け出したのがバレるとマズイと思ったのか、三人は男子寮に向かって歩き出した。それを見て私は、一応ホッとした。でもやはり、ハショウ君にも一言言いたかった。
「全くハショウ君たら! あんな奴らにいいように言われてないで、ちゃんと言い返すべきですわ!」
するとハショウ君は、うなだれて呟いた。
「で、でも彼らは貴族の子息で、僕は平民の子供だから……。彼らはきっと将来、お城で高官になるよ……」
むう。それを聞いて、私は唸った。確かにお城で王を補佐する大臣などの高官は、貴族の出身が多いと聞いたことがある。でもあんな奴らは私が女王になった時、高官にはさせませんわ! なので私は、言い放った。
「ハショウ君、よく憶えておいて。私が女王になったら、あんな奴らは高官にはしませんわ。身分に関係なくたとえ平民の子でも能力がある、あなたを高官にしますわ。これは、約束ですわ」
するとハショウ君は、驚いた表情になった。
「え? じょ、女王?! するとユーンさん、あなたは次に女王になられるユーミ王女なんですか?!」
あ、しまった。私がユーミ王女であることが、バレてしまいましたわ。なので私は口封じのためにハショウ君に、ドロップキックをぶちかました。
「このことは誰にも言ってはいけませんわ!」
「ぐはっ」
すると仰向けに倒れたハショウ君を抱きかかえて、ナリンさんが聞いてきた。
「で、でもどうしてユーミ王女がこんなところに?! そしてなぜユーンと名乗ってるんですか!」
えーと、それは……。少し考えたが私は、二人に話すことにした。この二人には世話になったし、この二人は信用できると思ったからだ。なので私は、話した。私は全ての国民を護れる強さを手に入れるために、剣聖を目指して旅をしていると。そのためにこの魔法学校に入学して、魔法を覚えようと考えたと。そしてこの学校の生徒の、ありのままを知りたくてユーンと名乗ってユーミ王女であることは隠していると。すると二人は一応、納得したようだ。そして二人は私がユーミ王女であることは、内緒にしておくと約束してくれた。
そうしてこの日の夜の、魔法の特訓は終わった。ハショウ君は男子寮に、私とナリンさんは女子寮に戻った。それぞれのベットに入ると、ナリンさんはクスクスと笑った。
「ユーンさんが女王になったら、この国はきっと今よりも良くなるような気がするわ」
なので私は、自信満々に答えた。
「ええ、任せておいて。期待しておいて」
そして、考えた。ああ。今まで、こんな風に話せる人はいませんでしたわ。つまり、友だちはいませんでしたわ。お城では私は、特別扱いされてきたから。なので私は、お願いしてみた。
「ねえ、ナリンさん。できれば私の、友だちになってくれませんか?」
するとナリンさんは、再びクスクスと笑った。
「あら。私はもう、とっくにそのつもりだったわよ。だから夜の広場での魔法の特訓にも、付き合ったのよ。気づかなかった?」
なるほど、そうだったのか……。なので私は、初めて言ってみた。
「おやすみなさい。私の友だちの、ナリンさん」
そして次の日の、魔法の授業。私はやはり、ハショウ君から魔法を教えてもらうことにした。だがハショウ君は今までと違って、緊張した表情をしている。きっと私が、ユーミ王女であることを知ってしまったからだろう。なので私は、言い放った。
「さあ、ハショウ君! いつも通りに私に魔法を教えてください! じゃないと立派な高官になれませんよ!」
そう言われたハショウ君は一瞬、驚いた表情になったが微笑んだ。
「はい。それでは今まで通り、魔法を教えさせていただきます!」
むう。敬語になってますわよ、ハショウ君。でも緊張は、なくなったようですわ。するとハショウ君は、話し出した。
「それでは次は、光の属性の魔法を覚えましょう。取りあえず暗い洞窟や夜に便利な、ライトの魔法を覚えましょう」
そう言われて、私はやる気になった。おお! ライトの魔法ですか! 確かにあの魔法は便利そうですわ! 是非とも、覚えたいですわ! そしてハショウ君は、説明を始めた。
「ライトの魔法は光の属性の魔法の中でも基本的な魔法なので、簡単です。光を放つ小さな玉をイメージして、魔法を唱えるだけです。さあ、やってみてください」
ふんふん。その光の玉なら、ナバウ様がライトの魔法を使った時に見たことがありますわ。なので私はそれを思い出してイメージして、魔法を唱えた。
「ライト!」
すると私の頭上から、光の玉が飛び出した。今は昼間なので分かりづらいが、ちゃんと光を発しているようだ。それを見たハショウ君は、頷いた。
「うん。やっぱりここまで順調に魔法を覚えたユーンさんには、簡単でしたね。それでは、基本となる最後の魔法を教えます。それは聖属性の、治癒の魔法です。つまり、ケガなどを治す魔法です」
そしてハショウ君は右手を、私の右腕にかざして魔法を唱えた。
「ヒール!」
すると私の右腕が、じんわりと温かくなった。なるほど。これは癒しを感じますわ。もし私の右腕がケガをしていても、これで治りそうな気がしますわ。そしてハショウ君は、アドバイスをしてくれた。
「この魔法のコツは、慈愛です。魔法をかける相手のケガなどを治したいという、優しさが必要です。さあ、やってみてください」




