第三十話 夜中の特訓
するとナリンさんは、話しかけていた。
「改めて、私はナリンといいます。一応貴族の娘で、この学校を卒業してこのヨヅン国の高官を目指しています」
なるほど。確かにお城で王を補佐する高官は、貴族が多いと聞いたことがある。ナリンさんも、それを目指しているのか。するとナリンさんは、聞いてきた。
「だから、ユーンさんも貴族の方ですか? それにしても途中入学は、珍しいですけど?」
まさか私は王女であるとは言えないので、ごまかした。
「え、えーと……。まあ私は貴族というより、どちらかと言えば王族の関係者で……」
するとナリンさんは、驚いた表情になった。
「まあ! ユーンさんは王族の関係者でしたか! だから途中入学とか、特別扱いされてるのね!」
「え、ええ。まあ……」
そうして自己紹介が終わった私たちは、女子寮の食堂で夕食を取った。それから大浴場でお風呂に入り、部屋に戻った。するとナリンさんは明日の授業の予習をすると言って、ろうそくに火を灯して勉強を始めた。私はパジャマに着替えて、ベットで寝ころびながら考えていた。
うーん。私は一刻も早く魔法を覚えて、ナバウ様との旅を再開したい。だから、ここでのんびりしている場合じゃない……。すると、ろうそくの火が消されて部屋は真っ暗になった。どうやら、ナリンさんの勉強が終わったようだ。そして隣のベットに、ナリンさんが入る気配がした。それを確認すると私は、制服に着替えて部屋を出た。そして学校の、広場に向かった。
目的はもちろん、魔法を覚えることだ。そのためには、精神力から魔力を作る必要がある。更にそれには、精神を集中しなければならないようだ。だから私は、精神を集中してみた。でも何の、手ごたえも感じられなかった。なのでその日は部屋に戻って、寝ることにした。
次の日も、入学初日と同じような日を過ごした。午前は魔法以外の授業を受けて、午後に魔法の授業を受ける。とは言ってもすでに実践段階で、講師はいない。周りを見てみると皆、自分たちで魔法を使う練習をしていた。私はやはり精神を集中させたが、魔力は作れなかった。
そうしてその日の夜。私は夜中に再び、この広場にやってきた。やはりこの広場の方が静かで、精神を集中させやすいと思ったからだ。だがやはり、魔力は作れなかった。そうして少し落ち込んでいると、何とナリンさんがやってきた。
「まあ、ユーンさん! こんなところで何を?!」
なので私は、説明した。私にはここで早く魔法を覚えて、やりたいことがあると。そのためにここで一人で、魔法を使えるように練習をしていると。するとナリンさんは、複雑な表情になった。
「そうなんですか。早く魔法を覚えて、やりたいことがあるんですか……。一応気持ちは分かりましたが、夜は寮から出てはいけない決まりになってるんですよ……」
う、そうなのか。でもまあ、寮としては当然だろう。それでも私は、早く魔法を覚えたかった。するとナリンさんは、根負けしたようだ。
「そんなに早く、魔法を覚えたいんですか……。それなら、仕方がありません。この私も、協力します」
そしてナリンさんは、アドバイスをしてくれた。
「魔力を作るには、もちろん精神を集中しなければなりません。でも、コツがあるんです。それは、リラックスすることです。リラックスしながら精神を集中させると、魔力を作りやすくなります」
私はそれを聞いて、頷いた。なるほど。魔力を作るコツは、リラックスすることか。なので私は、早速やってみた。リラックスしながら、精神を集中させてみた。すると体の中心に、小さなエネルギーを感じた。ま、まさかこれが魔力?! 初めて魔力らしきモノを感じた私は、興奮してナリンさんに聞いていた。
「今、体の中心にエネルギーを感じましたわ! ひょ、ひょとしてこれが魔力なの?!」
するとナリンさんは、微笑んだ。
「はい、そうです。それが魔力です。それでは精神を集中し続けて、それを全身で感じるようになってください。全身が、そのエネルギーで満ちる感じですね。そうすれば魔法を使える準備ができることになります」
な、なるほど。このエネルギーが、全身に満ちるまでか。よーし、やってやりますわ! と再びリラックスしながら精神を集中させたが、その日はやはり小さなエネルギーを感じただけだった。
でも私はそれを、毎日やった。学校の午後の授業中はもちろん、夜もやった。それにはナリンさんも、付き合ってくれた。すると私が感じるエネルギーは、段々大きくなっていった。最初は小さなモノだったが、私の体の中でそれはドンドン大きくなっていった。
小さなエネルギーが、卵ぐらいの大きさまで感じられた。それがさらに大きくなり、私の胴体を満たすまでになった。更に特訓を続けるとそのエネルギーは私の手足まで、つまり私の体中に満ちた。それはまさに私の体から、溢れそうだった。そのことをナリンさんに話してみると、彼女は微笑んだ。
「おめでとうございます、ユーンさん。それが魔力です。あなたは見事に、魔力を作れるようになりました」




