第二十三話 薬
そして私は、更に考えた。このヨヅン国では、成人した国民から一カ月に一万ゴールドの税金を徴収している。そして国は、それを国民のために使っている。国民がより良い暮らしをするために政策を考え、使っている。
でも時々、国の政策は一部の国民に批判される。この政策は、国民のためになっていないと。私はどうしてそんなに政策が批判されるのか、分からなかった。国は国民のことを考えて、政策を考えているのに。
でも、今なら分かる。なぜ一部の国民が、国の政策を批判するのか。それはその国民も一生懸命に働いて稼いだお金を、税金として国に納めている。だから国民のためにならないと思われる政策には、批判するのだ。自分が納めた税金が、ムダに使われるかも知れないと思って批判するのだろう。
なので私は、決心した。私が女王になったら、国民の意見もよく聞こうと。私が行う政策が、本当に国民のためになるのか是非聞きたい。そして国民から徴収した税金を一万ゴールドいや、一ゴールドもムダにしないようしようと決心した。
そこまで考えると、私はふと疑問に思った。この店主は一〇万ゴールドをオマケしてくれたが、それで損はしないのだろうかと。なので店主に聞いてみたら、笑いながら答えた。
「確かに、ちょっと損をしているように見えるかも知れませんねえ。でも大丈夫。このウロコは品質が良いので一万ゴールド買ったんですが、防具屋には二万ゴールドで売りますよ。これが商売ってもんですよ。なっはっはっはっはっ」
うーん、なるほど。確かにこの店主は、やり手のようだ。そうしてゴールドを手に入れた私たちは、道具屋から出た。そして今日はもう、宿屋で休むことにした。
次の日の朝。目が覚めた私は、いつも通りの修業をこなした。するとナバウ様が、声をかけてきた。
「おはようございます、ユーミ王女。今日はまず、シャミ薬屋に行きましょう。ブラック・ドラゴンの肝臓から疫病を治す薬ができたかどうか、気になるので」
「はい。そうしましょう」
そして宿屋で朝食を食べた私たちは、シャミ薬屋に向かった。するとそこには大勢の人たちが集まって、薬を買い求めていた。それを見たナバウ様は、呟いた。
「うーむ。これはひょっとして……」
なので私は、ナバウ様に聞いてみた。
「どうしましたか、ナバウ様?」
「いえ。ちょっと、聞いてみましょう」
とナバウ様が薬屋に入って行ったので、私も入った。するとシャミさんが、微笑んでいた。
「ありがとうございます、ナバウ様。あのブラック・ドラゴンの肝臓のおかげで、疫病を治す薬ができましたよ」
するとナバウ様も、微笑んだ。
「そうですか、それは何よりです。それにしても一日で薬を作ってしまうとは、さすがこの町一番の薬剤師ですね」
「ええ、ええ。私もこの疫病を何とかしたいと思っていたので、がんばりましたよ」
それを聞いたナバウ様は、薬屋に集まっている人々を見ながら聞いた。
「それにしてもずいぶん、大勢の人々が集まっていますね」
「ええ、ええ。この薬は、格安で売ってますからねえ」
なので私は、疑問を聞いてみた。
「え? 格安で? それで良いんですの?」
するとシャミさんは、微笑んだ。
「良いんですよ、良いんですよ。薬を安く売った方が、この町に広がった疫病を止められますからねえ。それに薬の材料のブラック・ドラゴンの肝臓は、ナバウ様からタダで頂いたモノですからねえ。値段を高くする訳にはいきませんよ」
うーん、なるほど。そういうことか。すると私は、もう一つ疑問が浮かんだのでナバウ様に聞いてみた。
「そう言えばナバウ様。あのブラック・ドラゴンの肝臓は、タダであげちゃっていいんですか? ウロコのように、売ったりしないんですか?」
するとナバウ様は、微笑んだ。
「はい。タダで、良いんです。私の目的はお金を稼ぐことではなく、疫病を止めることなので」
うーん、なるほど。そういうことか。私はなぜ、ナバウ様が剣聖と呼ばれているのか分かったような気がした。そりゃあこういうことを続けていれば、剣聖と呼ばれるのは当然のことだ。すると今度は、ナバウ様が私に聞いてきた。
「そう言うユーミ王女は、どうなんですか? あのブラック・ドラゴンの倒したのは、ユーミ王女です。なので本来なら、ユーミ王女がお金をもらうべきでは?」
そう聞かれて、私は考えた。うーん、なるほど。確かに、それはそうだ。でも私は、お金をもらわないことにした。じゃないとナバウ様のように、剣聖になれないと思ったからだ。なので私は、答えた。
「いえ。お金は、要りませんわ」
するとシャミさんが、驚いた表情になった。
「え? あなたは、ユーミ王女なのかい?! これから女王になられる、ユーミ王女なのかい?!」
あー。またバレちゃったかー。まあ、仕方ない。なので私は、答えた。
「はい。確かに私は、ユーミです。シャミさん、今回はご苦労でした」




