第二十話 勝利
そして私はブラック・ドラゴンの正面に立つと、聖剣アポビーを構えた。するとブラック・ドラゴンはその狂暴そうな目を、私一人に向けた。だが私は、覚悟を決めていた。や、やってやりますわ!
まずブラック・ドラゴンは、鋭い左右の爪で私を攻撃してきた。だが私はそれを、左右にステップしてかわした。するとブラック・ドラゴンは次に、首を私に近づけて鋭い牙で攻撃してきた。私はそれを、聖剣を横にして受け止めた。そしてブラック・ドラゴンは後ろを向いて大きく長いシッポを振り回したが私は、それをジャンプしてかわした。
イケる、イケますわ! 私はあのブラック・ドラゴンの攻撃を、ナバウ様のようにかわせますわ! するとブラック・ドラゴンは正面を向いて、身構えた。その大きな口には、炎がまとっていた。
私は、予想した。次はおそらく、灼熱のブレスがくる! なので私は、聖剣を真上に構えた。すると、きた! 岩をも溶かすと言われる、灼熱のブレスが! それはブラック・ドラゴンの大きな口から、勢いよく発射された。だが私はそれを、聖剣で斬った。すると灼熱のブレスは、私の体の左右を通り過ぎて行った。
私はこの戦いに、手ごたえを感じた。イケる、イケますわ! 私はきっと、この戦いに勝てますわ! すると私のそんな気持ちを見透かしたのか、ナバウ様は告げた。
「気を抜かないでください、ユーミ王女。次はきっと、猛毒のブレスがきます」
「はい!」
ブラック・ドラゴンの口元を見てみると、緑色の霧で覆われていた。猛毒のブレスですか。それなら、こうですわ! 私は右手だけで聖剣を握り、前に突き出した。するとブラック・ドラゴンは毒々しい緑色のブレスを吐き出した。それを見た私は聖剣を、右手の手首を使ってグルグルと回転させた。すると聖剣は円を描いて回転し、風圧で猛毒のブレスを吹き飛ばした。それを見たナバウ様は、叫んだ。
「お見事です、ユーミ王女! それでは、とどめを!」
「はい!」
とナバウ様に返事をしながらも、私は考えた。えーと。とどめって、どうすれば良いのかしら? すると、ひらめいた。そうだわ、ナバウ様と同じことをすれば良いんですわ! なので私は、ブラック・ドラゴンの首の高さまでジャンプした。そして聖剣を、左から右に薙ぎ払った。
「はああああ!」
するとブラック・ドラゴンの首は、スパッと斬れて地上に落ちた。そして私が地上に着地すると、ブラック・ドラゴンの体も地面に崩れ落ちた。
「やりましたわ、ナバウ様! 私は、あのブラック・ドラゴンを倒しましたわ!」
するとナバウ様は、満足そうに微笑んだ。
「はい。お見事でした、ユーミ王女」
私はしばらくの間、あのブラック・ドラゴンを倒した満足感にひたっていた。するとナバウ様は、ブラック・ドラゴンに近づいて何やらしていた。私は当然、聞いてみた。
「何をしてるんですか、ナバウ様?」
「はい。ブラック・ドラゴンの、ウロコを取っています」
「ウロコを?」
「はい」
私がナバウ様に近づいて見てみると、確かに彼は二〇センチくらいの大きさの漆黒のブラック・ドラゴンのウロコを一枚一枚はぎとっていた。疑問に思った私は、聞いてみた。
「どうして、ウロコを取っているんですか?」
「はい。生きていくためです」
「生きていくため?」
するとナバウ様は、説明した。ナバウ様はほとんど、旅をしながら生活をしている。でもそれには当然、お金が必要だ。でもナバウ様は、そのお金を自分で作る。モンスターに襲われた町や村を救っても、そこからお金をもらったりはしなかった。そのお金はモンスターに破壊された建物などを直すために、使ってくださいと言って。
そういうことを繰り返したので。ナバウ様は剣聖と呼ばれるようになったのだろう。でもやはり、旅を続けるのにはお金が必要だ。なのでナバウ様は、倒したモンスターからお金になりそうなモノを頂戴していた。
例えばブラック・ドラゴンのウロコは一枚、一万ゴールドの価値があるそうだ。それはブラック・ドラゴンのウロコは硬くて丈夫で、色々なことに使えるからだ。それで防具を作ったり、道具を作る材料にもなる。だから道具屋などで、一万ゴールドで売れるそうだ。うーむ、なるほど。
なので私も、ブラック・ドラゴンからウロコをはがし始めた。ウロコをつかみ力を入れてみると、それはするりとブラック・ドラゴンの体から抜くことができた。私が一〇枚ほどのウロコを抜いていると、ナバウ様は五〇枚ほど抜いたようだ。それらを背中に背負っている大きなリュックに入れると、ナバウ様は告げた。
「ふむ。これで、五〇万ゴールドくらいになります。これでしばらく旅を続けても、お金に困ることは無いでしょう。あ、ユーミ王女。ウロコは全て、取らないでください。あとはダヒルの町の人々に、残しておきましょう。疫病の被害を受けた、人々のために」
それを聞いた私は、もちろん頷いた。
「はい! ナバウ様!」
するとナバウ様は今度は銀色に輝く剣で、ブラック・ドラゴンの腹を斬り始めた。
「何をしてるんですか、ナバウ様?」
ナバウ様は、斬りながら答えた。
「ブラック・ドラゴンの、肝臓を探しています」
「肝臓を? どうしてですか?」




