第十九話 ブラック・ドラゴン
私は恐る恐る剣を振り上げて、一番近くのトカゲのモンスターに振り下ろした。するとやはり『ギャッ』という悲鳴を上げて倒れ、動かなくなった。な、なるほど。このモンスターも、弱い……。と思っていると残りの四匹が、一斉に小さな炎を吐きだした。私はそれを、一歩後ろに下がってかわした。
そして剣を、左から右に薙ぎ払った。するとやはりトカゲのモンスターたちも、一撃で倒すことができた。なので私は、喜んだ。
「や、やりましたわ、ナバウ様! 私、トカゲのモンスターも一撃で倒しましたわ!」
するとナバウ様は、頷いた。
「はい。今のユーミ王女の強さなら、このくらいのモンスターは敵ではありません」
「はい!」
そして私たちは、ドンドン洞窟の奥に進んだ。途中、トカゲのモンスターが何度か襲ってきたが私が一撃で倒した。そうしていると、とうとう洞窟を抜けた。そこには背の低い緑色の草が生えた草原が広がっていて、優しい太陽の光が降り注いでいた。思わず私は、深呼吸をした。ああ、なんて良い景色。心が、洗われるようですわ。
そして私は、満足感に包まれていた。私はコウモリのモンスターもトカゲのモンスターも、一撃で倒した。今までモンスターと戦ったことはもちろんないけれど、今の私がこんなに強くなっていたなんて。これもナバウ様に、修業していただいたおかげですわ。なので私はナバウ様に、お礼を言った。
「ありがとうございます、ナバウ様。私がこれほどまでに強くなったのは、ナバウ様のおかげですわ」
でもナバウ様は、難しい表情で何かを考えているようだった。なので私は、聞いてみた。
「どうしました、ナバウ様?」
「おかしいと思いませんか、ユーミ王女?」
「え? 何がですか?」
「我々はこの洞窟に、何か疫病の原因があると思ってきました。でも、何もありませんでした。弱いモンスターが、いるだけでした……」
それを聞いて、私も頷いた。
「な、なるほど。そう言えば、そうですわね……」
そしてナバウ様は、呟いた。
「私のカンでは、ここにあるモンスターがいるはずなんですが」
「あるモンスター?」
すると一瞬、小高い山が揺れた。な、何? と思っていると目の前に、巨大なモンスターが現れた。その衝撃で、草原も揺れた。おそらくこのモンスターは、小高い山から草原に飛び降りてきたのだろう。その衝撃で小高い山も草原も、揺れたのだろう。そして私は、その巨大なモンスターを見つめた。それは全身が黒いウロコで覆われ鋭い牙と爪を持ち、更に大きくて太いシッポのブラック・ドラゴンだった。そして狂暴そうな目で、私たちを睨んでいた。もちろん私は、驚いた。
「ブ、ブラック・ドラゴン?! な、何でこんなところに?!」
でもナバウ様は、冷静だった。
「うーむ。やはりいましたか、ブラック・ドラゴン……」
「ど、どういうことですか?!」
「私は昨晩、モンスターについて調べました。疫病の原因が、モンスターではないかと考えて。そして、ブラック・ドラゴンに辿り着きました。ブラック・ドラゴンは高い攻撃力を持ち、岩をも溶かす炎のブレスを吐きます。でも、それだけではなかったのです。猛毒のブレスも、吐くのです。
おそらくブラック・ドラゴンはここから猛毒のブレスを吐いて、洞窟に流し込んだのでしょう。そうしてそれがダヒルの町の東側まで届いて、住民が疫病にかかったのでしょう。住民が疫病になるほどの猛毒のブレスも吐く、それがブラック・ドラゴンが一体で国をも滅ぼす最強クラスのモンスターと言われる理由のようです」
私は思わず、頷いた。
「な、なるほど……」
そしてナバウ様は、言い放った。
「さあ、それではユーミ王女。見事にこのブラック・ドラゴンを倒してください!」
「え? ええええ?!」
私が驚いていると、ナバウ様はやはり冷静に告げた。
「疫病の原因は、まず間違いなくこのブラック・ドラゴンです。倒さなければなりません。それにユーミ王女も、モンスターと戦いたがっていたではありませんか」
「そ、それはそうですが……」
でも、いきなりブラック・ドラゴンはキツイ。私は城下町で暴れていた、ブラック・ドラゴンを思い出した。あんなに強いブラック・ドラゴンを、倒せるだろうか? と私がブラック・ドラゴンと戦うことをためらっていると、ナバウ様は告げた。
「私はユーミ王女なら、ブラック・ドラゴンさえも倒せると思っています。それに何かあったら、私がフォローします。なので戦ってください、ユーミ王女」
それを聞いた私は、深呼吸をして心を落ち着かせた。そ、そうですわ。ブラック・ドラゴンさえも倒せないと、私は剣聖になれませんわ。なので私は、覚悟を決めた。
「私、戦いますわ! このブラック・ドラゴンと!」
「はい。がんばってください」




