第十六話 疫病
そしてナバウ様は、木製のドアをノックした。少ししてから中から、「どうぞ」と返事があったので私とナバウ様は町長室に入った。中は結構広くて奥に木製の机とイスがあり、グレーの背広を着た恰幅のいい男が座っていた。その男は丸顔で丸い印象の目をして、いかにも人が良さそうだった。そしてその男の周りに黒い背広を着た、三人の男がいた。
丸顔の男はナバウ様を見ると、喜んだ表情になった。
「これはこれは、ナバウ様。以前は町を襲ったモンスターを倒していただき、ありがとうございました」
「いえいえ、ダカズ町長。私は、当然のことをしたまでです」
そうしてナバウ様は、話を切り出した。
「ところで、ダカズ町長。何か、お困りごとはありませんか? 私が見たところ、病院に出入りしている人が多いようですが?」
するとダカズ町長は、真剣な表情になった。
「そうなんですよ、ナバウ様! 実は今、この町に原因不明の疫病が流行りつつあるのです!」
「疫病ですか?」
「はい。原因はまだ分かっていませんが、それでもいくつかのことは分かっています。疫病にかかるのは、この町の東に住む町民が多いということ。それと毒性が強く、病気にかかると一週間ほどで亡くなるということです。実はすでに、数十人の町民が亡くなりました……」
それを聞いたナバウ様は、頷いた。
「うーむ。なるほど……」
そしてナバウ様は、提案した。
「それでは、ダカズ町長。私も独自にその疫病の原因を調べたいのですが、よろしいでしょうか? もちろんダカズ町長もすでに、その対策を考えているようですが」
とナバウ様は、ダカズ町長の周りにいる男たちを見回した。するとダカズ町長は、男たちの顔を見回して頷いた後に告げた。
「ありがとうございます、ナバウ様。実は私たちは病人の対応で忙しく、疫病の原因を調べる余裕がないのです。なのでナバウ様が調べてくださるのなら、こんなにありがたいことはありません!」
するとナバウ様は、軽く頭を下げた。
「調べる許可をいただき、ありがとうございます」
それを聞いた私は、不満だった。なのでナバウ様に、聞いてみた。
「あの、ナバウ様。これから疫病の原因を、調べるんですか?」
「はい。そうですよ、ユー……」
私の名前を言いかけたナバウ様の口を、私は慌てて手でふさいだ。そしてナバウ様に、小さな声で耳打ちした。
「しーっ。私がユーミ王女であることは、言わないでください。そうするとこの町の住民の、自然な生活を見られなくなると思うので」
するとナバウ様は、頷いてくれた。でもダカズ町長は、聞いてきた。
「あの、ナバウ様。そちらの女性は?」
ナバウ様は、少し考える表情をした後に答えた。
「えーと。こちらも女性は、私の弟子です。今、剣聖になるために私と一緒に旅をしているのです」
するとダカズ町長は、驚いた表情になった。
「何と! まだ若い女性なのに、剣聖になるために旅を! そうですか、それはご苦労なことです」
そう言われたので私はダカズ町長に一応、軽く頭を下げた。そして、告げた。
「疫病の対策、ご苦労様です。それでは私たちは、これで失礼します」
そう言って私はクルリと回って、この部屋から出て行こうとした。するとナバウ様に、右肩をつかまれた。
「こらこらこらこら!」
なので私は、振り向いた。
「何での、ナバウ様?」
「あなたは疫病の原因を、調べないつもりなんですか?」
「はい。そうですよ」
するとナバウ様は、困った表情になった。
「どうしてですか?」
「私は町を襲うモンスターを倒して、剣聖と呼ばれたいんです。疫病の原因を調べても、剣聖とは呼ばれません」
そう言われたナバウ様は、説明した。
「あのですね、それは違いますよ。確かに町を襲うモンスターを倒して、剣聖と呼ばれることもあります。でも今回のように疫病の原因を調べて人々を救うことで、剣聖とよばれることもあるのです」
それを聞いて、私は驚いた。
「ええ?! そうなんですか?!」
するとナバウ様は、何度も頷いた。なるほど。そういうパターンもあるのか。それを知った私は、がぜんやる気になった。なので私は、ダカズ町長に言い放った。
「任せてください、ダカズ町長! きっとこの私が、疫病の原因を突き止めて見せますわ!」
するとダカズ町長は、顔いっぱいに喜びの表情を見せた。
「よろしくお願いします! ナバウ様とそのお弟子様!」




