第十五話 ダヒルの町
確実に暖かさを感じることができる、四の月の中旬。私とナバウ様は城下町から南に進み、このヨヅン国で城下町の次に大きいと言われるダヒルの町にたどり着いた。城下町からこの町に着くまでの旅は、モンスターと遭遇することもなく順調だった。だから夜になっても安心してナバウ様が背負っている小型のテントの中で、眠ることができた。ただ、食べる物が少なかった。
やはりナバウ様が持っていた硬いパンと干し肉を食べて、空腹を満たした。だからこの町にたどり着いた時、私とナバウ様は真っ先に食堂に向かった。時間がちょうど、お昼だったのもその理由だ。食堂に向かう途中、この町の大通りを通ったが多くの人とすれ違いまた多くの並んでいる商店を見た。武器や防具を作って売る、鍛冶屋。大きくて何人も泊まれそうな、宿屋。道端で食べ物を売っている、店もあった。
私は城と城下町しか知らなかったので、この町の活気に満ちた雰囲気は新鮮だった。そしてグレーのレンガで造られた、とても大きな食堂に入った。店内には剣士や商人と思われる、多くの男女がいた。彼らは話をしながら、出された料理を美味しそうに食べていた。
奥の席に座ってメニューを見てみると、たくさんの料理の名前が書かれていた。ただメニューを見ても私にはどんな料理なのか想像できなかったので、ここで何度も食事をしたことがあるナバウ様に料理を選んでもらった。その結果、食べることになったのはチキンという動物の骨付き肉とツナという名前の魚を煮たモノと薄い緑色の野菜のサラダとダイズという植物を使って作られたスープだった。
骨付き肉の肉は白い色で、食べてみるとあっさりとした味で食べやすかった。ツナという魚を煮た料理は薄い灰色で、食べてみるとしっかりとした歯ごたえと深い旨味が感じられた。野菜のサラダは、白いソースをかけて食べた。少し苦みがあったが嫌な苦みではなく、クセになる苦みだった。そしてスープは深い茶色で、飲んでみるとちょうど良い塩加減だった。
それらは私にとって初めて食べる料理だったが、どれも美味しくて私はすごく満足した。
「どれもすごく美味しい料理でしたわ、ナバウ様!」
「そうですか。ユーミ王女も気に入られたようで、何よりです。実はこの町の近くに牧場があって、そこで育てた動物の肉を食べることができるのです。また港もあり、魚もたくさんとれるのです」
「なるほど。そうなんですか」
そして食事を終えた私たちは、ナバウ様が会計をして食堂を出た。私はナバウ様に、聞いてみた。
「これからどうなさるんですか、ナバウ様?」
「はい。これからこの町の、町長に会いに行こうと思います」
「町長に?」
「はい。今この町で何か困っていることはないか、聞くためです。それはやはり、町長が一番よく知っているので」
「なるほど」
そして私たちは町長がいる役場に向かって、歩き始めた。私は、この町の活気に満ちた人々を見ながら聞いてみた。
「この町には、困りごと何て無いと思うんですが?」
するとナバウ様は、首を左右に振った。そして右側にある、灰色のレンガで造られた大きな建物を指さした。そこには見るからに具合の悪そうな人々が、出入りしていた。私はナバウ様に、聞いてみた。
「あの建物は、何ですか?」
「あれはこの町で一番大きな、病院です」
「なるほど」
「そこに、多くの人が出入りしています。それがどういうことかお分かりですか、ユーミ王女?」
私は少し考えてから、答えた。
「えーと。この町には実はケガをした人か病気の人が、多いということでしょうか?」
するとナバウ様は、満足そうに頷いた。
「その通りです、ユーミ王女。なのでその理由を、今から町長に聞きに行くのです」
「ああ! なるほど!」
そうして私たちは茶色のレンガで造られた、ドーム型の建物に着いた。
「ここが、この町の役場です。さあ入ってみましょう、ユーミ王女」
「はい」
私たちは中に入り階段を上って二階に上がり、左に曲がった。すると『町長室』と書かれたプレートが上部に貼られた、部屋が見えた。そしてその前には黒い鎧を着た兵士が二人、立っていた。おそらく、町長の護衛なのだろう。ナバウ様は、その兵士に声をかけた。
「お仕事、お疲れ様です。私はナバウと申しますが、町長はいらっしゃいますか?」
するとそれまで険しい表情をしていた兵士が突然、満面の笑みを見せた。
「おお、これはナバウ様! お久しぶりです! 以前はこの町を襲ってきたモンスターを倒していただき、ありがとうございました! 町長は、部屋の中にいらっしゃいます。どうぞ、お入りください」
するとナバウ様は、軽く頭を下げた。
「ありがとうございます」




