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乙女に捧げる狂詩曲  作者: 遠夜
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乙女の秘密は蜜の味

茫然自失の体で自宅マンションの床にへたり込んだ私は、気が付くといつの間にか元の部屋に連れ戻され、ベッドの上に寝転がされていた。


「ちったぁ落ち着いたか」


「・・・・・」


「どれどれ、━━━まだ顔色は悪ぃがさっきよりかはいくらかマシだな」


傾城ばりの綺麗どころに顎クイされて、鼻がくっつきそうな位置で顔を覗き込まれたりしてるけど、・・・なんかもう、気力が萎えててどうでもいい。


「━━ネージュ」


「・・・・・・」


「あの『扉』は固定できるらしいぞ」


「・・・え」


「今グウィンが向こう側に残ってその処理の真っ最中だ。向こうとこっちの両側に魔方陣を置いとけば、この状態を維持すんのも可能だとよ」


反射的にクローゼットの方に目が向く。

クローゼットの扉はまだ開けっ放しになっていて、1LDKのマンションのリビングダイニングが見えている。


「ほ・・・本当に?・・・そんな事できるの?」


「さぁな?俺はそっちの分野はサッパリだから何とも言えんが、あの魔女はできもしねえ事をできるとかって、つまんねー法螺は吹かねえよ」


「そう、だね・・・」


知りたくなかった現実を目の当たりにして、私が目を回してる間にそんな展開になっていたとは。

これはもう、とことん追及される予感しかしない。





そしてそれから、ものの十数分後。

私達は三人揃って居間兼食堂リビングダイニングに移動していた。



「━━━で、“あれ”はいったいどういう事なんだい、ハネズ?」


いつもは泰然自若とした雰囲気のグウィネスさんが、まるで目の前でカツオブシを振られた猫みたいなキラキラキラッキラした眼で、こっちを見てくる。

・・・これは、逃げられない・・・。


シグはシグで『面倒クセーからはよ白状ゲロっちまえ』というような、本心がありありと透けて見える表情かおしてるし。


グウィネスさんが学者肌というか研究者気質(かたぎ)というか、自分が興味を持った事に対してはとことん探求心を発揮する人なのは、一月ひとつき一緒に暮らしただけでもよくわかった。

適当にはぐらかして誤魔化そうなんて、考えるだけ無駄だって事も。


「寝室のクローゼットがいきなり私の家と繋がった原因とかは・・・ごめんなさい、よくわからないです」


「あぁ、そこは置いといて構わないよ」


実際問題サッパリ見当がつかない。


「ウィネスさんにはさっき、あそこが『何処』かと訊かれましたけど・・・それを説明するのはとても難しいです。一言でざっくり言うなら“この世の何処でも無い場所”とでもいうか・・・」


「はぁ?ナニ言ってんだ小娘。頭沸いてんのかオマエ━━━」


「あんたは黙れ」


シグが話を混ぜっ返しかけて、グウィネスさんにピシャリと釘を刺される。


「続けて」


「ウィネスさん。あの部屋の中を見て、どう思いました?」


「・・・全く見た事の無い様式だったね。用途不明な道具がゴロゴロしてる上に、その材質もあたしにゃ何だかよくわからなかったよ。━━━このあたしが、だ」


以前チラッと魔道学について教わった時に、魔術師っていうのはいわゆる“学者”の頂点でもあると聞いてる。

得意分野は人それぞれだけど、広く深く、多種多様な知識に精通していなければならないのだと。

私的には魔術師イコール『博識』というイメージだけど、そう間違ってはいないと思う。


「それに・・・あの窓の外の風景もねぇ。何だか随分異質な感じがするよ」


それはそうだろうと思う。

地方都市とはいえ、私のマンションはかなり街の中心部にある。

高層建築物ビルがずらりと建ち並び、車両が道を行き交う光景は、こちらの人間から見ればさぞ異様な眺めに映る事だろう。


「あそこは日本といって、私が生まれ育った国です」


そして、とここで私は言葉を切り、おもむろに『ある物』をドン!と卓上に乗せた。


「これは“地球儀”といって、私の住んでいた世界の模型ですが」


「はあぁーーー!?!?」


「へぇぇ・・」


あれこれ口で説明するより色々見せた方が早いと思って、移動する前にマンションの寝室から持ち出した物だ。

地球儀といっても小学生が机に置いてるようなやつじゃなくて、インテリアも兼ねてる大人仕様の精巧なやつ。大きくて結構な重さがある。


「地形を見ればわかると思うんですけど、まるきり別の世界ですよね?私、ここから落っこちて来たんです」


「ちょい待て・・・小娘、天狼にかっ拐われる直前に言ってたのは、━━━この事か!?」



━━━ 私はこの世の生き物じゃないから ━━━



ああ・・・確かに、なんかそんなような事を口走った気もする。


「自分がこっちの世界の人達にどう認識されるかわからないから、なるべく素性はぼかすようにしてたんだけど。あの時はあんまり腹が立ったから勢いでつい・・・」


その後すぐお母さんが現れて大暴れしたから、誰も私の口にした言葉の意味なんかこれっぽっちも気にも留めてやしなかったけど。


「・・・実に興味深いね」


面白そうに地球儀をくるくると回していたグウィネスさんの眼が、完全に獲物に狙いを定めた猫のそれに変わる。


「あんたが“落っこちた”とかって辺りの、もうちょい詳しい経緯を教えてくれるかい?」


ロックオーーーン!!目力半端無ぇーーー!!


ワタクシ、首根っこ掴まれたネズミの気分でございます。













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